第30話 協力イベント序盤

「本日の告知していた協力イベントは時間が決まっていまーす! スケジュールを発表しまーす!」


 話しているのは天使のキャラクター。

 イベントに出てくるいつもの運営さんだ。

 イベントは一時からである。

 五分前になった今、イベントの説明に来たようだ。


「一時になったら北の方向にモンスターが出現しまーす! プレイヤーの皆さんはそのモンスターを倒してくださーい! ただし、モンスターは一時間毎に出現しまーす! 倒せなくても増えていくので注意でーす! 五体で終わりでーす! では! 時間が来るまで待っててねぇ!」


 説明を終えると、運営さんは空へと羽ばたいて去っていった。


 時間まであと三分だ。

 トラオムレーベンと協力するプレイヤーが周りに集まっている。

 皆でセカドタウンの北に歩き出す。


 作戦会議の後に気づいたのだが、実際に戦う時、トラオムレーベンと仲間達だけじゃないよね。という事である。


 イベントはみんなのイベント。

 それぞれで作戦を立てて来ているだろう。

 そこに俺達の作戦で全部倒そうなんて無理ではないか?


 そう思い始めて居たのだ。

 しかし、その思考はトッププレイヤーによって払拭された。


「みんなー! 行くぞー! お前らも着いてこーい!」


 ガイエンが先頭になり、走り出した。

 周りの関係ないプレイヤーもついて行く。

 訳が分からないがついて行けば面白い。

 そう思っているようだ。


 はははっ。

 流石だな。

 カリスマは違うな。


「ソアラ? ついて行かないと出遅れるよ?」


「そうですよ!? 参謀なんですから!」


 作戦会議の時は恥ずかしくて前に出れなかったラブルとシエラ。

 今はそばに居てくれている。


「あぁ。わかってるよ。行こう」


 ちょっと小走りでついて行く。

 すると、お呼びがかかった。


「おい! ソアラ!? 何処にいる!?」


「はいはい! ここに居るよ! ついて行ってるから大丈夫!」


 ガイエンは安心したように。

 しかし、他の人達はトッププレイヤーが何故俺を呼んだのか分からないといった様子だった。


 それは、そうだろう。

 俺みたいな罠師をそんな扱いするのは、ガイエンだけである。


 三人で前の方に駆けていく。

 段々と街から遠ざかっていく。


「もうすぐ一時だ! カウント!」


「五! 四! 三! 二! 一!」


ゴゴゴゴゴゴォォォッッ


 地上から出てきた。

 そのモンスターは三メートル位であった。

 クマのようなモンスター。


「よしっ! まずは前で抑え込んで!」


「「「おう!」」」


 咄嗟に俺が指示を出す。

 トラオムレーベンと協力するプレイヤーが前におどり出す。

 そして、盾を構える壁役のプレイヤー。


 あの程度の大きさならやれる!

 俺の出る幕じゃないだろうけど、少し俺も手を加えておこう。


 盾が抑えている所を前衛陣が攻撃している。

 そこの周りをちょこまか動く。

 ここに入るなラインを作り、伝える。


「ここのラインは入らないで!」


「「「おす!」」」


 ダメージが蓄積されていく。

 レイドモンスターだけあって、しぶとい。


 最初は抑えることが出来ていたが、攻撃されると暴れている。

 モンスターは腕をただただ振り回す。

 しかし、そのパワーに押され始めていた。


 恐らく、協力クランの人では無いのだろう。

 攻撃職の前衛陣が攻撃しまくっている。


「グルルルルルァァァァ!」


 両手で地面を叩く。

 グラグラ揺れる地面。


 動揺が走る。

 なんと……クマさんが突っ込んできた。


ドゴォォォォンッ


 五人余りが吹っ飛ぶ。

 ポーリングのピンのように、パカァーンッと吹っ飛んだ。

 しばらく戦線には復帰出来ないだろう。


 進行方向をこちらに変えた。

 四足歩行で走ってくる。

 ニヤリ。


ドォォォォンッッッ


 落とし穴に落ちた。

 そして、ロープを切る。

 両脇からのパワーゴリラの拳が襲いかかる。


ドゴドゴォォォォンッッ


 少しフラついている。


「今!」


「ファイアーストーム!」


「おりゃーーーー!」


 クマ型のモンスターを炎の渦が巻き込む。

 そして、前衛職で最初に反応したのはラブル。

 一目散にタイミングを合わせて駆け出して攻撃している。


 得意のめった切り。

 ただ剣を振っているだけの攻撃だが、ダメージは入っている。

 近くの前衛職が慌てて横に加勢に行く。


「グルァァァァァァ!」


 モンスターが穴から這い出ようとしている。


「これでどうだ!」


 ロープを切る。

 バシュッと大きな身の丈もある突撃槍が飛んで行った。


ドスッッ


「グルルルァァァアアアア」


 再び穴に落ちていく。


「畳み掛けろー!」


「「「おおおおぉぉぉ!」」」


 魔法での攻撃、忍術の火球が飛んでいく。


ドドドドオォォンッッッ


 その後に、武器を構えたプレイヤーが突入する。

 剣で切り裂き、槍で突き、斧で叩き切られる。

 波状攻撃に為す術なくやられるモンスター。


「グルォオォオオォォォ」


 最後の力を振り絞るモンスター。

 しかし、落とし穴に落ちている為暴れても効果はない。

 追撃の魔法が突き刺さる。


 やがて、力尽き。

 徐々に光に変わっていった。

 ドロップが出る前に罠を解除する。


ドバッ


 素材が散らばる。

 それぞれで近くのドロップを拾う。


 トラオムレーベンとその仲間達の一体目の戦闘は終わった。

 一体目は撃破時間二十分。

 このまま時間内に倒せればいいが、いけるか。

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