一族郎党を殺めたのは、血を繋ぐために生まれた絡新婦の雄だった
「絡新婦(じょろうぐも)」という、蜘蛛の妖怪がいる。
「絡新婦」と聞いて、あなたはきっと「女妖怪」を思い浮かべる。しかしこの物語の主人公は少年――つまり「男」の絡新婦である。
絡新婦の伝承は数多くあれど、そのどれもが「女妖怪」の話。雄の絡新婦の伝承はない。しかし雌がいるなら、雄だってきっと、いる。
現代にひっそり残る絡新婦の血筋、その末裔である一人少年・大御名累(おおみなかさね)。彼のそばに影のように立つ、黒服の異人・クロ。
累とクロを中心に、大御名家が繋いできたもの、善いものも、悪いものも、その全容が明らかになっていく。辿る糸はやがて神話へ。一族郎党を殺めてまで、累が断ち切りたかったものは何か。そしてそれは本当に、一族の滅亡によって断ち切ることができたのか。
やがて始まりは全て、累に帰結する。