第3話 罠を設置してみた
近くの開拓領域に向かう。
未知の領域と呼ばれる場所はまだその領域の探索がされ切っていないという場所だ。
開拓領域というのは探索され終わった領域ということ。
探索され終わった領域はマップに現在地がちゃんと表示されるのだ。
未知の領域ではマップが使用できない。
文字通り、未知の世界を探索する事になるのだ。方角だけは確認できるみたいだが。
現在地を確認しながらモンスターを探す。
この辺の初期の街の近くのモンスターは弱いものしかいない。
開けた場所から草の生い茂った森の方に進んでいく。
様子を伺いながら慎重に探す。
しばらく探すと。
いた。
猿に似たモンスター。
木の実を食べている。
近くに罠を設置しよう。
罠設置のアイコンがアクティブにならない。
ん?
場所が関係あるのか?
大きな気の近くに来るとアクティブになった。
罠設置をタップする。
パッと罠が設置される。
前からは見えないが後ろから見るとロープが伸びているのがわかる。
隠れて罠にかかるか観察する。
すると、こちらにやって来た。
キョロキョロすると木の実のなっている気に向かっていく。
罠をかけた木には来ない。
ここで重要なことに気づいた。
こうやって罠にかかるのをただ待っていたら日が暮れてしまう。
そして、罠にかかるかも分からない。
これは……まずい。
罠が無駄になる。
モンスターは罠とは違う方を見ている。
その隙に木の実をとって罠の周辺にばら撒く。
小さな石を持ってモンスターに投げ、再び隠れる。
コツンッと頭に小石が当たったモンスターは後ろを振り返りキョロキョロする。
実が落ちているのを見つけるとそちらに歩み寄っていく。
よしっ!
こいこいっ!
実の匂いを嗅いでいる。
少し嗅ぐとその実から離れていった。
「マジかよ。匂いとかでも分かっちゃうの?」
これ、ゲームだよな?
なんでそんなところまで再現してるんだよ。
罠が無駄になっちまったなぁ。
「はぁぁぁ」
罠を発動させて回収するか。
立ち上がろうとしたその時。
「きゃぁぁぁ!」
慌てて声のする方へ行く。
罠を発動させてしまったようで、女の子が罠にかかっていた。
ピンクの髪の装備がちゃんとした子だった。
こんな装備あるんだなぁ。
「ちょっと! 何呑気にみてるのよぉ! 下ろしてよぉ!」
「あっ、すみません」
駆け寄ってナイフでロープを切る。
ドカッ
頭から落ちたようだ。
「いったぁぁぁ!」
頭を擦りながら起き上がる。
「なんでこんな所に罠が……」
目が合いハッとした。
「あれ? 愛琉?」
「あーーーーー! 先輩! なんでUWOやってるんですか!? やったら教えてって言ったじゃないですかぁ!」
「だあぁ。騒ぐなよ。今日始めたばっかりだよ。だから教えるも何もないだろ?」
「そうなんですか? それならしょうがないですねぇ。あと、この世界ではラブルですので、そう呼んでください!」
「あぁ。俺はソアラって名前だ」
「ふーん」
ジロジロ見てくる。
「な、なんだよ」
「顔は弄ってないですよね? シルバーの髪似合うもんですねぇ」
「そうか?」
「はい。背が少しリアルより高いような……」
ジトォっという目でこちらを見てくる。
「べ、別に良いだろ? 弄れるんだから……」
「モテようとしてます?」
「そ、そんな事あるわけないだろ!?」
「怪しいなぁ」
更にジトォっと下目でこちらを見てくる。
暫くそうしていると。
「あぁーーー! こんな所にいた! ラブルゥゥゥゥ!?」
奥から現れたのは肩まである青髪。その上にフードを被りローブをきた魔女のような格好の女の子であった。
「あー! そうだった! シエラごめん! モンスター探してる時にリアルの先輩に会ってさ! 話してたの!」
「あら? もしかして、例の先輩?」
「……うん」
「そう。私はシエラと言います。宜しくお願いします」
「あぁ。こちらこそ、ソアラという名でやってる。宜しく」
挨拶をしてお互いお辞儀をし合う。
こちらをジロジロ見てくる。
「な、何かしたかな?」
「装備……」
シエラがなにかに気づいたように呟く。
「あっ! 先輩、なんで初期装備揃えてないんですか? そんなんで街の外に来たらモンスターにやられちゃいますよ?」
「あぁ。これには深い事情があってだな……」
話をしようとすると。
「街に行きません? そこでゆっくりと話をしましょう」
「さっすがシエラ! そうしよう!」
シエラの提案で街に戻ることにしたのであった。
街に戻り、喫茶店に入る。
喫茶店も武器を持った人達がいっぱい居た。
自分を見比べて思う。
シエラに言われて気づいたが、これはもしかして、逆に目立つのか?
