第25話 イチャモン
それは突然だった。
「お前、罠師なのになんで未知の領域とか開拓できるんだよ!? なんかズルしてんだろ?」
いきなりログインしてギルドに行くと絡まれたのだ。
「ズルなんかしてませんけど?」
「ウソだ! この前の未知の領域にはドラゴンが居たと噂があった。そんな所を解放できる訳が無い!」
「なんでそう思うんですか?」
そう聞くと、プルプルと震え出した。
「な、なんでだと!? 罠師がドラゴンを倒せるはずが無いだろう!?」
顔がつくんではないかと思うぐらい顔を近づけて話す男。
これは、面倒な事になった。
あの領域を開放したことを聞かれた人が居たとは……。
「はぁ。だから、なんで無理だと思うんですか?」
「な、何でって、それが常識だろう!?」
「理屈がよく分かりません」
顔を真っ赤にして怒り出した。
「だーかーらー! お前がズルしたって言ってんだよ!? チート行為か!?」
「してませんよ……」
周りが騒がしくなってきた。
「GMコールした?」
「アレやばいよね?」
「何やってるんですか!?」
騒ぎを聞きつけて、そこに入ってきたのはラブルとシエラ。
「いや、これは俺の問題なんだ」
そう言うがラブルは納得できないようで、男に食ってかかった。
「あなたなんなんですか!? GMコールしますよ!?」
「フンッ! そいつはチートか何か知らないかズルをしてる! じゃないとドラゴンを罠師が倒せるわけが無い! それに、君達を拘束しているじゃないか!」
「ソアラがズル? する訳ないじゃない! なんの根拠があって言ってんのよ!? それに、私達は好きで一緒にいるんです!」
「そっちこそ! なんの根拠がある!? そう言わされてるんだろう!?」
男はかなりヒートアップしている。
今にも殴りかかって来そうだ。
「まぁ、落ち着け。どうすれば、俺が不正をしてないと認める? ラブル達もただ一緒にいるだけだ。俺は拘束なんてしてない」
「俺と決闘しろ! 勝てるわけが無いがな! それで、お前が弱いと証明する!」
「あぁ。いいぞ。東の荒野地帯でどうだ?」
「ふん! あんな何も無いところでいいのか? いいだろう!」
のってきたか。
荒野地帯ならやり用があるだろう。
「これから行くぞ! ズルされては困るからな!」
「はいはい」
荒野に向かう。
この騒動を見ていた野次馬も一緒に向かう。
「ねぇ! 良かったの!? こんな決闘受けて! GMコールすれば不正がないことは明確なのに!」
「アイツはそんなので納得するやつじゃないさ。アイツの負けないと思ったフィールドで負かす事が重要だ」
「そうかもしれないけど……」
「大丈夫だ。心配すんな」
大所帯が大移動して東に向かっていれば気になる人もいるだろう。
クチコミで決闘することが分かると、みんな見に来始めた。
決闘の荒野地帯の近くは人で埋め尽くされた。
「おぉ。結構な人になったな」
「ふっ! ビビったか! ズルがバレるのが怖いんだろう!?」
「いや、割ともうどうでもいい」
「ふん! 口からでまかせを!?」
コイツはなんでこんなに噛み付いてくるんだ?
「待っててくださいね! こんな男からは引き離して上げますからね!?」
「えっ!? 何この人!?」
あぁ。
そういう感じかぁ。
俺が罠師なのに一緒にいるのは、ラブル達が俺に無理に一緒に居させられてると。
「ソアラ! アイツぶちのめして!」
「あぁ。可哀想に。洗脳されてるんですね……」
「されてないし! 何コイツ!?」
イライラしているラブル。
「お前! 今から決闘でいいよな!? それだとズルできないだろ?」
「ズルも何も無いからどうぞ? 何回言えばわかるんだ?」
「フンッ! 決闘を申し込む! 俺が勝った時の条件はあの子達の解放と不正を認めることだ!」
「俺が勝ったら、もう俺とラブルとシエラには付き纏わないでくれ」
――――――――――――――――――――――
条件を提示した上で決闘が申し込まれました。
受けますか? ――――――――――――――――――――――
はいを選択する。
このゲームでは決闘システムがあり、勝った時の報酬を決めて同意すれば決闘することができる。
音声ガイドが審判をしてくれる。
『これより、ヘーンジン対ソアラの決闘を行います! それでは…………始め!』
腰に付けていたポインターで前方、右の岩場、左の岩場、自分の一歩後ろにポインタを当てる。
「何をしている!? 遊びじゃないんだぞ!?」
いやいや、これゲームだから。
遊びでやってんだよ。
こちらに向かって駆けてくる。
目前まで来るが、俺は突っ立ったままだ。
「ハッハッハッ! 何も出来ないか!?」
「ソアラ!?」
目の前まで来て視界からヘーンジンが消える。
ちゃんと鉄クズ入りである。
「なんだと!? 急に落とし穴が! まだまだ!」
跳躍してくる。
前衛職だけあってステータスが高いようだ。
穴を超えてくる。
左右のロープを切る。
モンスターの頭骨シリーズで衝撃が襲いかかる。
モンスターが襲い掛かるようにエフェクトがかかる。
「ぐわぁぁぁ! くっそがぁ!」
また落とし穴に落ち、ダメージが蓄積する。
半分はHPが減っただろうか。
最後の大詰めだ。
「おれは、負けない!」
また穴から飛び出してきた。
微動だにしない俺を見て嘲笑う。
「終わりか!? ハッハッハッ!」
ジリジリと下がっていく。
「どうした!? 威勢が良かったのになぁ!?」
「くっ!」
ジリジリ下がる。
「逃げるなよ! 無駄だ!」
二歩踏み出した。
「ククッ」
落とし穴に再び落ちる。
そして今度の落とし穴は炎のオプション付きだ。
ゴゴゴオォォォォォォ
炎の渦が立ち上る。
炎が晴れた頃にはヘーンジンはいなかった。
あれ?
決闘ってちゃんとリスポーンするんだっけ?
「勝ったのか?」
『ソアラさんの勝利です! 勝利の条件が付き纏わないでということだったので、半径五百メートルに近づけなくしました。その為、街に戻された感じです!』
「あぁ。なるほど。ありがとうございます!」
『ちなみに、ここに大勢野次馬がいるので報告します! 決闘の間、ソアラさんのログを解析しましたところ、不正行為、チート行為をした痕跡はありませんでした! ソアラさんはこのゲームのシステムにしっかりと則ったプレイヤーです!』
しっかりと運営の方から報告をして貰ったことで疑いは晴れた。
「お気遣い、感謝します」
『いえいえ、それでは、引き続きお楽しみください!』
この騒動はこれで終わったかにみえたが、目立ってしまったソアラを取り巻く環境は変わっていく。
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