やっぱ異世界はスゲーよ、オーラがあるし

宮間かんの

修行1(幼児)

基礎トレ

001話ヨシ! オーラがある世界

この世界には、オーラがある──


── 『オーラがある』とか言うと、普通は『風格がある』みたいなニュアンスだ。


だが、俺が言っているのは『神秘的エネルギーが存在する』という意味の方だ!


つまり、スピリチュアルでオカルトな方だ!

目に見えない超常エネルギーが、肉体から溢れている!

俺が生まれ変わったのは、そんなミラクルなパワーのある世界!



(── これって、最高じゃない?)



つまり、カ●ハメ波や界●拳が再現できそうな世界なのだ!

もしかしたら舞●術なんかも可能なのかもしれない!


俺の次の人生の舞台は、そんな異世界だった。



(最高な世界じゃないっ?)



文化的にはどっちかというと、西洋っぽい気もするが!

能力的には、きっとアジアンテイスト!

神さま的な龍シェ●ロンが、およそ7個のボールで召喚されたりする世界なんだ!


あの少年の夢がかなう世界なんだ!


すかさず脳内の竜(妄想)が『お前の夢を三つかなえよう!』とか言ってくる!



(うわあ、最高すぎるぅ!

 ── オラ、ワクワクっすぞ!)



歓喜のあまり、部屋中を転げ回る。


俺が、そんな事実に気づいたのは、物心ついてすぐ。

3歳になったばかり頃。


あまりに興奮しすぎて、夜の寝付きが悪くなったくらいだ。



「どうしてウチの坊やは、夜になると元気になるの?

 昼はあんなに眠そうなのに……」



美人なママが、そんな風にすごく心配した。



(夜型人間ですまんな。

 前世からの悪習なんですよ、ママン)



なお、異世界転生してもダメ人間は治らないらしい。





▲ ▽ ▲ ▽



今世(というのか?)の俺は、小さい頃から好奇心旺盛。

しゃべる内容は、大人びていて、おませ。

知能の発育は、周りの子供以上。


周囲には、早熟な子供と思われている。



(まあ、前世は30半ばくらいまで生きたし……

 いまさら、純真無垢な子供のフリはちょっとムリかな)



両親は、『これで読み書きもきちんとできたら、神童と呼ばれるのに……』とか、親戚や友人にぼやいている。



(ムチャ言わんでくれ。

 こっちは異世界の文字と言葉を覚えるだけでも、結構精一杯なんですが?)



何せ、中身おっさんだ。

前世では、健康診断の結果に一喜一憂する、中年だったのだ。

純粋無垢な普通の幼児より、脳みそが硬くて物覚えが悪いのかもしれない。


あるいは、前世の記憶がある代わりに、そういうデメリットとか何かとか……。

それも『いかにも』な感じで、ありそうだ。


なお、この世界の文明程度は、近代くらい。

産業革命後というか、簡単な工場機械くらいはあるっぽい。



(まずいな……)



かけ算割り算とか小中学校レベルの知識では、マウントは取れないかもしれない。


工学とか物理とか、どっちかというと苦手分野だったし。

電子機器の知識とかもないし。

正直、ウ●コ使って農業革命くらいしか、思いつかない。


なかなか知能SUGEEE!スゲ~~は難しい状況のようです。



(いいもん、俺にはオーラがあるし!

 俺くらいの前世の知識じゃあ、内政無双むそうなんてムリっぽいしっ)



こんな事なら、何か専門知識でも仕込んでおけば良かった、とも思わなく無いが。

今さら言っても仕方ない。


── おっと、自己紹介が遅れてしまった。

申し訳ない。


アット=エセフドラ。

それが、今世での俺の名前だ。


この世界では、名前に促音の「ッ」がはいるのは、男児名のポピュラーだ。

ちなみに女児だと長音の「ー」が入るのが一般的らしい。


前世の名前は……たしか、アリトだかアラタだか。

なんの因果か、今の名前に似たような感じだった。

と、思う。


あやふやな話ですまない。


母親の腹から生まれた時に、前世の記憶の半分くらいを置いてきたらしい。


ヘーセイ生まれで、レーワ時代のニッポン国に住んでいたはずだ。

仕事は、いてもいなくてもいい、社会の歯車みたいなもの。


いや。

ああ、確か。

やたらと不景気でろくな就職先がなくて、クルマの営業マンか何かしていたはずだ。

コミュ障のくせに交渉力コミュりょくのいる仕事をしていたせいで、1年をまたずにクビ。


それからはトウキョウから田舎に帰郷。

親戚のオジさんの紹介で町工場に就職。

フォークリフトとかいう、荷物を上げたり下げたりする機械を運転していた気がする。


いや、違う。

あれは、そうだ。

そう、フォークリフトの上に、乗ったのか。

なんか、木の枠を山積みにした上に乗って、高い所へ持ち上げられたんだ。


なんだか、班長だかセンパイだか、やたら威張りちらしたヤツに「電球交換しろ」とか言われた気がする。


………

……


なんだろう、ちょっと頭痛がしてきた。


気にしないでくれ。

たまにあるんだ。

だいたい前世の事を思い出した時なんかに。



さて、そんなしょうもない話はさておき。

ワクワクな話の方を続けよう。


今から、世界で一等いっとうなキセキで、アドベンチャーな毎日が幕をあけるんだ!

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