神域と呼ばれる森の守り人一族の最後の一人である私は一緒に暮らしていたおじいちゃんが逝ってしまったのを機にこんな誰も住んでいないクソ田舎を脱出して都会で生活するんだと夢見ていたけれど現実は上手く行かない
1-0 おじいちゃんが逝ってしまったので上京したいと思います
神域と呼ばれる森の守り人一族の最後の一人である私は一緒に暮らしていたおじいちゃんが逝ってしまったのを機にこんな誰も住んでいないクソ田舎を脱出して都会で生活するんだと夢見ていたけれど現実は上手く行かない
加賀山かがり
1-0 おじいちゃんが逝ってしまったので上京したいと思います
春の日差し柔らかな真昼間、私は一人で土木作業をしていた。
スコップでがっつりと五〇センチ、二メートル四方の穴を掘っているのだ。
何故か?
おじいちゃんの棺を土に埋める、つまり土葬のために穴を掘っている。
なんで一人でそんなことをしているのかと言えば、私の住んでいる場所がクソド田舎過ぎて人がいないからとしか言いようがない。
もう本当に、人がいない。
というかここまで人がいないのであればそれはもう、田舎でさえないかもしれない。
私の住んでいる場所は
そしておじいちゃんが逝ってしまった以上、もうこの森で生きている人間は私一人きりだ。
住人総勢一人!
笑えない過疎具合だよ!!
だから私は一人で穴掘って、一人で棺桶を土に埋めている。
こんなの女の子のする重労働じゃない!!
でも泣き言を言っても誰も手伝ってなんかくれない。だって誰もいないから、この場所の住人は私ただ一人だけなのだから。
というか下手に泣きわめいたりすると狩猟性の動物が弱った獲物と勘違いして襲撃してくるかもしれないので大変危険。下手に泣いたりすることも出来ないよ、こんちくしょう。
それから数時間かけて棺を土の中へと埋めて、木で作った十字架を建てる。
音を立てないように静かに手を合わせて祈る。
おじいちゃんが安らかに地獄に落ちますように……。
いや違った。
おじいちゃんが安らかに天国へ行けますように……。
そのまま五分ほどお祈りをし続けてから、流れる雲へと目線をあげる。
穏やかな空模様だった。
春だから急に天気が変わったりするかもしれないけれど、でもすごく穏やかな空模様だった。
「よし、都会に行こう」
もう本当に心の底からそう思った。
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