1-36.1 上京前に清算すること


 黒ずくめの女の子を縛って一刻ほど海岸線を歩きに歩いて、村へと戻る。都会から来たらしき女の子を縛り上げて連れまわすのはさながら世紀末女王の気分であった。


 ただ、村に近づくにつれて、そんな気分は薄れていった。


 時刻はそろそろ夕方過ぎになるかという頃合いで、それにしては村の方角が明るすぎたのだ。


「ほら見ろ、アタシが正しかっただろう!!」


 黒ずくめの女の子のその言葉は妙に耳に残ったけれども、それは無視して縛っていたロープをナイフで裂いて、そのままナイフを女の子の手に渡す。


「進むにせよ逃げるにせよ、好きにしていいよ」


 それだけ伝えて、私はエイド少年と二人で、村へ向かって駆けだした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る