香りに包まれながら

1.日も傾き始めたテラスには 物悲しい季節とは裏腹に

  自分を振り返るひとときを与えてくれそうな

  のんびりとした日差しが流れている


  どうしてあんなこと言ったのだろ 取り戻せない出来事を浮かべて

  一人沈んでみたところで出るのはため息だけ

  木の葉が揺れているのは私のせい


  することもなくふと気が付くと あの人の好きなコーヒーを淹れていた

  香りが部屋中に安らぎとなって漂えば

  出会った頃の素直な私を連れ戻してくれる 



2.慣れ過ぎた二人の関係には 無くしている何かを捜す時間

  うれしそうなあの頃が湯気の向こうに浮かんで消え

  ほお杖つきながら懐かしんでいた


  慌ただしく走って来た気持ちが ゆっくりその速度をゆるめながら

  あなたがそばにいない寂しさが追い越して行く

  立ち込める記憶に姿を捜して

  

  口ではあんなこと言ってみても 二人分のカップを用意している

  やっぱり本心はあなたと離れられない

  今頃何してるのかと気になってばかりだから


  冷めないうちに電話をかけて 今の思いを正直に届けたい

  忘れてた優しさを呼び戻してくれた

  昼下がりあなたの好きな香りに包まれながら

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