第42話 伝説になる
「なんか凄いことになってるね?」
いつもの昼休みに愛琉から楽しそうに言われたのであった。
何がそんなに楽しいんだコイツは?
俺はログインする事に追っかけられてもうまともにプレイできないんだよなぁ。
「ふふふっ。先輩が人気者で嬉しいんだよぉ。その先輩を独り占めしてるんだからねぇ」
「なんだよ独り占めって……」
「そのままの意味だよ?」
パクッと弁当を食べながら首を傾げる。
どういう意味だかわからん。
勘違いする要素しかない。
「まぁ、ガイエンも同じ感じみたいだけどな」
「そうだねぇ、けどあっちは嬉しそうだったんだよね。チヤホヤされて楽しいって感じで! おかげで志恵ちゃんのグチが凄いのなんのって……」
顔を歪めてその愚痴の凄さがわかる。
さぞ荒れてるんだろうな。
普段からガイエンはかまってちゃんなのに、かまってくれる人が沢山いるから凄く嬉しいんだろう。
俺にもガイエンから報告が来たが、たしかに嬉しそうだった。
『俺も同じ状況だぜぇ! 困っちまうよなぁ! 街から動けねぇんだよぉ!』
そんな嬉しそうな報告だった。
宿から出ると道行く人に囲まれて何回か動けなくなったのだ。
透明になって行こうと思ったんだが、出待ちみたいな人がごった返してて通れなかったりとかして。
「ねぇ、先輩? 私が進めてて何なんだけど、一回やめようか? 先輩がやめるなら私も一緒にやめるよ!」
「でも……志恵は?」
「なんか功誠さんがウザイからやめようかなって言ってて……」
「功誠さんて?」
「あっ! ガイエンさんだよ!」
「名前知らなかった。志恵もやめるのかぁ。うーん。一回やめるのもありかなぁ」
すると、目を見開いて嬉しそうにする愛琉。
その愛らしい顔にやられてしまいそう。
「ん? どうした?」
平静装って聞いてみる。
ドキドキするじゃんか。
「ん? 本当に独り占めしちゃおうかなって……ねぇ、先輩? 私とお付き合いしません?」
今度はこっちが目を見開く番だった。
「付き合うって……買い物にとかじゃないよな?」
「違いますよぉ! 女にこんなこと言わせておいて、冗談言うなんて酷いです!」
頬を膨らませて怒りを露わにする。
「いや、本当に! 信じられなかっただけなんだ!」
「いつまで経っても先輩から言ってくれないから……私から言ったんですよ? サインは出してたのに……」
あぁ。分かってはいたよ。
けど、俺とでいいのかわかんなくて踏ん切りつかなかったんだよな。
「悪かった。俺は自分に自信がなくて……俺で良かったら付き合ってくれないか!?」
「ぷっ! なんで、私がお願いしてるのにお願いされ返すの!? もう、締まらないなぁ。じゃあ、いいって事ね?」
腕にギュッと身を寄せてくる。
たしかに、積極的だったもんな愛琉。
俺に自信が無いばっかりにごめんな。
「なぁ、愛琉さえ良ければ、結婚を前提に付き合ってくれないか!?」
「……しょうがないなぁ。いいよ?」
愛琉も俺を思ってくれてたなんて幸せだな。
後日、志恵に結婚を前提で付き合ったことを報告した際。
『まだ付き合ってなかったの!? さっさと結婚しなさいよ!』
そう言われたのだった。
俺が踏ん切りつかなかったばっかりに遅くなっちゃったからな。
今度は遅くならないようにと数ヶ月後には結婚した。幸せな家庭を築き、子宝にも恵まれた。
二人の子供が産まれたのだ。
男の子と女の子。
みるみるうちに大きくなり、もう今や高校生だ。
「ねぇ、父さん。UWOって知ってる?」
聞いてきたのは長男の空也だ。
「あぁ、知ってるぞ。昔やってたからな。母さんも一緒にやってたんだぞ?」
「へぇ。そうなんだ。ねぇ、次の誕生日に新しいヘッドセット買ってよ」
なんだおねだりしたかったのか。
愛琉にも聞かないと……まぁ、UWOやるなら大丈夫かな。
「わかった。母さんには言っておくよ」
「ホント!? よっしゃ!」
ガッツポーズをしている空也。
「お兄ちゃんだけズルいよぉ!」
ダダをコネ始めたのは下の子の愛華である。
まだ中学生だ。
まだ早い気がするが……。
「じゃあ、俺が愛華の面倒見るよ」
「まぁ、それならいいか……」
ガチャッ
「何の話?」
愛琉が帰ってきた。
少し老けた感じがあるけど、変わらず可愛いのだ。
「あぁ、空也がUWOやりたいんだって」
「もうできるかぁ。良いでしょう」
「愛華もやるの!」
「えぇ!?」
「空也が面倒見るらしいぞ」
「それなら……いいかな?」
愛琉も納得したようだ。
今はどんな事になってるんだろうなぁ。
この前CMで流れてた。
二十周年なんだそうだ。
「そういえば、功誠さんまた始めるんだって!」
「はははっ。流石だな。俺はもう無理だなぁ」
「私もちょっと……時間ないかな」
「だよな」
◇◆◇
ヘッドセットが二台届き、空也と愛華はログインしている。
まぁ、静かでいいな。
夜ご飯になったらうるさいだろうなぁ。
時間が経ち、夜ご飯の時間。
二階からドタバタと降りて来た二人。
「ねぇねぇ! 伝説の罠師知ってる!?」
愛華が興奮したようにテーブルを叩きながら話す。
「俺も聞いた! 先見って呼ばれてたんだって! 今は引退したみたいだけど!」
「はははっ。伝説? 先見って言ったらソアラだろ?」
「そうそう! そんな名前だった! 父さん知ってるの!?」
「んー。まぁ。知ってるっちゃ知ってるかな」
「遠い知り合いとか!? 伝説の罠師なんてすげえ! 俺も罠師でやり直そう!」
何故に伝説?
愛琉が近付いてきてボソボソと話す。
「自分だって明かさなくていいの? 自慢できるよ?」
「空也達がもし伝説の罠師の息子だと知れたら……」
「比べられるわね。そして騒ぐ」
「そう。だから、言わなくていいんだ」
「ふふふっ。流石、先見のソアラね?」
伝説の再来はあるのだろうか?
それは、また別の話。
不遇職「罠師」は器用さMAXで無双する ゆる弥 @yuruya
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