雪中夏花をその手に
たつのしっぽー
プロローグ:とある傍観者の独り言
暇。
訂正、暇ではない。飽きたと言うべきか。
この世は人が多い。多いからこそたくさんの物語があり、たくさんの種類(ジャンル)、形がある。
それを観察するのが自分の存在理由である。
“人の世は小説よりも奇である”、とはまさにその事だが、人類史を遡ってもその数は希である。
そういった話よりもバッドエンドで締めくくられる人生の方が圧倒的に多い。
それが現実というものである。
……その現実を、ただただ見飽きたのである。
いつの時代も報われぬ物語はありふれているものである。
そんな物語は嫌いというわけではないが、後味悪さが響くからいい思いはしない。
あるいは、最近そういう物語を続けて観たせいかもしれない。
もしくは、機械的に、ある意味観察対象の……”人の世”で例えるならば、”御伽噺”のような。”与えられた結末を辿るだけの物語”に目新しさを感じなくなったせいかもしれない。
ここらで気分転換でもしようではないか。
今までは傍観者……読み手側だったが、今度は書き手になってみれば新たな見識が広がるのではないだろうか。
よし、物は試しだ。見返して顔から火を吹くようであれば、そのまま燃やせば良いのだ。
やると決まれば……折角なのだから異色な物語にしてみようか?
題材は何にしようか、身近でありながらも関わることがないもの……人間が良いだろうか。いやでもな、と考えて。
ふと見下ろせば丁度よく傷だらけでヒビの入った魂が二つあるではないか。
見覚えはある。確か……あの時もこのような気まぐれを起こした記憶がある。
ある一点より分岐したとして、どのような物語になってくれるかはわからない。
この二人であれば、干渉しても影響は少ないだろう。今更というものなのだから。
そうと決まれば話は早い。魂には妙縁あれど結ばれることもなく、見るだけ時間の無駄だった……いずれ風化してしまうこの縁を引き合わせてみようではないか。
そう、時間の無駄だった。が、可能性の一つとして、あり得た未来を見るのも良いだろう。
悪い結果になったとしてもどうせ自分がもう捻じ曲げた後なのだから、些細な変化であろう?
うん、良いな、これで自分の気に入る物語を綴ってみようか。
それが残す価値のある暇つぶしになることに期待はするまい。
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