第14話 注目

「等間隔に罠を仕掛けるぞ! 俺が誘い込むから掛かったら攻撃な?」


「「了解!」」


 一時間が経過した頃、段々と戦い方に慣れ始めてきた三人。今は森の中だが。

 その戦い方は注目を浴び始めていた。


 ポロッポロッとエサのようなものを少量ずつ撒きながら罠に向かう。

 罠を越えたあたりで更に罠を仕掛けて待ち構える。


 そこら中にモンスターがいるので入れ食い状態である。

 茂みに隠れて様子を見ているとエラのようなものを食べながら三体のパワーゴリラがやってきた。


「またコイツらか」


 今回張ったのはロープの罠だ。

 こいつとは相性がいい。


 エリアに入った。


バシュバシュ


 等間隔に配置されていたロープに三体同時に腕を取られる。


「「「グルルァァァ」」」


 三体とも雄叫びを上げて罠を引きちぎろうとする。

 一気に第二の罠を放つ。


ドスドスドスッ


「グルルルラァ……」

「グ……ルルァ」

「グル……ァ」


 それぞれの個体で効き目が違うようだが、聞いている。

 胸に放たれたナイフには麻痺毒が塗ってあり、麻痺もするしスリップダメージもあるというものであった。


「今だ! 行けっ!」


「ファイヤーアロー!」


「セイヤァァァ!」


 一体はファイヤーアローが顔面に突き刺さり顔から煙を上げて光に変わる。

 もう一体はラブルに滅多切りされ光に変わっていく。


 最後の一体は二人の総攻撃ですぐに光に変わった。


 それは、他のプレイヤーには異様な光景に見えた。何せ罠を仕掛ける側が攻撃を支持し、駒のように他の二人を動かしているのだから。


 このゲームUWOの中の常識では罠師は不遇職で、少し罠を張ったら罠が尽きる。

 だから、後ろで少し罠を張りつつ補給係になってしまうのが常だった。


 その常識を覆す男がいる。

 MP回復薬を飲みながら罠を設置する男。

 その罠にかかったモンスターをひたすらに狩る女の子二人。


 そこに声をかけた勇者がいた。


「やぁ。そこのお二人さん、前衛後衛でバランス取れた二人なのになんで罠師なんかと組んでるの? 僕のところに来ない? 僕のところのクランは盾もいるから安定して狩りができるよ?」


「モンスターに襲われるかもしれない事を予測してガードしてくれる盾ですか?」


「私はこちらの方が効率がいいと思います。罠でもダメージを与えて私達も攻撃を加える。盾で防ぐだけで効率よく出来ますか?」


「い、いやぁ。襲ってきたモンスターはガードするけど攻撃しに行ったモンスターが攻撃してくるのを予測してガードするのは無理かな……効率だけを考えるとたしかに罠でもダメージ与えた方がいいかも……ね……」


「じゃあ、いらない」


「私も必要ないです。さようなら」


 ションボリして帰っていく鎧を着た男。

 実はトップクランだったりするのだが、口撃を受けてノックアウトされてしまったようだ。


 この光景を見た周りのプレイヤーは話しかけることを諦めたと思われたが。


「すみませーん。あの、罠師の方ですよね?」


 ソアラに話しかけてきた。


「はい。そう……です」


「あっ、別に馬鹿にしている訳では無いですよ?」


 友好的な感じで話しかけてくる。

 感じのいい男性だが……?


「単純に疑問に思っちゃって声掛けちゃったんですけど、罠ってそんなに作れるもんなんですか?」


「ん? DEX依存だが、簡単なやつは数は作れるだろ?」


「あー。知り合いにいるんですよ、罠師。聞いた話によると金がないと作れないらしいんですけど、金策も出来ないらしくて……」


「そうか? 一体狩れれば魔石売って少し罠を作れるだろ?」


 その言葉を聞くと、男は慌てたように問い詰めてきた。


「えっ!? ちょっ! 待ってください! 魔石を売ってるんですか?」


「ん? そうだけど?」


「じゃあ、探索者ギルドに収めないとランク上げれないじゃないですか?」


 怪訝な顔で聞いてくる。


「俺にはランクを上げるメリットが見当たらなくてな、登録はしてるけど、ランクは上げてないんだよ」


「えっ!? じゃあ……Fランク?」


「だな」


「は……はははっ! 凄い! 金策は魔石を売るのが良いのか! はははっ! 面白いことを聞いた! ランク上げを犠牲にするだ……これは発見だ」


 なんか男が興奮したようにガッツポーズをしている。


「あっ、申し遅れた。私はUWOで検証とかを主にしているクランでウォーケンのワトソンという」


 なんで、助手の方?

 しかも何故探偵の名前……?


 不思議そうな顔をしていたためであろうか笑い始めた。


「ハッハッハッ! 不思議そうな顔をしているね? 私は推理物も好きで特に主人公ではなくて脇役が好きなんだ! 素晴らしくないか? 主人公を引き立てる脇役」


 物凄い饒舌に話をしているが俺の隣にいる二人は完全にひいていた。


「あぁ。失礼。すぐ興奮してしまっていかんね。いや、貴重なお話を聞けた。どうもありがとう。しかし、少し引っかかるところもあるんだ……」


「ん? なんだ?」


「毒のナイフを使った罠を使っていたように見えたんだが、合っているだろうか?」


「あぁ。たしかに使ってたな」


「ひとつの罠に負荷をつける際にはオプションというので追加で素材をつけると聞いたが?」


「あぁ。合ってるぞ」


「毒をつけるオプションは一体追加でどれだけのDEXが必要なんだろうか?」


「何が言いたい?」


「いやー。なんだかDEXを強化する方法でもあるのかと気になってねぇ」


「いくらだ?」


「ん? 何がだい?」


「その方法とやらを話したらいくらくれるんだ? と聞いてる」


「ハッハッハッ! あぁ。すまない。そうだね! 貴重な情報には対価が必要だ。そうだねぇ。十払おうか」


「お帰りはあちらです」


 手をワトソンの後ろへ向け帰るように促す。


「おっと、間違えた。五十でどうかな?」


「回答は、DEXを強化するアイテムがある。だ」


「はっ……ハッハッハッ! こりゃ一本取られた! 返答としては間違っちゃいない。強化する方法を教えたんだからね。面白い! フレンド登録しないかい?」


「あぁ。こちらとしても情報は欲しい」


「いやー。いい関係になれそうだ。これ、五十万ゴールド、ギフトで送っておくよ」


「ホントにいいのか?」


 ホントにくれた事に驚く。


「えぇ。毒での追加のDEXは30。今の時点で罠師が上げれるレベルはたかが知れてる。基本のステータスから計算して、それを補うだけのアイテムがあると知れたのだから、重畳だろう」


「はっ! どっちが一本取られたんだか」


「ハッハッハッ! これからも、よろしく頼むよ? ではね!」


 去っていくワトソン。

 少し言葉遊びが出来て楽しい時間であった。


「楽しそうな顔してるね?」


「そうか?」


「むーーー」


「はいはい! ヤキモチ妬かない! モンスター倒すよ!」


 しかし、一旦昼休憩になるのであった。


 思いのほか話してた時間が長かったんだな。

 昼何食おう。

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