第32話 デカモンスター

「いやー、助かった。ありがとな」


 礼を言ってきたのはガイエンであった。

 バシバシと方を叩きながら笑っている。


「やっぱり、任せて正解だったわ」


「勘弁してくれよ……。タイミングが合ったからどうにかなったけど、ギリギリだったぞ?」


「まぁ、結果オーライだろ! 次は俺らが力をみせてやるよ!」


「みせれるモンスターだといいな?」


「だなぁ」


 少し話すとそれぞれ休憩に入る。

 手に入れた素材を元に罠を作っておく。


 罠が無くなったら俺は何も出来ないからなぁ。


「おつかれー。二体目もソアラ、活躍してたね? わたし達何も出来なかったよ……」


 そこにやって来たのはラブルとシエラであった。


「おぉ。次頑張ればいいだろ? 俺が活躍できたのはたまたまだぞ? 紙一重だった」


「そうなんですか? そうは見えなかったですよ? 凄いです! 全然、トッププレイヤーが活躍してませんでしたからね」


「シエラ、そう言ってやるなよ。次は活躍するって言ってたぞ?」


「どうだか」


 シエラが呆れたように言う。


 実際、次のモンスターはどんなのが出てくるのか。

 先程のモンスターでやられた者が何人かいる。

 このイベントは、一度やられてしまうと復帰できないのだ。

 

 死に戻ったら、イベント終了まで見ることしかできない。

 見る用のスペースがあるそうだ。

 そうこうしてるうちに、時間だ。


「来るぞぉ! 気合い入れろぉぉ!」


「「「おう!」」」


 ガイエンが喝を入れている。

 いい事だ。

 やっぱりカリスマ性があるんだろう。


 協力関係にないプレイヤーも巻き込んで一緒に戦っている。

 そういう巻き込んでしまう所も凄い。


「ゴルォォォォオォ」


 北から現れたのは五メートルはある巨大な……恐竜?

