032話ヨシ! 借りパク犯は『ご理解』の夢をみるか

俺は、夜の3階家屋の屋上で再会した相手へ、ビシッと人差し指を突きつける。


── え?

人を指差すなんて失礼だって?


いいんだよ!

相手の方がずっと失礼なヤツなんだからっ



「── ああぁっ!

 あの時のヘンタイ服がし魔っ!?」


「違いますっ

 誰がヘンタイで、服がし魔ですかっ!」


「お前だっ

 俺はお前に言いたい事があるんだっ」



俺はそう言って、すぐさま輝甲を解除する。



「いや、ちょっと、先にわたしの話を聞いてくれませんか?

 割と大事な要件なんですけど……」



相変わらず黒服と黒覆面の暗殺幼女エロガキは、なんか言い訳っぽい事を言っているが、完全に無視。

俺はカチャカチャとベルトを外して、ズボンに手をかける。


すると、暗殺幼女エロガキは慌てたような声。



「── えぇっ ちょっと!?

 なな、なんでいきなり脱ごうとするんですか!

 ヘンタイですが、あなたは!」


「初対面でいきなり脱がせたお前が言うか!?」



相変わらず、失礼極まりない暗殺幼女エロガキである。

これは、絶対に『ご理解させるわからせる』必要があるな!



「あ……ま、まあ、そうでしたね。

 だからって、急に脱がなくても」



俺が怒りが伝わったのか、微妙にしおらしい態度になる。

だが、許さん!



「── 小さくないって見せつけてやるんだ!

 俺の『相棒』の ── おチンチンの汚名返上するんだっ」



俺は、興奮のあまり涙すら浮かべつつ、ズボンとパンツを一緒に下ろした。



「……え、ええ~……

 そんな事のために、いきなり脱いだんですか?」



暗殺幼女エロガキは頭痛を抑えるようなポーズ。

いかにも興味ありませんという表情だ。


だが、知ってんだぞ。

お前が、チラチラ、俺の下半身見ているのを。

正直に言え!



「うるさい、『そんな事』 なんて言うな!

 傷ついたんだ!

 『小さい』 って言われて、傷ついたんだぞ!」


「あの、そもそも、私……

 そんな事、言いましたっけ?」


「── ひ、ひどいっ

 おチンチン出せって言うから出したら、『小さい』 って言ったくせに!

 おチンチン 『小さい』 って言ったくせにぃいい!」



大事な事なので、2度叫んでおく。


俺は、あまりの屈辱に打ちひしがれる。

悔しさが極まり、四つん這いの体勢で、レンガの床をバンバン叩く。


すると、暗殺幼女エロガキはどこか気の毒そうな声をかけてきた。



「えっと……本当に覚えてません……ごめんなさい」


「── うわあああ~~~~ぁ!

 ハダカにされて、お腹ポンポンいたくてゲリピーになったのにっ

 ゼッタイ仕返ししてやるって決めてたのにぃっ」


「あの……すみません、大声はちょっと。

 夜中ですし、もう少し小声で……」


「自警団のおじさ~ん!

 ここにひとにおチンチンだせって言ってくる、ヘンタイ女がいま~す!

 たすけて~、ヘンタイ女におそわれる~!」



俺は、ヤケっぱちの心地で、大声を上げた。

すると、暗殺幼女エロガキは大慌て。



「ちょ、ちょっと止めて下さいっ」



後ろめたい立場らしく、やっぱり公的機関には弱いらしい。



「── やめて欲しかったら、あやまれっ

 こんちくしょー」


「わかりました、あやまります、あやまりますから……」


「あやまれっ

 俺のおチンチンにごめんなさいしろ」


「わかりました、おチンチンに、ごめんなさいします」


「『おチンチンさん』 だ!

 『相棒』 には敬意を持って接しろ!」


「はいはい、もー、わかりました……。

 おチンチンさん、ごめんなさい、です。

 小さいと言った事を取り消します」



深々と頭を下げさせる。



(── よっしゃっ!

 恩知らずな暗殺幼女エロガキを 『ご理解させてわからせて』 やったぜ!)



『相棒』 よ、お前の仇はとったぞ!

これでもう、学校のトイレでだれか隣に来た時に、『俺、小さいのかも』 とかビクビクしなくてすむ。


俺は、感極まって目尻に涙すら浮かべる。


黒服の幼女は、、深々とため息。

そして、何かゴソゴソし始める。



「── ところで、貴男。

 こういう物に、覚えはありませんか?」



彼女はそう言いながら、背負っていた 『長い物』 を下ろして、包みを外す。



「── あ……っ」



バッチリ見覚えがあった。


鉄製の長い銛だった。

何だかびて赤茶た色になっているけど、間違いない。


俺が数ヶ月前に、『飛猿魔ひえんま』 とかいう魔物のサル顔へブチ込んだ、凶器だった。



(そういればアレ、借りっぱなしで、返してなかったな……)



いかん!

そんなつもりじゃなかったのに、借りパクしてしまった……!?



上大門かみだいもんから先の、街道のそばで見つかったんですが ──」


「── すいません、全部ボクがやりましたっ」



俺は、スライディングするような勢いで土下座を敢行かんこう

今度は、俺が頭を下げる番だった。

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