第32話 散策と幽霊
起きました。
夜は開けてません。
しかし明るいので外に出ます。
そう、引きこもりであるはずなのに、久々の外界が気になって仕方がないのです。
というわけで引きこもり、樹海の探索に出ます。
一歩踏み出した時に、違和感を覚え、身体が重いことに気付く。
やはり寝不足か。やっぱもう一日休もうかしらと思考が回るのは引きこもりだからかなぁ。
景色を見ながら足を動かす。辺り一面森。道なんてありゃしない。
まあホコリ被ってるような図書館?だしそんなもんか。
人工物だっただけに、何かしら生物はいるのかと思ったもんだけどなぁ。
まあむしろ遭遇しない方がいいかもしれない。この異常に人間が居るという普通があってたまるものですか。
本を捨てた文明とか元から人が嫌いなのを抜きにしても関わるのは超リスキーな気がするし。
生えてる木とかも見たこと無いものばっかり。というか知ってる木がないまである。
日本の山って結構険しいイメージがあるんだけど、逆に木は大きく間隔も広い。
生えてる草も背丈はあんまり高くなくまぁまぁ歩きやすい。
生物に関しては鳥のさえずりは聞こえる。他は姿を見せないのでわからない。
池っぽいとこに出てきたけど人影は相変わらず……。
と思ったら違和感。
「……?」
池の畔で謎の生物(?)を発見。
咄嗟に木の裏に隠れて観察。
なにあの白くてふよふよしてるの、お化け?
あれ、髪の毛か、生きてるわアレ。
まあ異世界って事なら髪色くらい色んなのがあってもおかしくないよな?
と、遠目で考察していると、あちらさんもあこっちに気付いたらしく、超こっち見てる。
ぼっち体質的に超気まずいんですけど。
と思えば全力疾走、こっちに寄ってくるではありませんか。
さあどうしよう?白髪ロングのふよふよお化け(暫定)、捕食的なアレでこっちに向かってきてるのか?それとも他の、友好的な目的か?
まあ逃げるが正解でしょう、が、私はその選択を選ばなかった。
結果、そのお化け(元)を正面から受け止めるハメになったわけです。
「おおう」
「んー!んー!」
その見慣れた顔のお化け(暫定)は目を閉じ、口を突き出しているのです。
現地民族の挨拶的なやつでしょうか、いいえ断じて無い。
なぜならばこの見慣れた顔は、私が一番見たかったものだからです。
思いっきりキスしたそうだけど背が届いてない、かわいい。
「ぁ……ぇ……?」
色々考えていると、先程までの現地民族の挨拶的な物を諦め、今度は涙を溢れさせながらこちらを見るではありませんか。
「んぅ!?んー!!!」
流石に可愛そうなので答えてあげることにします。
うぅ……いきなりで困惑したもんだから仕方ない事にして欲しいな?
「もー!!感動的な再開シーンですよ!どうして背伸びするんですか!!」
「言うてうちら今のがファーストじゃろうに……」
おばけ(元)の正体は入夏さんでした。
顔を見れば一発でわかったけど、その白髪はどうしたんだろ?
「そ、そうですけど……でも」
「大好きです!!」
私も。また会えて良かった……!
「……大分背縮んだね」
「そこですか?」
「背伸びしても私の顔まで届いてなかったのが可愛くてつい?」
「つゆきさんが大きくなったんじゃないですか?」
「あー確かに、わかんないけど」
暗い場所に居たからか、目線が高くなっているのに気付かなかった?のかなぁ。
言われてみればちょっとだけ地面が遠い気がする。
「あとその…色々変わっちゃっててごめんなさい……」
「綺麗な髪色になっちゃったりしてまあ」
当の入夏はその白髪を気に入ってないのか、返答に閊える。
「……つゆきさんこそ、肉付きが健康的になったり生命力を感じます」
「これ言っていいのかな」
「どうぞ?」
「いるか全体的に可愛くなってない?」
いや約一ヶ月ぶり?に見たせいかな。
「……これはその、若返ったんです、多分」
「あーはいはい……実際若く見えるのは確かね」
「……夢じゃないですよね?」
「私は夢じゃないよ?ほらね」
自分の頬をつねってみせる
「私は夢だったら続いてほしいので試しません」
無言で入夏の頬をつねる。
「ってんむむむむー!むー!痛い!」
「あ、夢じゃなさそうね」
「なにするんですかー!」
「変な事言ったからしたくなった?」
のは半分で、すごく可愛かったからちょっと確かめたかった。本当にいるかだこの子。
「う……でも夢じゃなくてよかったです。ほんとに」
「……いるかもあのク……神様に?」
「やっぱりつゆきさんもですか」
「神様なのに物語が好きなだなんて、変わってますね」
「……物語?」
どうやら私の知らないところで事が進んでいたらしい?
雪中夏花をその手に たつのしっぽー @yukimiday
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