神域と呼ばれる森の守り人一族の最後の一人である私は一緒に暮らしていたおじいちゃんが逝ってしまったのを機にこんな誰も住んでいないクソ田舎を脱出して都会で生活するんだと夢見ていたけれど現実は上手く行かない
1-12 都会の女に助けられてもやっぱり上京したい
1-12 都会の女に助けられてもやっぱり上京したい
私たちは真っ直ぐ走った。とにかくとにかく真っ直ぐに走った。
ひたすらひたすら、真っ直ぐに走って、だけれども神域の外まで走り続けられるほどの体力はなかった。
いや、というか無理なのよ、根本的に人間は普通一〇キロも全力疾走できるようには出来ていないの。
「どうしよ……、あとどれくらい走れる?」
「も、もう無理だぞ……。少し休憩しないと、流石に走れない……」
森の中で私たち二人は追い詰められていた。
もう足は限界で、ヘロヘロで、後ろから追いかけてきている緑色の粘性生物はほとんど目と鼻の先と言っていい。
「あだっ……?!」
私が後ろを気にしながらエイド少年の手を引っ張って無理やり走らせていたのだけれど、とうとう彼が木の根に毛躓いて転んでしまった。
そうなると当然手を掴んでいた私もバランスを崩すわけで……。
私たちが立ち上がるよりも怒れる粘性生物の方が早かった。
近づいてきたそいつが両腕を広げると、人型の上半身がグパァッと八つに開いた。
もうこれはダメだと思った。ぱっくんちょだ……!!
「
そんな声の後にズガガガァァァ!! と轟音が響いて、何かが怒れる粘性生物を吹き飛ばした。
「造魔式……?」
「使っちゃいけないんじゃなかったっけ……?」
「君たちー無事かーい?」
その声は少しハスキーで妙に色っぽいモノだった。
誘導されるように声の方へと視線を向ければ、射出式の槍を携えた土造りの機兵がずぅんとそこに立っている。
その背中には女性が一人乗っかっていた。
顔も身体も見えないけれど、やたらと大きな三角帽子を被っているのだけは分かった。
「あのっ……!! ここで造魔式を使うと大惨事になるので、早く逃げた方が良いですよっ!!」
「えぇっ、そうなのぉ? 知らなかったわぁ……。じゃあさっさと逃げるから、君たちも早く乗って!」
ずぅんずぅんと三メートル近い土造りの機兵が足音を踏み鳴らしながらよってくる。
機兵の背中に乗っている女性が伸ばした手を私たちは躊躇なく掴んで、機兵の上に間借りさせてもらった。
「よっっしゃー!! さあ行くわよっ、私の可愛い
その女の人が機兵の背中を軽く叩くと、猛烈な勢いで走り出す。
「うっ、うわっ、とととっ……!?」
「危ないっ、危ないっ……!? 落ちるっ、落っこちるぅ……!?」
「しっかり捕まってないとダメじゃないっ!」
「そんなことを言われましてもぉー!?」
絶叫しながら背後を見れば、粘性生物だけではなく、おびただしい数の小さな生き物が黒い波のようになって追いかけてきていた。
「と、都会の造魔式サイコー!! バンザーイ!!」
「都会絶対関係ねぇって!!」
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