第34話 協力イベント最後の激闘

「「「うわあぁぁぁぁ!」」」


 狼狽えるプレイヤー達。

 白いからだにしっぽが生えて大きな一つ目。

 全身毛がなくツルツルであるし、少し光沢があるようだ。


 なんだ?

 もしかして金属?

 不気味なモンスターだな。


「オラァァ!」


 一人の剣士が切り掛る。


キィィィインッ


 弾かれてしまった。


「キシャァァァァ!」


 シッポに叩かれて吹っ飛ばされた。


 おいおい。

 こんなのどうやって倒すんだよ?

 まずは動きを止めるか?


 その白いモンスターは次の標的に目を向けている。


 そっちか。

 新候補にポインターで罠を仕掛ける。


 白いモンスターは少し屈んだかと思ったら。

 一瞬で次の標的の元に突っ込んでいた。


ズドォォォンッ


 なに!?

 なんで罠が発動しない!?

 地上を走っていれば罠が発動するはず!


 さっき見た光景をもう一度思い返してみる。


 あっ。

 跳躍してんのかアイツ?

 つまり、一歩であそこに移動したと?


 そんなのありかよ。

 後半、俺の天敵だらけじゃないか。


 次々と味方を減らされる。

 何を見て標的にしてんだ?

 観察していると、ファイヤーボールが飛んできた。


 咄嗟に避けている。

 アイスボール、アースニードル、ウインドカッター。

 様々な魔法が向かってくるが全てシッポに弾き飛ばされている。


 なんだアイツ!?

 ヤバイぞ!

 ん?


 こちらを見た白いモンスターの目には『MP』と書かれている。

 魔法士の方を見るとそちらに襲いかかった。


 もしかして、ステータスの値で高いやつを襲っているのか?

 だとしたら、DEXが出たら一目散に俺の所に来るな……。

 けど、DEXを狙う必要があるかは疑問だよな。


 観察していると、三人くらい攻撃した後にまた別のステータスになる様だ。


「ソアラ! どうだ? なんかわかったか!? あんなやつどうすればいい!?」


 聞いていたのはガイエン。


「アイツの目に出てるステータスの値が高いやつが襲われているみたいだ。戦闘に必要なステータスが出る確率が高いと思われる。そして、火属性は避けたのに他の属性は弾いてる」


「火属性に弱いってことか?」


「そうかもしれない」


「よしっ! 一斉に攻撃する!」


 ガイエンは指示を出しに駆けていく。


 アイツはまだ生きてたんだな。

 なんでだ?

 ステータス高いはずだよな……。


 遠目から見ていると側近達と固まって動いている。

 あぁっ! 前面に出てるやつのステータスしか認識しないのか!


 固まればいいのか!?

 いや、でも万が一、一番前のやつが襲われたら一気に全員やられる可能性もある。

 やっぱりバラバラに居ないとダメか。


「撃てーーー!」


ドドドドドォォォンッッ


 白いモンスターの元に炎の球が多数着弾する。

 白いモンスターが見えなくなる。


 煙が晴れるとまだ生きていた。

 しかし、片腕が無くなっている。

 腕を犠牲にしてガードした様だ。


 けど、これでわかった!

 やっぱり炎に弱い!

 それならやりようはある。


 ちょっと勿体無いが……。

 少し下がり木々のあるエリアに陣取る。

 罠を仕掛けて待機。

 これは、一かバチかだ。


 皆が火属性の魔法で戦っている。

 白いモンスターも避けながら応戦している。

 が、徐々にやられて行く魔法士達。


 すると、急に白いモンスターがキョロキョロしだした。


 遂に来たか……。

 タイミングが大事だぞ。


 今回はトラバサミと取っておきの素材を組み合わせた罠をメインに使う。

 まず、トラバサミにかける為に動きを一瞬止めさせないと……。


 白いモンスターがこちらを向いた。

 目が合うと屈む。


 来たっ!

 屈んで、一、二……ここだ!


 ロープを切り真正面のY字のパチンコから突撃槍を射出する。


ズドンッ!


 白いモンスターのスピードが一瞬緩んだ。


ガチャンッ!


 トラバサミが足を掴んだ。

 これで、罠が発動する。


『グルアァァァァァァァ』


 白いモンスターの正面に現れたのはドラゴンの首から上の部分。


 そう。今回使った素材は以前、たまたま遭遇してなんとか倒したドラゴンと火の魔石を使った罠だ。


 勿体ない気もするが、コイツを倒さないとこのイベントは皆が勝利できない。

 皆が勝つ為なら仕方ない。

 

 ドラゴンが口を開いて口内に炎の渦を溜める。

 すると、白いモンスターもパカッと口を開いた。


 えっ!?

 アイツ口あったの?

 しかもこっち向いてるじゃん。


 ドラゴンの方というより俺を向いている。

 ヤバイヤバイヤバイ!

 早く撃ってくれ!


『グルァァァァァ!』


 炎の咆哮が白いモンスターを包み込む瞬間、白いレーザーがこちらを向けて放たれた。

 目の前が真っ白になる。

 モンスターの後ろにガイエンが見えた気が……。



「はっ!?」


 セカドタウンの協会であった。


 あれ!?

 死に戻った!

 あのモンスターは!?


「はぁぁい! プレイヤーの皆さん、おめでとうございまーす! 今回の協力イベントはプレイヤーの勝利でーす! 皆にゴールドとアイテムの配布をするねぇ! 今集計をしていて、今夜8時にMVPを発表するねぇ!」


 勝ったのか……。

 最後の炎でやったのか?


ピルルルルル


 ラブルからのボイスチャットだった。


「はいはい」


『ソアラ大丈夫!? 最後は相打ちだったね……』


「俺の罠でどうにかアイツを倒せたんだな。よかった」


『でも、死んだら元も子もないよ!?』


「まぁ、倒せたならいいさ」


『今、皆で戻るから!』


「はぁぁぁ。詰めが甘かったか……。もう一発用意しておけば良かったかなぁ」


 協力イベントはこうして幕を閉じた。

 

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