006話ヨシ! 半年後、みんなにはナイショだぞ
訓練開始して、半年が経った。
今の訓練内容は、うんてい10往復→ランニング2km→オーラ訓練の順だ。
これを、午前1回・午後1回の2セット。
オーラを無理しない量を毎日使う、というのが良かったのか。
あるいは、単に体力がついてきてので、生命エネルギー的な物が増えたのか。
最初は、3分間でゲロ吐いてフニャフニャになってた、オーラ集中の訓練。
そんなインスタントラーメン以下だったのが、今じゃ片手に集中するくらいなら、10分は余裕で
「ただ、なあ……
今ひとつ、活用できてる感がないんだよなぁ……」
現状、『オーラが使える!』という実感がない。
正直、『10分間くらい淡く手を光らせるビックリ人間』でしかない。
なんか、もうちょっとミラクルパワー感が欲しい。
あと、この『手の平がホタル』みたいな状況を脱したい。
『まあ便利、常夜灯みたい』
『これで夜でも
『いつ災害が起きても安心だ』
── じゃねえんだよ!
違うんだよ、そうじゃない。
なんか、こうね、皆わかるでしょ?
バーンとか、ドーンとか、非科学的で、スーパーな効果がほしいのですよ。
(── っていうか、そもそもオーラって……
ぶっちゃけ、光る以外なんか意味あんの?)
昔、パパが甲冑姿に変身してたのって、アレなに?
このオーラがどう関係するわけ?
しかし、この辺りを現役・
「アットは本当にオーラが好きだな。
だけど、そういうのは10歳になってからだぞ?」
と、『未成年のエッチな事はいけないと思います』くらいの感じでいなされる。
たまに父が連れてくる同僚や部下の人に聞いても、同じ感じだ。
一か八かと、お隣のマッシュのパパに聞いてみた。
だが、こっちも口が堅い。
(マッシュ本人とか、おだてたら何でもしゃべっちゃうお馬鹿さんなのにぃっ!)
しかもマッシュパパは、脳筋なウチのパパと違って、文武両道のエリートさんらしい。
お子さんはバンドマンみたいなトサカ髪なのに。
パパはどう見ても理知的なダンディ路線。
おたくの息子さん、本当に血が繋がってるんですか!?
幼なじみとして、色々心配なんですけど!
マッシュママと上手くいってますか?
ある日、友達に「オレ、パパの本当の子じゃないかも……」とか打ち明けられるクソ重い展開とか、マジでいらないからな?
そんな、お隣の家系図への下世話な心配はさておき。
子供にはオーラ習得はまだ早いというにしても、皆やけに口が堅い。
というか、むしろ厳重というか。
何だか、勝手にオーラの使い方覚えたという事すら、言い出せない空気だ。
(う~ん……
これって、バレたら、捕まったりしないよね……?)
よくよく考えてみれば、その可能性も充分ありそうだ。
現状、どう使うかも皆目見当つかんが、なにせ凶悪な人食いモンスターに対抗する手段だ。
聞いたところによると。オーラーを使うと超人的パワーとかが発揮できるはずなのだ。
それならば、オーラの免許制度くらいあるかもしれない。
前世でいえば、『危険物取り扱い』とか『銃刀法』くらいの厳しい法律があってもおかしくない。
そもそもが、10歳の子供相手に
俺が、下っ端な武門の家系のとはいえ、年端のいかない子供とはいえ、勝手にご禁制のヤベー事をやってるとか知られたら、何されるかわかったもんじゃない。
獄門はりつけ市中引き回しの上ゴエモン風呂の、厳罰フルコースもありうる。
(……あ、ありそう。
── オーラが使えるのは、やっぱり家族にもナイショだな!)
さて、今日も訓練がんばるぞ!
▲ ▽ ▲ ▽
毎日毎日、キッズみんな大好き、ぶら下がり運動の『うんてい』をしていると、ふと気付いた。
「あれ、これって……。
オーラといっしょにやったら、どうなるんだ?」
『うんてい』+オーラ集中訓練。
二つ同時にやったら効率いいかな。
そんな軽い気持ちでやってみた。
(……お。
う、おお……っ)
まじか!
指を半分離しても ── いや、指一本でぶらさがってるっ!?
もしかしたら、片手指一本でも……!?
あ、いけるいける、楽勝だわ。!
これ、もしかして。
もしかしたら、指だけでやる腕立て伏せ ── 通称・『指立て伏せ』とかも……?
「── おっほぉ!?」
マジッスか!?
いけるう、『指立て伏せ』、楽勝ぉぉ!
あの超マッチョの人にしか許されない、アレが!
マンガで敵のボスくらいじゃないと中々やらない、あの特殊な腕立て伏せが出来てるぅ!?
(なんだよ、スゲーじゃんオーラっ
オーラを集中すると、その部分を強化するのかなぁ!?)
なんか、そんなマンガあったな。
思春期少年の
『身体強化を極めたパンチが必殺技になる』的な!
今の俺の拳ならば、庭の壁ブロックでも砕けるっ、はず!!
いまこそ幕開けだ、俺の無敵ファンタジー!
「── いっけぇぇええ~~~!」
その、結果!!
(── いっ……てぇぇえええええ~~~!!)
声も出ない痛みに、悶絶して転がる。
ゴギっていった!?
ゴギって!
今、庭の壁にパンチしたら、ゴギっていったの!
俺の手首がゴギって!
『壁ブロック』どころか、『俺の拳』の方が砕け散るところだったぜ!
▲ ▽ ▲ ▽
「なんでアットは、左手だけで食事をしているんだ?」
パパが夕食タイムに、利き手を使わない俺の様子に気づいて、そう聞いてくる。
「……え、ええっと……」
俺が何て言い訳しようかと考えていると、姉ちゃんが余計な事を言う。
「パパ、気にしないで。
アットがバカなだけ。
どうしようもないバカだから、自分で庭の壁をグーで叩いて、
「…………」
端的に事実を言われ、俺は黙り込む。
なんかしらんが、最近、姉ちゃんがメッチャ冷たい。
ちなみにパパは大爆笑。
「男の子は、そのくらい元気がなくっちゃな」
豪快に、バシバシ背中を叩かれる。
現役の兵士だけあって、パパは体育会系。
というか、我が家は軍人一筋な一族なので、みんな脳筋なのだ。
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