第9話 クラン結成

 街の入口に行くと上機嫌そうなラブルがいた。


「せんぱーい。クラン名考えましたぁ?」


 それを聞いたということは、オッケーを出したと言うことだな。


「んー。だいたい考えてるよ……プリディクターとか」


「どんな意味なんですか?」


「予測者って意味」


「なるほどー。先輩にはピッタリって訳ですね」


「ラブルよ、その先輩っての、身バレになるんじゃないか? 気をつけた方がいいぞ。俺はバレてもいいけど、ラブルはバレたくないだろ?」


「んー。そうですね。ソアラと呼ぶことにしますね」


「敬語もいらないぞ?」


「そうですか? なら、ソアラ、クランを組もうではないか!」


「なんで、急に偉そうなんだ……」


 呆れながら街に入る。


「クランの申請はギルドでやるのか?」


「そうよ! 窓口で手続きするのよ!」


 シエラが答えてくれた。


「詳しいんだな?」


「私ね、前に違うクランにいたの……」


「まぁ、深くは聞かないさ。行くか」

 

 ギルドに向かい、窓口に行く。


「すみません。クラン登録したいんですけど……」


「はい! クランマスターのギルドカードを貸してください」


「あーシ────」


「「ソアラ!」」


「俺か? ランクは最低だし、なんにも貢献できないやつがマスターなんて不味いんじゃないか?」 


「 まぁ、まぁ、いいじゃん」


「まぁまぁソアラさん、私達が信頼しているということで。それに、クラン名、ソアラさんそのものですよ?」


「う……うぅ。まぁ、いいですけど……何にもできないからな?」


「やたっ!」


「お願いします」


 二人ともお辞儀をしてくる。


「わかったよ……ったく。はい。お願いします」


 ギルドカードを渡して結成の申し込みをする。


「クラン名は何にしますか?」


「プリディクターでお願いします」


「はい! 畏まりました!」


 手続きが終わるとカードを返される。


「では、クラン、プリディクター、結成完了しました」


「「「ありがとうございます」」」


 クランは皆が自由に結成することができる。

 だから、色んなクランが存在する。

 仲良しクラン、仕事の集まりクラン、宗教的クランなど色々ある。


「クランホームとかもあるのよ?」


「家を買うってことだろ? 俺は常に金欠だから無理だぞ?」


「いいよ。私達で何とかしよう!」


 ラブルが頑張るポーズで意思表示をする。

 

「ねぇ、それじゃあクラン結成のお祝いしません?」


 シエラが様子を伺いながら聞いて来た。

 俺の事を気にしているのだろう。


「あぁ。俺はいいよ」


「私も問題なーし!」


「じゃあ、私のおすすめのお店に案内します!」


 シエラを先頭に店に向かって歩いていく。


「ソアラさんはお酒、飲まれます?」


「あぁ。好きな方だなぁ。っというか毎日飲んでしまうんだが」


「ふふふっ。そうなんですね。私もほぼ毎日飲んじゃいます!」


「それは意外だな」


「そうですか?」


「私もお酒好きですー!」


 間に割り込んできたのはラブルであった。


「それは知ってる! 今はシエラに聞いてんだよ!」


「ふふふっ。ごめんごめん。やきもち妬かなくても大丈夫だから」


「ヤキモチ?」


 俺がシエラと話してたからシエラを取られたような気がしたと。

 そういうことか。

 気を付けないとな。


「あぁ。気が利かなくて悪い。シエラを取ったわけではないぞ? さぁ。楽しく話せ」


 そういうと後ろに引いた。


 女って難しいなぁ。


 そう思って二人を見ていると、ラブルからは怪訝な視線を送られ、シエラからは呆れ笑いで見られている。


 俺、そんなにまずいことしたか?