何にも装備してないってのは……。
「それで? なんで、装備無しなんです?」
シエラが話を切り出してきた。
下をみて俯く。
「あのさ、話したことを他の人にバラさないって約束してくれるか?」
すると、ラブルが目をパチパチさせて数瞬後キラキラした目でこちらを見てくる。
「もしかして……レア職?」
あぁそっちに思考がいったか。
コイツの悪い癖なんだよな。
都合いい方にばっかり考える。
この前もリアルで発注ミスった時も、先方がミスして発注したものでも何とかなると言ってくれて助かったのだが。
コイツはむしろ自分が頼んだものの方がいい物だったとか言って反省しなかったのだ。
話が逸れた。
「違う。レア職では無い。まぁ、レア職になろうとはした」
「ということは……」
「ランダムを選んだんですね?」
シエラに言い当てられる。
「そうだ……」
「それで、装備を整えないということは……いえ、整えれない。それ以外にお金がかかるという事ね」
「えぇ? 何? 分かんない! シエラわかったの?」
「何となくね」
「ズルい! 教えてよ!」
「本人から聞いた方が良いんじゃない?」
こちらを向いて睨みつけてくる。
「教えるから、そう睨むな」
「むう」
不貞腐れた顔をして静かになる。
「……なしだ」
「えっ? 聞こえないですよ?」
「罠師だ」
「ええぇぇぇぇぇ!?」
叫び声を上げて立ち上がる。
店内中に響き渡る叫び声。
注目を浴びてしまった。
皆に見られていることに気づいたラブルは周りを見ると座って縮こまった。
「それ、ホントですか?」
小さな声で話してくる。
「あぁ。罠を作るのに色々買ったんだ。それで、さっきの所で試してたんだ……そしたらお前が罠にかかったわけ」
「そういう事だったんですねぇ。えっ、詰んでません?」
「うーん。何とかして見ようと思ってはいるんだ。ちゃんと罠の性能も確かめてないし。罠でモンスターが倒せるのかも分からない」
「助けてあげたいですけど……」
「いや、シエラと一緒にプレイしてるんだろ? 俺の事は気にすることないさ」
「うぅ……ちょっと、調べてみます! 必ず、力になりますから! UWOでは、私が先輩ですから!」
胸を張って偉そうにしているラブル。
「はははっ。確かにそうだな。俺よりは先輩だな」
「そうですよ! 先輩って呼んでいいですよ?」
「それは、遠慮しておくわ」
「何でですか!?」
くってかかってるラブル。
「ふふふふっ」
突如笑い出すシエラ。
「何笑ってるのよ?」
「仲がいいなって思ってね。なんか微笑ましくって……」
シエラがそういいながらクスクス笑っている。
二人で目を合わせて首を傾げる。
「そうか? これは、仲良いって言うのか?」
「何でですか!? 私と仲良いのが不満なんですか!?」
「いや、違うから。こんなに口論してるのに仲が良く見えるのが不思議だなと思ってだな……」
再び笑い出すシエラ。
「これは、苦労するわね。ラブル。中々強敵よ?」
「分かってるよ……」
「?……何の話だ?」
「何でもないですよ。こっちの話です。どうする? これからは三人でプレイする?」
シエラがラブルに問う。
「んーーーーー」
悩んでいるラブル。
そりゃ罠師と一緒じゃどうしていいかわかんないだろう。
「まず、一人でやってみるさ。なんかあったら助けてくれよ」
「なんかあったら、必ず助けますから!」
剣に手を添えてそういう。
「あぁ。連絡ってどうすればいいんだ?」
「あっ! フレンド登録しましょう! メニューでフレンドって所をタップして、申請のアイコンをあたしに向けて投げてください」
アイコンをスライドさせて投げる。
「はい。申請来ました。承認っと。シエラもしよう」
「はい。じゃあ今度は私から申請します」
ピコンッと音がなり。
【フレンド申請があります】
と表示された。
承認をタップする。
「はい。これでフレンドです。何かあったらこのフレンド欄から選んで通信をタップすると通信できます」
「あぁ。教えてくれてありがとな。それと、ラブルを宜しく頼む」
「ふふふっ。なんだか保護者みたいですね」
「い、いや、教育係だからな……」
「そういう事にしておきましょう。では、また」
「あぁ。また何かあったら」
「先輩! ホントに何かあったら、連絡してくださいね!」
そう言うと手を振って去っていった。
まさかこんなに早く会うことになるとはな。
でも、まだこれからだ。
今日はログアウトしよう。
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