第31話 速さ重視

「ふぅ。結局罠使っちゃったな」


「いやー。助かったわ。突進された時はどうしようかと思ったぜぇ」


 ガイエンが笑いながら近づいてきた。

 皆に労いの言葉をかけている。


「最初だからこの時間で済んだけど、こりゃでかいの来たら結構時間かかるかもな?」


「攻撃陣に頑張ってもらおう。お膳立ては全力でするさ」


「そうだなぁ。思ったほど攻撃も通らなくてなぁ。参ったぜぇ」


 頭を掻きながら「どうすっかなぁ」と呟いている。

 敵が硬いのなら内側を攻撃すればいい。

 あれを使えば少しだが、ダメージを与えられる。


「なぁ、ガイエン。もし次も硬いような敵だったら毒を使ってもいいか?」


「ん? あぁ、スリップダメージか……いや、いいかもしれねぇな! 時間を経過する事に効果がある。やってくれ」


「わかった」


 次のモンスターは何かなぁと。

 思慮に耽りながら休憩をする。

 休憩をしながらも罠の作成はしている。


 先程のクマ型のモンスターの手の部分が素材で手に入った。

 これでもいい罠が作れる。

 せっせと罠作りに励む。


 あっという間の四十分。

 二体目の出現は、驚く声が告げた。


「なっ!? なんだあれは!?」


 目を向けると全長三メートルを超えるヒョウのような黒くて四足歩行の獣型。

 しかし、肩の部分は長く上に伸びている。

 足の付け根も同じように上に伸び、動きが速そうな様相だ。


「ガアァァァァ!」


 咆哮が空気を震わせる。

 完全にスピード型だ。

 これはどうするべきか。


「ガッ!」


 モンスターが消えた。

 と思ったら、目の前のプレイヤーが吹き飛ばされた。


「なっ!? くそっ!」


 他のプレイヤーが応戦する。

 近くにいたプレイヤーが剣を振るう。

 が、届かない。


 すぐに居なくなる。

 と思ったら違うプレイヤーを襲っている。


「ぐわっ! 何だ!?」


「うわっ!」


 ここに撃破されて行く。

 ここにきてガイエンの激が飛ぶ。


「みんな! 落ち着くんだ! ガードに徹しろ! 後はソアラに任せろ!」


 えっ!?

 耳を疑った。

 俺に任せる!?


 ガイエンの方を向くと、サムズアップしていた。


 いやいや。

 こんな早いと捉えれるかなぁ。


 よくヒョウ型モンスターの動きを確認する。

 あちらこちらに動き、人を攻撃している。

 ジッと観察する。


 何か気づくことがないか……。

 何か……。

 ん?。


 アイツもしかして……。

 めっちゃ単純じゃないか?


 俺の考えた結論を元に標的にされる目標を割り出す。

 そして、ここに来ると予測し、罠を張る。

 ただ、設置した罠はジャンピングロックの罠だ。


 罠の発動するタイミングはロープを切る事で決まる。

 これは、俺のタイミング次第だ。


 予測していたプレイヤーが襲われる。

 予測してたのにごめんな。

 尊い犠牲だった。


 ロープを切ると、こちらにヒョウ型のモンスターが襲ってきた。

 タイミングが……。


スズウゥゥゥンンッ


 バッチリだった。

 岩に押し潰されたヒョウ型のモンスター。

 あっと、忘れてた。

 これこれ。


バシャァッ


 毒をかける。

 逃げられてもこれでスリップダメージが加算されていく。

 今のも結構効いたみたいだしな。


「何をボーっとしてる!? かかれ!」


 ガイエンの号令で一斉に攻撃を仕掛ける。

 上から伸し掛る岩に人が乗り、ヒョウ型のモンスターを逃がさないように抑えている。

 が、徐々に岩から身体を這い出してきていた。


 ズルッとモンスターが岩の下から身体を出した。


「散開!」


 プレイヤーは一斉に離れる。

 離れてガードの体制をとっている。


 モンスターからは毒のエフェクトが立ち上り、少し辛そうだ。


「ガルアァァァァ」


 怒りに満ちた目でこちらを見てくる。


「来るか?」


 目を合わせながら警戒する。

 身動きせずに、ポインターを周りの地面、木々に当てる。

 このポインターは自分が触れたことになるという意味のわからない性能だが、俺には好都合である。


「ガアァァァァ!」


 こちらに向かってきた。

 落とし穴が作動する。

 が、スピードが速い。

 そのまま突っ込んでくる。


 もう一つの落とし穴も発動する。

 と同時にロープを切る。

 落とし穴は作動したが、速い。

 落とし穴を回避してくる。


ズドンッッッ


 真横からの槍を放つ。

 横に吹っ飛ぶモンスター。


「やったか!?」


 それフラグ。

 横に吹っ飛んだが、起き上がり、こちらを向く。


「ソアラを守れ!」


 ガイエンの声にトラオムレーベンの壁役のゴンガが対応する、


「任せてけろ!」


 俺の前に縦を構えて陣取る。


ズンッッッ


 ヒョウ型のモンスターの突進を盾で受ける。


「この程度大丈夫だ! こいや!」


ズンッッッ


 ゴンガが受け止めている。


「ゴンガ!? 大丈夫か!?」


「だいじょぶだぁ! フン! シールドバッシュだ!」


 モンスターがよろめく。


「今だ!」


 合図を出すと同時にポインターを当てる。

 自分の前を囲むように。

 そして、モンスターに他のプレイヤーが攻撃をする。


「ファイアーストーム!」


「ウインドストーム!」


「スプラッシュ!」


「ソーラービーム!」


 俺もロープを切る。


 ナイフが足や腕に刺さり動きを鈍らせる。

 そこに、攻撃職の魔法が突き刺さる。


バリバリバリ!

ゴォォォォォ!

ドドドドドォ!

ビィィィィィ!


 数々の魔法が突き刺さる。


「ガ、ガァァァ」


 徐々に光に変わっていった。


 まだ二体目だが苦戦した。

 この先大丈夫だろうか……。

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