第27話 協力関係

「ねぇ先輩、公式サイトみたぁ?」


「んー? いや、今日は見なかったなぁ」


「なんか今度は皆で協力するイベントをやるらしいよ?」


 昼ご飯を食べながら愛琉から告げられた。


「協力するイベント? レイドか?」


「うん。そうだと思う。巨大なモンスターが一定時間に一体ずつ出現していくんだって。それを皆で狩るらしい」


「ほぉ。ん? それ、一定時間で狩れなかったら……」


「増えるね」


「そりゃキツイな」


「それで、全部のモンスターを倒せたらプレイヤー皆に報酬。MVPは特別報酬」


「それはガイエンの物になってしまうな」


「分かんないけどね。あっ、話変わるけど、ネクタイ、お父さん喜んでくれたよ。ありがとう! なんか欲しかった柄だったみたい!」


「そうか。それなら良かった」


「何でこれ欲しいのわかったんだ?って聞かれたから先輩に選ぶの手伝って貰ったって言ったら驚いてたよ」


「そ、そうか」


 それは、知らないところで嫌われてるんじゃなかろうか。

 うちの娘とネクタイ選ぶなんてけしからん!

 的な。

 どんな人か知らないけど……。


「ありがとう! 助かりました」


 満面の笑みでペコッと礼をしてくる。


「はい。どういたしまして」


 思わず、頭をポンポンしてしまった。

 顔を赤くする愛琉。


 やばい。

 なんかポンポンしてしまった。

 髪触られるの嫌だったよな。


「あっ、ご、ごめん」


「ううん! いいの! じゃあ、またね!」


 そそくさと屋上から去っていく。


 んー。なんか嫌われた?

 大丈夫かなぁ。

 あれ? この前のは俺の勘違い?

 それこそ恥ずかしいな。

 気付かないふりをしている気になっていたよ。


◇◆◇


 ログインして宿を出ると人で賑わっていた。


プルルルルル……


 ボイスチャットだ。


「ん? はい?」


『ソアラ、私達が居る所まで来てちょうだい! 今回のイベント、トラオムレーベンと協力するから! じゃ、早く来てねぇ』


 ボイスチャットに出た瞬間要件だけ言われて切られた。


「おっ! 先見さん! やっぱりトラオムレーベンと協力するんっすか!?」


「そう……ですね。そうなると思います」


「へぇ。いいっすねぇ。トップクランっすもんねぇ憧れますよ」


「そうですか? 一緒に戦いますか?」


「えっ!? いいんすか!?」


「んー。聞いてみたいとですけど、どうせ今度のイベントはみんなで協力する見たいですし、いいんじゃないかと思うので」


「了解っす! 是非よければ一緒に戦いたいっす! 自分、バリーっす! フレンド登録お願いします!」


「おれは、ソアラって言うんだ。先見って呼ばれるよりソアラって呼んで欲しいな」


「了解っす! よろしくっす!」


「じゃ、また後で」


 手を振って別れ、マップのラブルの位置をおっていくと、一つの大きな建物に着いた。


プルルルルルルル……


『あっ! 着いたんだね! 今行ってもらうから待ってて!』


ガチャッ


「これはこれはようこそ。私はクランのサブマスターのロックといいます。よろしく」


「よろしくお願いします。ここって……?」


「あっ、ここは我らがクランホームです」


「クランホーム……凄いですね……」


「はははっ。みんな大規模クランは大体持ってますよ? さっ、どうぞ中へ」


「あっ、どうも」


 案内された部屋に入るとラブルとシエラがケーキを食べて寛いでいた。


「あっ! 来た! ソアラも食べる?」


「いや、良いよ。ここで何してたんだ?」


「見てわかんないの? ケーキ食べてるんだよ?」


「いや、そういう事じゃなくて────」


「今回のイベント、協力しようぜって話をしてたんだ。ソアラも良いだろ?」


 奥からやってきたのはガイエンであった。


「あぁ。さっきボイスチャットで一方的に言われただけだけど……いいよ。けどさ、どうせならもっと協力者を増やさないか?」


「ん? 他にも協力したいヤツがいるのか?」


「んー。さっき声かけられたんだけど、トラオムレーベンと一緒に戦いたいような事を言っててな。皆で協力するイベントだしいいんじゃないかと言う話をしたんだ」


「ふーん。協力したいってヤツならいいんじゃねぇ? っていうか、他にも一緒にやりたいやつがいるなら集めるか!」


 ガイエンが乗り気になったようだ。

 楽しいことが大好きなヤツだからお祭り騒ぎが楽しいのだろう。


「誰がまとめるんだい?」


 ロックが口を挟んできた。


「ロックがやってくれるんだろ?」


 ニヤリと、笑ってロックを見る。


「はぁぁぁ。君は本当に僕をこき使うのが好きだねぇ。カリスマの補佐は大変だ……ソアラさん、その人と連絡とれますか?」


「あぁ。フレンド登録したからな。ボイスチャットを送ってみてください」


「わかった」


 メニューからフレンドのバリーを選択し、ボイスチャットを起動する。


プルルルルルル……


『はいっす! ソアラさん、オッケー出ました!?』


「バリー、実はオッケーが出たんだけどな、追加で他にも協力する人達がいたら皆で一緒に戦おうと言う話になったんだ。人を集められるか?」


『俺は、そういうの得意なんっすよ! 少し時間貰えれば集めるっすよ!』


「イベントの前日に作戦会議をするから、それまでに一緒にやりたい人を集めててくれるか?」


『それだけ時間貰えれば余裕っす! 自分に任せて欲しいっす!』


「頼むよ。バリー」


『了解っす! テンション上がってきたぁぁ!』


 ボイスチャットが切れるまで叫んでいたバリー。

 本当に大丈夫だろうか?


「なんか暑苦しい人だね?」


「はぁぁ。なんか……身近に似てる人がいる気がしますね……二人も同じノリがいると疲れますね」


 シエラが何やら疲れたような感じでため息をついている。


 同じノリ?

 あぁ。ガイエンもこんな感じだもんな。

 戦闘になるとテンションが上がるみたいだし。

 同類かもしれない。


 イベントまでまた日数はある。

 作戦を練って罠作らないとな。

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