第22話 頼まれ事
「この特殊依頼、達成しました。確認お願いします」
「はい! 凄いです! ホントに開拓されていますね! ドラゴンが住み着いたかもしれないという噂でしたが、倒したんですね!?」
その噂を聞いてたなら教えてくれよ。
たしかに、俺は質問しなかったけどもさ。
「そうですね。なんとか倒せました」
「報酬が送られていると思いますので確認してください!」
メニューを開くとギフトで百万ゴールドが来ていた。
テンション上がるな。
「確認しました! ありがとうございます!」
「あっ! ちょっと待って!」
立ち去ろうとすると引き止められた。
「あのぉ。ドラゴン倒した人に頼むのはおかしいと思うんですけどぉ……」
「はい。どうしました?」
「あの、道具屋の飼い猫が脱走したらしいんですよ……」
「猫が?」
「そうなんですよ。すごい賢くて誰にも捕まえられないらしいんですよ。捕まえてくれませんか?」
「それって報酬出るんですか?」
「道具屋さん次第なんですけど……」
「わかりました! 受けましょう!」
「ホントですか!? ありがとうございます! 詳しくは道具屋さんで聞いてください!」
「わかりました!」
ギルドを後にして道具屋へと向かう。
街を見渡すと路地が入り組んでいるのがわかる。
こりゃ、捕まえられないだろうなぁ。
路地が多くて逃げられる。
「ごめんくださーい」
「はーい」
「あっ、猫を捕まえる依頼を受けて来たんですけど……」
目を輝かせる道具屋の店主。
「ありがとうございます! うちの猫が脱走してしまって捕まえられないんですよぉ!」
「では、猫の色を伺ってもいいですか?」
「はい。白と黒のブチで、身体の左側にハートの黒い模様があるんです! 可愛いでしょ!?」
「え……えぇ。可愛いですね。わかりました。少し探してみます」
「お願いします!」
猫を探しながらこの街の造りを覚えないといけないなぁ。
あそこの路地とか、ここの路地とか。
どこが繋がっているかとか……。
街をグルグル回って道を覚える。
うーん。
広いな。
道はだいたい覚えた。
後は、捕まえる為には人がいるなぁ。
ピルルルルルル
『はいぃー。どうしたの?』
「ちょっと依頼を手伝ってくれないか?」
『何倒しに行くのぉ!?』
「いや、猫を捕まえたいんだ」
『猫? ……何やってんの?』
「いいだろぉ。なんでも。頼まれたんだよ」
『出た! ソアラのお人好し』
「シエラにもお願いしてくれよ」
『わかったよ。ちょっと待ってて! どこに行けば良い?』
「この前のベンチで待ってる」
『オッケー!』
◇◆◇
「呼び出して悪いな」
「しょうがないなぁ。後で報酬頂戴ね」
「いえいえ。私でお役に立てるなら」
「かぁぁ。人間性が出るねぇ」
シエラの返答に感心してそう言うと、ラブルがむすくれた。
「むー。手伝わないよ!?」
「わーった! 俺が悪かった! 手伝ってください!」
「しょうがないなぁ」
くそっ。
こいつめぇ。
「それで、猫はどうやって捕まえるつもりですか? というか、現時点の場所は分かるんですか?」
「あぁ。今いる所は発見した。そこから追い込むのに人手が必要なんだ」
「なるほどね。ソアラの本領発揮ね!」
ラブルがノリよく反応してくれる。
「あぁ。そうだな!」
マップを開いてマーキングしていく。
ラ①、ラ②、ラ③、シ①、シ②、シ③。
それぞれの配置と動きを示していく。
「わかるか? ラブルは最初に①の所にいて、猫が通ったら②に移動するこんな感じでシエラと三手ずつ。俺はそこ動きを埋めるように動く」
「「了解!」」
「じゃあ、散ってくれ!」
二人が持ち場に着く。
ピルルルルルル
『『はい!』』
「ここからはグループボイスチャットで行く」
