第2話

「…………ここから先は?」


「なんか飽きた」


 書きかけの日記から俺に目を向けたミツルはあきれた顔をした。イガウコに来てからこれまでを綴った日記なわけだが、だんだん面倒になり、そのまま放っておいたのをこのギャルが見つけた次第だ。


「だんだん書く量が減っていったから嫌な予感はしたんだ」


「三日坊主は乗り越えたからいいんだよ」


「似たようなもんだろこんなの」


 日記を返された俺は腕を組む。


「しかしな」


「なんかの観察日記でも書けばいいだろ」


「観察日記、ねぇ」


 俺の視線に何を思ったのか、この自意識過剰は自分の体を隠すように腕を回した。


「アーシをエロい目で見るんじゃねえよ」


「冗談キツいわ」


 でもギャルの生態には興味があるな、学術的な意味で。


 縁側で足をぶらぶらさせた俺は、隣で日向ぼっこして横になってるロミーネを見る。


 そしたらば……



【改めて一日目】


 あれから数日たったが、改めて日記をつけていこうと思う。今日からロミーネを観察することにした。このごろはすっかり家に居着いており、観察するのが楽だったからだ。正直楽を選ぶならそもそも日記なんてやらなければいいのでは……そんなことを思いつつも綴っていく。


 ロミーネの朝は朝食により始まる。朝食の時間になると起きる。ちなみに朝飯は当初当番制ということだったが、今ではマオの料理修行の場である。[のざわな]で仕入れた材料の余剰よじょうで練習しているのだ。勤務中はウェイトレスが主だから、料理する機会は開店前か閉店後しかない。かといって[のざわな]の女主人にだって仕込みやら仕入れやらがある。自然、復習や予習は自宅で、ということになるわけだ。マオが[のざわな]で働くときは、夜は残り物を持って帰り、朝昼の分はここで作っておくのである。いくら失敗しようが作りすぎようが、最後はロミーネが全部食うのでちょうどよいのである。


 朝飯を食うとロミーネは家の中と外を一周した。どうやらパトロールをしているらしい。それが終わるとまた横になる。お腹いっぱいで眠くなったのかな。



 昼。マオの作り置いた飯を食うためロミーネは起きる。食ったらまた寝た。ちなみに俺はだいたい朝から晩まで古文書の解読作業である。ミツルはだいたい朝飯食ったらどっか行って、昼飯食いに戻って、食ったらまた晩までどっか行く。打ちっぱなしにでも行ってるんだろう。


 夜。マオが帰ってきたらロミーネも起きる。飯食ったら寝る。


 これがロミーネの一日のスケジュールである。




 …………。


 …………。


 …………うーん。


 まあ俺も人のことどうこう言える生き方しちゃいないが、こりゃすげえ。ほとんど寝てる。




【二日目】


 一日目と同じ。


 以下略。




【三日目】


 同じ。


 省略。




【四日目】


 以下同文。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る