第10話 提案と思いやり
「話は聞かせて貰った!」
いるかさんに秘密を明かし、色々話し合っていると、ばーん!と、扉が勢いよく開いた。
「わぁあ!?」
「!?」
いや自然に私にだきつくないるかさんや!!!
あとおい、今腕回したのわざとでしょ!?
あとやわこ……まだ意識すんじゃねえ!!いるかさんのためにも!!!私ならできるはず!!!!
そんな脳内の葛藤をしていても、当のいるかさん本人は冷静なようで。
「びっくりした……どうかしたんですか先生」
「病室を分けると言っただろう?」
「言いましたね」
「明日の朝、またここで二人とこうやって面談をしよう」
「大事な話でも?」
「まあそんな所だ」
今まで平気だったんだ。これからも平気だろう、私。
次の日、予定通り面談があった。
……結論、いるかとは今までと同じように度々話をすることになった。ただし病室は別、具体的にはお互い元気な時は休憩室的な所に来るという感じで。
それから話しにくいことを話す時はどちらかの病室に行くことも。
もちろん看護師さん達には伝えてからね。えっちなのはいけないと思います!ということで。病院だからねここ。ほすぴたるであってほてるではないのです。
私にはそんな気は一切ないがな?
……たーだこのシステム、超めんどくさい。
何より待ち時間があること。
そして見知らぬおばちゃんに話しかけられたりすること。
私はあくまでコミュ障のニートなんですけど……話しかけるなんて時間がもったいないですよほんと。
いるかさんが話しかけられて引き攣った笑顔で対応してるのみて、あ、私もこうなんだなって思ったり。
そしてやたらいるかが手をつなぎたがること。あ、包帯巻いてはあるけど、物を握ったりしなければ大丈夫ということで、軽く指を交えるくらいなら痛くもない。
正直私もなんか安心するから嫌ではないんだけど……傍から見たらただの恋仲だぞコレ。
もともと引きこもり故に結構髪長かったし、なんか入院してから割と清潔めだし?同性にも見えなくはないから目立ちはしないのかな。
手を繋いだからといって、いちゃついたりそれ以上のことをするわけでもなく、考え事とか、そういう時にしたがるようで。
それってつまりルーチンのようなもので。
いままでお互いに心を許せる相手がいなかったゆえの依存なのだろうか。
……好きとかそういうのじゃなくて、安心する。あったかいから昼寝もしやすいし。
私が割り切っているせいか、いや多分いるかも本気で精神安定剤のような感覚なんだと思う。
話の中でアプローチしてくることはあるけど行動には起こしてこないからね……。
というか、アプローチを封じてもまあ納得するだろうけど、これを封じたら本気でどうなるかわかんない。
恐らく私と会う前のいるかに戻る……どころか悪化しそう。
私の方は……どうなんだろうね。
行動に起こさないのは実に合理的。
いるかも行動に起こすと会うことはできても二人っきりで今みたいに話なんてする機会が潰えてしまうことはわかってるんだと思う。
そういう合理的思考に縛られてる痛みは身に染みているし、それ故他の人から理解を得られない苦しみも抱えてるんだと思う。
だけどこの人だけは私を理解してくれるし私も理解できる。うーん共依存。
私が女だったらもっと余計なことを気にせず友達っぽいこととかできるのかなあとか思う。
付き合ってもない男とこういうのはあかんでしょうに、という私の理性が告げてる。
でもやめられない。いるか依存症とでも名付けるべきか。
あ、でもいるかもそうだからどうなんだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます