第18話 ラストスパート
ズズズッ……ズズズッ
昼休憩になった為カップ麺を啜っていた。
そして、少し考える。
これから午後は皆が最後の勝負に出る。
俺達もどうにかアイテムを貰いたい。
ランキング表示がリアルタイムであれば少し作戦のたてようがあるのだが、昨日の時点でのランキングが出たあと、次に更新されるのは終わった後なのだ。
「うーん。どうしたもんかなぁ」
ピロンピロンピロン……
「ん?……もしもし?」
『あっ、先輩? さっきはごめんなさい。心構えをしてなかったから余計にビックリしちゃって……腰抜かしちゃった』
「あぁ。しょうがないだろ。俺も昆虫のエリアだったことを入ってから思い出してな。愛琉が苦手なのも思い出したのが同じくらいで。その時には既に遅かったんだよ。悪かった」
『うぅん。先輩は悪くないよ……ここからどうすれば良いのかな? どうすれば沢山モンスターを狩れるんだろう……』
「そうだなぁ。限界があるよなぁ………………ん? 貢献度でランキングされるんだよな?」
『そうみたいだよね?』
「だったら────」
◇◆◇
「じゃあ、俺は行ってくる! 二人もなるべくモンスターを倒しててくれよ!」
「うん! 頑張るよぉ!」
「はい! 出来る限り倒します!」
ラブルとシエラを置いて俺はセカドタウンの周辺を回ることにしたのだ。
北の森の中を駆け巡る。
色んなところに罠を仕掛ける。
森を抜けると東に向かう。
そこまで速さがない為、時間がかかりそうだ。
時折モンスターに遭遇する。
なんとか罠を張って逃げながら向かう。
ピロンッ
通知を見ると罠が発動し終わって解除された後のドロップを取得した通知だった。
罠でひとつ便利な機能がある。
それは、落し穴の罠の場合、罠が解除された際に穴の中に入っていたドロップ品は自動でインベントリに入るのだ。
それを活かすため、ひたすら落とし穴を設置しているのだ。
その為に素材を売った金でスコップを買い占めてきたのだ。
東、南、西と巡ってそろそろ大詰めを迎える頃、最後のレイドボスが各方面に現れた。
北に急いで戻る。
北のレイドボスは……巨大な毒持ちの蜘蛛、ビッグポイズンスパイダーであった。
「あぁ。こりゃラブルが使い物にならんぞ」
急いでラブル達を探す。
「とぉぉぉりゃぁぁぁぁ!」
果敢に攻めていく前衛達の中にラブルを見つけた。
なぜ?
なんで大丈夫なの?
「あっ! ソアラ! なんか、ラブルは大きすぎて感覚が麻痺したみたいですよ? 逆に平気だとかなんとか」
「はぁ。そんなもんなんだな。現実と違いすぎてってことか?」
「ふふふっ。だと思いますよ? 不思議ですよね?」
「あぁ。全く。じゃあ、最後だ! 踏ん張るぞ!」
「はい! ファイヤーストーム!」
蜘蛛の進行方向にロープの罠を張り足止めする。落とし穴は在庫が切れてしまった。
他のプレイヤーも蜘蛛の足に攻撃を加えている。
急に蜘蛛が身体を起こしおしりを向けてきた。
「避けろ!」
声をかけて自分も横っ飛びで逃げる。
バシャァァァ…………ジューーー
「毒だ」
こりゃ浴びたら終わりだな。
けど、何とかなる。
モーションが大きいから、来る時はわかる。
「熱で焼却です! ファイヤーストーム!」
他のプレイヤーも攻撃しているが、中々ダメージが入らない。
また上体を起こしてシリを見せてくる。
「ラブル! 毒を避けながらシリに攻撃してみてくれ!」
「わかった!」
バシャァァァ
毒を出す。
ザシュザシュザシュ
「キィ……シュルルル!」
そのまま仰向けに倒れた。
こういうギミックだったんだな。
「総攻撃!」
プレイヤーが呆気に取られていたので声を上げて意識を戻させる。
総攻撃により一気にダメージが減る。
「これでなんとか倒せそうですね」
「あぁ。あと五回くらい同じ感じでやればいけるだろう」
そこからはただの作業と化した。
ギミックがわかればなんということは無い。
蜘蛛が光に変わる。
「終わったなぁ」
「あぁ。倒せたー。疲れたよぉー」
ラブルが大の字に寝っ転がる。
「コラコラ! 女の子がはしたないわよぉ?」
「いいじゃん。どうせゲームだし」
「そうだけど、見てる人がいっぱい居るのよ? それなのに、こんな所で寝っ転がるなんて……」
「どうせスカートの中は見えない仕様だしいいじゃん」
このゲーム、リアルではあるのだが服の中は見えない設定になっているのだ。余りに変な人が居た時用にハラスメントの報告もできるようになっている。
「ラブル。起きたらどうだ?」
「むーー」
ラブルが怠そうに起き上がって横座りをする。
「あら? ソアラのいうことは聞くのね?」
「別に……」
そっぽを向くラブル。
ヒューーーーーードォォォォォーーーンッ
花火が上がった。
と思ったら天使が降りてきた。
「はぁーーーい! イベント終わりだよぉ! どうだったかなぁ? いっぱい倒せたかなぁ? ランキングは今日中に集計します! 明日の昼十二時に公式ページで発表します! 楽しみに待っててねぇー!」
手を振って天に帰っていく天使。
「ランキングって今日出ると思ってた……」
「私もぉ」
「私は次の日だって知ってたわよ? 毎月恒例なのよ? 情報なんて腐るほどあったわよ?」
シエラが呆れたように言う。
そりゃそうか。
恒例行事なんだもんな。
「そりゃそうか。明日まで待ちますか!」
疲れたのでその日はもうログアウトして、夜ご飯を食べて寝に入るのであった。
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