オールドローズは似合わない

第1話 青薔薇授かる君へ

「つゆきさんつゆきさん」


幾度と聞いた、私を呼ぶ声。


「んー?」

「私たちの馴れ初めってどうでしたっけ?」


突然何を言い出すのかと思えば、何時も通り突拍子も無い事。

いつも一緒に居るけれど、考えてることは別。だからこそ、互いに思ったこと……例え下らない事でも。それらを口にしあえる、ただの友達という関係。


「馴れ初めって……まるで私らが付き合ってるような」

「えー……同棲までしてるのに?これぞ正しく事実婚というものではないでしょうか?」


ううん?同棲?私はそんなつもりは無いのだけれど?

確かに一緒に生活はしているが、第一恋仲ではないのだ。

そして、この生活が始まるときに決めた、この子の立場。それは……。


「居候がそれ言いますか」

「居候じゃありませんー!!」


『どう扱っても良いので』とか言ってたくせに。

まぁそこが可愛らしい所ではあるんだけれど……。


「てかいるかこそ、忘れたわけじゃあるまいね?」


実際の所、この子との付き合いはまだ半年も経っていない。

その事実に驚くほど、この子と出会ってから濃い毎日であると自覚する。


「忘れるわけないじゃないですか」


即答。

『私が忘れるとかあり得ると思います?』みたいな顔せんでもよかろうに。


「じゃなんで聞いたのよさ」


まあどうせ、暇にあぐねて恋人ごっこでもしたくなったのであろう。


「つゆきさんが忘れてないかな、ってふと思ったので!」

「ほーん、どうだったかなぁ?」


わざとらしく答えると、明らかにつまらなさそうな表情を返してきた。


「……。まぁいいです。暇つぶしついでの思い出話ですよ?」

「確かに暇だぁね」


暇と言っても、まだまだやることは残っているのだけれど。

それでも、休憩がてら振り返るのもいいかもしれない。


「あれはそうですね……まずベッドの上から……」

「の前があるでしょうに!」


あと言い方!私らそんな関係じゃないから!


「まともに話したのはベッド上からじゃないですか!」

「そりゃまあそうだけどさあ……もっとこう、ね?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る