第40話 街の散策

「ねぇ! 見て! 凄いお城!」


 シエラがはしゃいで城の元へ行く。

 前には守衛さんが立っていて中には入れないらしい。

 

 まぁ、中までは実装してないんだろうな。

 シエラは中に入りたいんだろうけど。

 

 この前ガイエンからシエラがクランから抜けた時のことを聞いたんだが。

 シエラは大の西洋の城好きらしく、リアルでも海外まで見に行ってるらしい。

 それも、生活を切りつめて結構無理な貯金をして行っているようで、ガイエンも苦労してるのだとか。


 それなのにガチ勢は散策なんぞする訳がなく、トラオムレーベンに所属していてサードタウンに来た際、散々シエラが街を見たいと言ったのだとか。 

 ところが、誰も取り合うことなく攻略にばかり行っていた為、シエラは嫌気がさして「もう出ていく!」と言ってやめて言ってしまったんだそうな。


 その時は気まずくて結局散策はしなかったようで、その反動が今来ているようだ。

 ラブルという下僕も従えたのだから、余計楽しめているのだろう。


「うわー! 本物みたい! すごいね!?」


 下僕は一緒にはしゃいでいる。

 シエラに気を使っているつもりは無いのだろうが、シエラを上機嫌にしているのは間違いないだろう。


「あっ! 見て見て! なんか教会があるよぉー!?」


 二人で教会の方へ駆けていく。

 二人とも仲がいいな。

 手を繋ぎながら駆けて行ったのだ。


 教会か……。

 倒せないボスってヴァンパイアなんだよな。

 教会が何か関係するのか?


 ボスは必ずギミックがある筈なんだよな。

 ガイエンから話を聞いたが、ガイエンの攻撃力を持ってもダメージを与えれなかったようだ。

 それであれば、誰であっても倒せるわけが無い、

 何かある筈だ。


 二人の後を追って教会へと向かう。

 シスターが居て、お祈りした人の話を聞いてあげたりしている。


「ここでお祈りしたら何かあるのかなぁ?」


「あるかもしれないわね! 一緒にお祈りしてみましょうか! あっ! ステンドグラス凄いキレーーー!」


 シエラはステンドグラスにも目がないらしい。

 西洋なものが好きらしいからそうなんだろうな。この街はシエラの好きな物だらけだと言う事か。それを以前は来たのに見ることが出来なかったと。

 それは、さぞ苦痛だったろうな。


 ステンドグラスの前に行き二人で膝まづいて腕の前で両手を組む。

 その後ろに俺も陣取り、膝まづいてお祈りをする。


 これでなにか効果を貰えるのか?

 体が少し暖かくなった気がする。

 なんかポカポカする?


「御三方とも探索者の方ですか?」


 話しかけてきたのは先程見掛けたシスターであった。


「はい! ここって、お祈りすると何か御利益があったりしますかー?」


 ナイスだラブル!

 それが俺も聞きたかったんだよ。


「えぇ。きっと、神様の主示しがある事でしょう」


 こちらに祈りを捧げてくれている。


「なんかお祈りしてたらポカポカしてたんですよぉ! なんか効果があるんですかね!?」


 それは、俺もそうだったんだよな。

 なんか体がポカポカしてるんだよ。


「あー、それは、お祈りしてるところが丁度窓からの光が当たるんです。神様の光が当たっているようでありがたいでしょう?」


 日の力でしたか。

 やっぱり太陽の力って偉大だよね、うん。


「なぁんだぁ。ボスの役に立てればよかったのにねぇ?」


「そのボスというのはもしかして、鍾乳洞に住み着いている化け物のことですか?」


 シスターがボスのことを知っていた。

 そのボスなんかあるのか?


「そうです! なんか倒し方とか知ってます!?」


「倒し方は分かりません。ただ、昔この協会のシスターをしていた人が探索者と一緒に退治したらしいのですが……」


「どうやって!? 聖水とか!?」


 ラブルが前のめりでシスターに詰め寄る。

 シスターが後ろに後退りながら困った顔をしている。


「ラブル、落ち着きな」


 こちらをチラッと見ると身を引いた。

 シスターはホッとしたように話し始めた。


「詳しくは分からないのですが、分離できないようにして倒したと……そう言い伝えられています」


「分離できないように?」


 ラブルは頭の上にハテナを浮かべながら首を傾げている。

 シエラもうーんと唸っている。


 何か必要なアイテムがあるんだな。

 少し街を散策して何かヒントがないか他にも探してみよう。

 ここのシスターのように何か知っている人がいるかもしれない。


「ラブル! シスターはそれ以上は知らないだろうから他にもヒントがないか探そう」


「うん! そうだね! シエラ行こう!」


 シエラの手を取ってラブルが引っ張っていく。

 後ろからゆっくり周りの店を見ながらついて行く。

 住宅街の中に様々な店が並んでいる。


 ある路地に差し掛かった時のこと。

 建物の補修をしている職人さんを目にする。

 何故か目に焼き付いた。


「あっ! あそこ美味しそー!」


 ラブルが指を指しているのは、パスタ屋さんのようだ。

 西洋な街だからだろうか。

 美味しそうではあるが……。


「ラブル! ちょっと、先に行ってて!」


「ソアラ、どうしたの!?」


 道を戻る。

 先程の建物を修復していた職人さんに話しかける。


「あのー作業中すみません。ちょっといいですか?」


「おう! どうした兄ちゃん!?」


「あのー、その補修剤ってどこに売ってます?」


「あぁ、兄ちゃんも補修したいのか? 道具屋に売ってるよ! あそこは何でもあるからな」


「ありがとうございます!」

 

 キョロキョロと街並みを見回しながら奥に進んでいく。

 

 道具屋あそこだ!


 中に入るとカウンターに行く。


「すみません、壁の補修に使う補修剤ありますか?」


「あぁ、これだよ」


 案内されて補修剤を買う。

 あとは俺が準備するだけだ。

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