防波堤

1.忘れようとここへ来たのに 

  またあの人の香りに包まれて 思い出を捜している 

  穏やかな季節の過ぎ去った海は 恋の終わりとどこか似ていて

  忘れられない面影だけが 私の心に寄せては返す

  

  防波堤に一人佇めば 懐かしい景色が目の前で揺れている 

  遥かかなたから旅を終えた風が 何かを語り去って行く


  何もない場所だけど 波のしぶきに涙が隠せるから

  深い海と共に どこまでも沈んでしまいたい



2.忘れようとここへ来たのに

  捨て切れない過去に誘われて あのころを呼び起こす

  晴れやかな時が消え去った海は 散り行く夢とどこか似ていて

  忘れられない笑顔を追って 遠い昔に引き寄せて行く

  

  防波堤に一人佇めば やり直せない筋書きだけが静かに浮かぶ

  すべてをこの海に返したところで 離れた気持ちは戻らない


  傷も癒せぬ場所だけど 波のざわめきに切なさを消して

  打ち寄せるうねりに 体ごとさらわれてしまいたい

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