 これは先が思いやられるぞ。

 俺が気疲れしそうだ。


 そういうしているうちに、店に着いたようだ。


 雰囲気のある居酒屋のようなところ。

 中に入ると元気なホールさんの声が聞こえ、席に案内される。

 全部個室になっているようで視線が気にならなくていい。


「何を頼みます? ソアラさんはエールにしますか?」


「あぁ。そうだな。食べ物は何があるんだ?」


「ここのお店はほぼなんでもあるお店なので、お刺身もあれば、唐揚げもありますし、焼き肉も中華もありますよ? メニューを開いて見てください。注文アイコンが出てるんですよ」


 メインメニューを開くと、アイコンが新たに出現していた。

 そのアイコンをタップする。

 すると別のウィンドウが開いた。


「おぉ。ホントだ。この右上の番号はテーブルの番号だな?」


「そうです。ここにこのテーブルの頼んだもののリストが載ります」


「なるほど、被らないように注文ができるわけだ」


「そうです。右下のボタンが注文のボタンで、そこをタップするとメニューの一覧が出てきます」


 言われた通り注文ボタンをタップすると、ズラッとメニューが出てきた。

 

「おぉ。色々あるな」


 メニューを見てみると色々ある。

 定番のはほとんどおいてあるな。


 えーっと、ホッケ焼きと枝豆、あと刺身盛り合わせっと。

 とりあえずいいかな。


 テーブルのウィンドウに戻ると、凄い勢いでリストが増えている。


「お、おい。こんなに食えるか?」


「だって、ここで食べても太んないじゃん? だからいっぱい食べるんだぁ」


「なんかお前はっちゃけてるな。口調までもう友達感覚じゃないか?」


 頬をヒクヒクさせてその様子を見る。


「これでよし!」


 少し待つと料理が運ばれてきてあっという間にテーブルはいっぱいになった。


「それでは、乾杯しましょうか! では、クランマスターのソアラさん、お願いします!」


「俺でいいのか? じゃあ、かんぱーい」


「「かんぱーい」」


「ソアラ、それだけー? なんかあるでしょ? みんなで頑張っていきましょう! とかさぁ」


 まだ酔っぱらっていないのに絡んでくるラブル。


「ングッ……ングッ……ングッ……プハァー! 美味いなぁ。シエラ、こいつの事は気にせず飲もう」


「ふふっ。そうですねぇ」


「むーーー! またそうやってぇ!」


「ふふふっ。まぁまぁ、ラブル。ほら、これ美味しいんだよ?」


 プリンをスプーンで取って差し出すと、パクッと口に含めた。


「おいしぃ!」


「でしょ? よかったら食べる?」


「うん!」


 流石、一緒にいるだけある。

 シエラはラブルの扱いが上手い。

 手馴れてるな。


 暫くは雑談が続いた。

 主に罠師についてのだが。

 何ができて何が出来ないかが分からないとの事で質問攻めにあったが、回答はこう。


 罠を作成して設置する以外に出来ることはない!

 こう断言した。

 レベルは上がり、ステータスは上がっているがDEX以外はちょっとしか上がらない。


「そうだ。クランを組んだからには言っておかないといけないと思うんだけど……」


 そう言いながらラブルを見ると、頷いた。

 シエラなら大丈夫って事だな。


「実は、俺はあるアイテムを拾ったんだけど、それがとんでもない性能でな」


「へぇ。DEXプラス10とか?」


「ブッ! ハツハッハッ! それ、私と同じ考えだね!」


「違うの?」


「DEXが最大になるんだ」


「へぇそうなんですか。最大ねぇ………………ん?……最大?……さいだいってなんでしたっけ?」


「一番高いことかな?」


「えぇぇぇ!?」


 目を見開いて驚く。


「あれ? 罠師ってDEX依存で作れる罠が増えていく感じですよね?」


「うん。そうだね」


「じゃあ、今は、素材さえあればなんの罠でも作れる?」


「そうなるね。だからドンドン大物を狙っていこうかと思ってるんだ」


「だから、パワーゴリラも倒せたんですね」


 納得いったというように手をパチンと合わせる。そして、ウンウンと頷いた。


「じゃあ、この勢いで私も前のクラン辞めた理由を話します」


「おい。別に無理しなくても────」


「いいんです。前のクランは……前の旦那が作ったクランでした。離婚をしたので、離れました! それだけです!」


「えぇ!? シエラ結婚してたのぉ!?」


「もうしてないわよ? ラブルに出会った頃はもう離婚は成立してたわ。黙っててごめんなさいね?」


「ううん。いいよ。わざわざ自分から話すことでもないもん。ずっと話さなくても良かったのに」


「なんか、それだとこのクランメンバーに慣れない気がした。それだけよ。さぁ、飲むわよー!」


 この日は遅い時間までゲーム内で飲んでいたのであった。

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