神域と呼ばれる森の守り人一族の最後の一人である私は一緒に暮らしていたおじいちゃんが逝ってしまったのを機にこんな誰も住んでいないクソ田舎を脱出して都会で生活するんだと夢見ていたけれど現実は上手く行かない
1-15 突然チャネリングすることになったけれど上京したい
1-15 突然チャネリングすることになったけれど上京したい
表門から中に入り違ったエイド少年とアーシアを制して、私は二人を裏門へと連れていく。
外からだと分からないが、表門側は一部が崩れてしまっているので、早々に行き止まってしまうのだ。
裏門から入って、厨房と直結している勝手口から城の中へと踏み入る。
古い石レンガ造りの内装になっている。
木製の棚は在れども、もう食器の一つも残っていないし、コンロだって形だけで、鍋も何もありはしない。ただ埃が溜まっているだけの場所だ。
「ぼろっちいというか、なんもないな」
「そりゃそうだよ。旧文明時代のお城だもん、こういう目ぼしいところのモノは大体全部持ち去られちゃってるって」
「嘘ぉー!? 本当に全然何にもないの!?」
「お金になりそうなものは大抵ないよ」
「そ、そんなー……」
「というか、あなたはこんなところに何を探しに来たわけ?」
厨房を通り抜けて、表面がところどころ風化してしまった石レンガの通路を歩く。
「最初に会った時にも言ったと思うけれども、私は世界一の
「……、こんな古いお城にそんなものあるわけないじゃない」
ロマン溢るる説明だったが、ばっさりと切り捨てた。
冷静に考えて今手の届かないモノを作るために藁にも縋る思いで古のモノに手を出すというのは何というか本末転倒感がある。
……、いや、私が継承するべきだった『完全なる火の造魔式』の件を考えれば意外とそういうモノなのか?
『それが、あるんじゃよなあ』
「えっ……?」
誰のでもない声が聞こえた。
思わず、素っとん狂な声を上げてしまったけれども、エイド少年とアーシアには不審そうな顔をされた。
もしかすると今の声が聞こえたのは私だけなのかもしれない。
『そうさな。私の声は今はお主にしか聞こえてないやもしれんな』
えっ、待って……? この声の人私の心読んでない?
『心を読んでいるというか、お主普通のヤツが普通に持っている心の防壁がないのでの。駄々洩れなのじゃよ』
……、えっ? それってどういうこと?
『私にもよく分からんが、そうさのお、しいていうならば心を読まれる才能があるということじゃな』
なるほど、才能があるのか。ならいいか。
『……、それでいいのか?』
才能があるならば、それは良いということにする。
『じゃあまあ私からは何も言わぬが……。それよりももっと重要なことを私に聞かぬで良いのか?』
「リリアちゃんどうしたの? さっきから無言で難しい顔しちゃって……。ここそんなに危険度が高い場所とは思えないのだけれども?」
『お嬢さん、不審がられとるぞ。正直に話すにしても隠すにしても、もうちょっと上手くやらんといかんよ』
むっ……。なんで私は謎の声におじいちゃんみたいなお説教されてるの……。
「うん、今ねちょっと精霊通信でチャネリングしてるから、もうちょっと待って」
「……、流石にそれは頭大丈夫か?」
エイド少年が私の言葉に引いていた。
ドン引きだった。
酷いっ、事実なのに!
『いくらお主にとって事実だったとしてもの、それを他者と観測共有出来なければ、事実は事実として扱われんのじゃ。悲しいの』
「そ、そんな本当のことを言うなー!! 悲しくなるだろうがぁー!!」
「えっ、あっ、ご、ごめん……」
「リリアちゃん、本当に大丈夫? ちょっと変よ?」
『混線したのぉ』
思わず叫び声をあげたらば、勘違いの伝染が加速した。
最低最悪史上劣悪、愚劣極まる劣等感情二四時だった。
「ちっ、違う……。違うの!! だからチャネリングがね!!」
『私が言うのもなんだし、お主の言葉は正しいと思うのだがの、チャネリングとか精霊通信とか頭おかしい人としか捉えられないような言葉遣い止めたらいいと思うんじゃが』
「そんなに、ここにはいるの嫌だったの……? ストレス溜まってたんだね、気が付かなくてごめんねリリアちゃん。どう私のおっぱいと和解してくれたら癒してあげられるよ」
「お、俺もお前がそんなにここに入りたくなかったなんて知らなかったよ。無理言ってゴメンな……。もう、外に出るか?」
優しさが辛かった。
この上なく優しさが辛かった。
でも、だけれども――、
「ちゃんと説明するっ!! ちゃんと説明するからちょっと待って!! あとでっかいおっぱいとは和解しませんっ!! 都会おっぱいに私は負けない!!」
そこだけは譲れなかった。
『今では見る影もないがの、昔はこの辺り大都会じゃったんだよ』
過去大都会、現代では古代遺跡、時間は残酷、誰でも平等、でっかいおっぱいも年取ると垂れる、おういぇ。
『私はお主の情緒が分からんのぉ』
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