 二足歩行のティラノサウルスの様な感じのモンスターであった。

 身体は岩のように硬そうな様相だ。


 こりゃ大きいのが必要そうだな。

 歩幅を観察してどこに仕掛けたら良いかを測る。

 そして、ポインターを当てる。


「あと三歩で罠にかかる! 鉄線で前に引っ張るから転んだら総攻撃を頼む!」


「「「了解!」」」


ズズゥンズズゥンズズゥズズズゥン


 罠に掛かり前に倒れ込むモンスター。

 地面に手をつく。

 すると、手を鉄線に吊られて前に引っ張られた。


「ゴォォルォォ」


 前に倒れ込んで手を前にした状態で前に倒れる。


「今だ! 頼む!」


「行くぞぉぉぉ! 俺達の力をみせるんだぁぁ!」


「「「おおおぉぉぉぉ!」」」


 攻撃陣が攻撃しだす。

 魔法での攻撃も突き刺さっている。


「小太郎! 上に登って後頭部狙えるか!?」


 忍者の格好をしている集団に声をかける。


「可能でござる!」


「やってくれ!」


「御意に!」


 モンスターに向かって駆けていく。

 近くまで行くと鉤爪を回し始めた。

 次々と背中に鉤爪を引っ掛けてロープを伝って登っていく。


 おぉ。

 マジで忍者じゃん。

 あんなの出来るんだな。


 何でもありだな。

 流石UWOだな。


 登り終えた忍者達は後頭部に向かって忍術を叩き込んでいる。

 火球を出したり巨大な手裏剣を突き刺したり。

 ダメージは蓄積するだろう。


 あっ、忘れてた。


 ポインターをモンスター当てて発動させる。


バシャバシャッ


 毒を撒く。

 しかも、今回はスリップダメージを与える毒と麻痺毒である。

 これでしばらくは動けないはず。


 攻撃を開始して三十分が経過した。

 まだモンスターのHPは六割程が残っている。


 このままじゃまずい。

 時間内に倒せない。


 しかし、攻撃陣も魔法部隊が魔力切れを起こし始めていて魔力回復薬を飲みながら戦っているが、何時まで持つか。


「おーい! 今のままのペースだとぉ! 時間内に倒せないぞぉ!」


「わかったぁ! ペースをあげる!」


 攻撃陣に呼びかけるとガイエンが返事をしてきた。かなり攻撃しているが、物理攻撃はあまり効果が無いようだ。

 それ程モンスターが硬いのだろう。


 それから二十分余りが過ぎた。

 もうすぐ三割に到達する。

 もう少しだと思った所で。


「ゴォォォルォォォォォ」


ブチブチッッ


 鉄線の罠が切れた。

 急に暴れ始めた恐竜型のモンスター。

 狂乱状態になったようだ。


 立ち上がって暴れている。

 張り付いていた小太郎達も吹き飛ばされたようだ。


「ヤバイぞ! 時間が無い!」


「わかってる! けど、あんなのどうすれば……」


「ちょっと! あんた達トップのクランなんでしょ!? なんか対抗出来る策はないの!?」


 シエラがガイエンに噛みつく。


「あんなデカイモンスター普通出ねぇよ! 対抗策なんてある訳ねぇだろ!」


「ドラゴンとか大きいでしょうよ!?」


「それは、そうだけど、まだ戦った事ねぇ!」


 二人が周りを気にせず口論を始めた。


「待って待って! 落ち着いてよぉ!」


 間にラブルが入る。

 二人を引き離し落ち着かせる。


 その間も暴れ回っている恐竜モンスター。


「あれどうするかね!? ソアラさん、どうにか出来る?」


 慌てた様子で駆けてきたのはパワードさんであった。

 マッチョでパワー自慢のパワードさん達でもあの大きさのモンスターはどうしようも無かったようだ。


「どうにかなるかもしれません。しかし、ダメージがどの程度与えれるかはわかりません。なので、時間内に倒しきれるかは……」


「でも、やらないよりはいいだろ!?」


「そうですね! やってみましょう!」


「万が一攻撃されたら俺達が受けてやる! 一緒に行くぜ!?」


「有難う御座います!」


 暴れている恐竜モンスターに近づいていく。


「ゴルォォォルォォォ」


 近づいてきた俺達に気付いたのだろう。

 足で地面をズドンズドンと踏んで威嚇している。

 ポインターを向けるが、これにも射程はある。


「ここでいけるか!?」


 まだポインターの光が地面に届いていない。

 もう少し寄らないと。


「もう少し行けますか?」


「もう少し行ったら攻撃の射程に入っちまうぞ!」


「わかりました!」


 ポインターを少しこちら側に当てて罠を設置する。


「下がりましょう! 少し、ちょっかいを掛けられますか!?」


「何か投げるなら届くと思うが……」


「では、これをどうぞ」


 インベントリから出したのは尖った鉄くずだ。


「よしっ! 任せろ!」


 大きく振りかぶって投げた。


「うりゃあぁぁぁぁ!」


 綺麗に飛んで行く。


ザシュ


 顔の近くを切り裂いた。


「ゴルォォォ!」


 こっちを向いた。

 一歩、二歩、三歩!


ズズゥゥゥンッ


 落とし穴が発動する。

 今回の落とし穴はすべての鉄クズをつぎ込んだ巨大な落とし穴だ。

 片足は膝まで入った。


ブスブスブスブスッ


「ゴルォォォルォォォ!」


 もがけばもがく程ダメージを受ける。


「残り二分だ!」


 誰かの声が気持ちを焦らせる。


「魔法で総攻撃!」


「うてー!」


 俺の声を聞いたガイエンが合図を出してくれる。

 それを合図に数々の魔法が放たれる。


ズドドドドドドドォォォォォォンッッ


「やったか!?」


 誰かの声が聞こえた。

 それはフラグでは?


 煙が晴れていく。

 モンスターは。


「ゴルォォォ!」


 健在だった。


 おい!

 スリップダメージちゃんと効いてんのかよ!?


 モンスターは怒り狂っている。

 そんな中最悪の事態に。


「次のモンスターが出てくるぞぉー!」


 現れたモンスターは!?

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