第13話 雪中花
「……ぉ、お久しぶりです」
話しかけてきたのは見覚えのある、というかつい一週間ほど前まで同じ病室の同じベッドで運命共同体になってた子。なぜか床を見ながらだけど。
というか三日を久しぶりに含むんだろうか?
「おひさしという程でもないと思うけど」
「……」
ん?
「……」
なんか喋らんのかい。
「珍しいね、黙ってるなんて」
どどどどどうしましょう何から話しましょうか?嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しいじゃなくて!話すこと!話すことです何か……何か……!
とか考えてそう?
自惚れというか、ナルシズムを感じるけれど実際いるかの頭の中はこんなんだと思う。
『女心です!』とか言ってるし……。
「好きです」
あ、いつも通りか、と長考ののちに一言漏らしたいるかを見て答える。
「あ、ちっがぁぁぁぁあう!!違うんです!違わないけどそうじゃないんです!つゆきさんのことは好きですけど!違うんです話したいことです話したいことが多すぎて……」
まあ概ねあってたらしい。
しっかしまあうーん、やっぱり好意を向けられるのは慣れない。
今までの人生でそんなこと無かったし……と考えていると。
「冷静に対処しないでくださいー!」
「だってそれ以外選択肢なくない?」
実際そう思う。どうしろと?
「選択肢があれば他の対処するんですか?」
むむ、他の対応?ってつまり?
「……多分しない」
「今思いついた対処をなぜしないと言うんですか?」
秒、というか0フレームで見破ってきた。
……そういう仲ではある。
「ひみつ♪」
「可愛くないです」
ちょっとふざけて答えてみた。
でも誤魔化すのがメインである。
「はー……わかりました。とりあえず三日ぶりに私に会ったのに素っ気ない対応しちゃうんですね……」
「だってまあ他人ですし?」
「た、他人ですけどー……」
ごにょごにょと曇った言い方になっていくいるか。
こういう人間らしいところ……可愛いところ?があるじゃんと感心する。
「それ以上の関係ではありますよね?」
実際のところはどうなのやら。
たまたま同時に轢かれて、たまたま手が癒着してしまって、たまたま四六時中一緒にいることになって、たまたま異性だったというだけのこと。
……小説とかマンガとかアニメとかそういう世界の話みたいなものだなぁ。
「うーん、なんて言えばいいのやら?」
「実質の婚約者です」
「なんでそうなる」
実際にそういう契約を交わした訳では無い。
いるかが勝手に言っていることであるし、いるかは本気なんだろう。というか本気すぎてこっちが困るレベル。
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