『オッケー』
『わかりました!』
まずは、今いる猫のところに行く。
ここで昼寝をするのが好きなようだ。
ゆっくりと近づいていき、手を伸ばすと。
「ミャッ」
咄嗟に起きて走っていった。
さぁ。始まりだ。
『ラブルの所曲がって通過』
「次に行ってくれ」
順調だ。
俺も次の地点に向かう。
二ブロック先を塞ぐのだ。
作戦は裏路地で追い詰める作戦。
メインの通りには出さない。
『シエラの前を通過』
「よし。いいぞ。次頼む」
俺も着いたぞ。
猫がこちらに直進して来ようとする。
俺がいるのを見ると直前で曲がった。
「シエラ、次行ったぞ。そこはさっきも言ったが、路地が三股に別れているところの一つを塞ぐから選択肢は二つある。どっちに行ったか教えてくれ」
指示を出しながら走る。
『こちらシエラ、奥の方の路地に曲がりました! メイン側じゃない方に行っちゃいました!』
そっちに行ったか。
俺が間に合えばいいけど。
走るの遅いんだよな。
ステータス低いから。
三ブロック先の一ブロック中に入って塞がないと。
見えた!
猫が来る!
間に合え!
ズザァァァっとスライディングして道を塞ぐ。
驚いたように曲がっていった。
よしっ!
「ラブルそっち行った!」
起き上がって再び走る。
『ラブルの前を通過』
「シエラは、着いてるか?」
『着いてます!』
よしっ!
後は俺が最後の詰めだ。
路地に入っていく。
『シエラの前を通過』
「シエラは猫が戻った時の為にその道を塞いでくれ」
『了解!』
俺の目の前にはブチ猫がいる。
袋小路に逃げ込んだ為だ。
「そーれ、いい子だ。こっちにおいで」
手を差し出すと後ろにジリジリ下がる。
もう少しで後ろも壁だ。
「いい子だからほら」
手を伸ばすと。
「ミヤァァッ!」
俺の手を伝って頭に登ると壁を八艘飛びで登って上の屋根に行った。
「はははっ。やっぱりダメだったわ」
乾いた笑いを浮かべていると。
『こちらラブル。確保しました!』
「よくやった。やっぱり捕まえれなかったわ」
『先輩、動物に好かれないですもんね』
「うるさいわ。じゃ、道具屋集合な」
『はーい』
『わかりました』
◇◆◇
「本当に有難う御座いました!」
深々と礼をする道具屋の店主の腕には猫が抱えられている。
「どういたしまして。捕まえれて良かったです。すばしっこい猫ちゃんですね」
「はい。動くことが好きなんです! あの、今回の報酬なんですけど、店から好きなの一個ずつ持ってってください!」
「いいんですか?」
「いいんですよ。命より大切なブチちゃんが助かったんだから……」
ブチちゃん?
名前……。
安易すぎるんじゃ?
「やったぁ! 私欲しいのあったんだよねぇ!」
「私は何にしましょう。匂いを付けるスプレーが新発売何ですよねぇ。どうしましょう」
そう言いながら二人は店の中に入っていく。
何でも一つだろう?
何にしようかなぁ。
店内を見て歩いていると、一つ良さそうな道具が。
――――――――――――――――――――――
遠距離タッチポインター
ポインターで示したところが自分が触れたという判定になる。 ――――――――――――――――――――――
これって罠師に最強じゃない?
触れないと設置できなかった罠が、触れなくても設置できる。
この前みたいに演技して落とし穴設置しなくていいじゃん。
キーホルダーみたいになってる。
腰に付けておこう。
「これ貰っていきまーす!」
店主に声をかける。
「そんな物でいいんですか?」
「はい! 俺には最強です! 有難う御座いました!」
三人とも好きなアイテムを貰い、上機嫌で帰ったのであった。
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