010話ヨシ! 10ヶ月後(3)、きっと属性【闇】でタイプ【攻撃】な幼女

前回までのあらすじ!


俺、5歳児アット=エセフドラ!

どこにでもいる日本から異世界転生した普通の男の子!

暗い夜道で人助けをしたと思えば、助けた相手に脅されて、今スッポンッポンなんだ!

── 以上。


うん、意味分からん!


あと、黒づくめ幼女の目つきが怖い。

何人かってるレベルの冷たさだ。


ナイフの持ち方ひとつ見ても、明らかに手慣れている。


── どう見ても、暗殺者です。

本当に、ありがとうございます。

アット君の来世にご期待ください!


そんな危機的状況で、ヒュンっとしたおチンチン君を両手でかばい立てしていると、暗殺幼女(仮定)はめざとく指摘してくる。



「……何を、隠しているんですか?」


「何って、その……ナニを……」


「何、ナニ……は?

 ……いいから、隠しているその手をどけなさいっ」


「ええっ、ちょっと……っ」



イヤー、痴女よ!

襲われるぅっ



「……逆らうと、痛いですよ?」



暗殺幼女(仮定)の、刃物のような冷たい目付きに、観念する。

あと、手に持ったナイフがおっかない。


これ見よがしに、くるくる回すの止めよ?

マジで怖いの。



(ああ……

 なんで俺は、こんな目にあってるんだ……?)



幼女の前で全裸露出なんて……。

そういう特殊性癖の人と勘違いされたらどうしよう。


そんな事を考えながら、前を隠してた手をのけて、両手をバンザイ。



「── ふむ……小さい。

 まったく子供ですね」



不意打ちで、鋭い言葉のナイフが飛んできた。

── グサぁ、と胸にブっ刺さった。


う、うるせー、こんにゃろー!

皆が皆『我々の世界ではご褒美です』と喜ぶと思うなよ!


俺だって、『相棒コイツ』の事をバカにされて黙っていられるほど、温厚じゃねえぞ!



「── ち、小さかないわいっ

 寒いから、ちょっと縮んだだけだ!」


「ち、縮む……!?

 そ、そういう事が、あるのですか……?」



思いがけず、暗殺幼女(仮定)の動揺したような声が返ってくる。



(フフフ……スゲーだろ。

 『相棒コイツ』、温度や摩擦で変形するんだぜ?

 そう! 我らの『相棒』には男のロマンが詰まってるんだ!)



「ああ、暖めたら大きくなるんだっ!

 まってろよ、今すぐ大きく ──」



エロ幼女マセガキめ、目に物見せてやるっ

出番だぜ、『相棒』マイサン

今こそたぎ海綿体ジュニア

マックス状態の『極太おまえ』を見せてやれ!



「いや、それはいいです。

 あなたの恥部の大きさや変化に、興味はありませんから」


「── ~~……っ!?」



暗殺幼女(仮定)は、冷淡に却下してくる。

あと、『恥部』とか言うなっ



「じ、自分が見せろって言ったくせに……っ」


「なんですか……?

 あまり無駄口をたたくと、『それ』切り落としますよ?」


「── ひぃ……っ

 なんでもないです、はいっ」



やめてください、死んでしまいます!(男として!)


そりゃね、女の子には解らないかもしれないけど。

『相棒』なんです、男の子の一生の友なんです。

ヤンチャでキカン坊な所もあるけど、大切なヤツなんです。


あと、ナイフをちらつかせるのは止めようぜ。

その手の動きは局部切断チョッキンされそうで、おっかない。



「ゆっくりとその場で回りなさい。

 そして、背中を見せなさい」


「はい……」



俺は、言われるままに、回れ右して背中を向ける。


あと、ちょっとお腹が冷えてきたのか、ゴロゴロ言い出した。

寒空の下で全裸になったりすれば、当然だよな。



(……だいたい。

 俺は、何でこんな目にあわなきゃいかんのだろう……?)



一応、人助けしたつもりだったのに。

感謝の言葉ひとつありゃしない。


それどころか罵倒ばとう侮辱ぶじょくの嵐だ。

誰もがドMで、ビクンッビクンッすると思うなよ!


……なんか、悔しくて、ちょっと涙が出てきた。



「……いいでしょう、服を着なさい。

 ただし、ゆっくりとです」



黒づくめの女の子にそう言われて、俺は石畳の上に脱ぎ散らかした服をかき集める。


あーあ、服まで冷え切ってる……

スゲー寒いし、風邪ひきそう……



「うう……せっかく助けたのに。

 こんな目にあうなら、人助けなんて、しなきゃよかった……」


「…………ま、まあ。

 あの程度の敵など余裕でしたが、助力を受けた事は事実。

 お礼くらい、言うべきでしょうかね……」



今さらデレても遅いわい!

俺の中じゃ、好感度ランキング最低だからな、お前!


俺はすばやく服を着込むと、おさらばする。

もう一秒すら、この女と一緒にいたくない。



「あ、待ちなさい……まだ、確認する事が……」


「── うるさい!

 ヘンタイ!

 痴女!

 服脱がし魔!

 もう、お前なんか助けてやんないからなぁっ」



色々限界だった俺は、思いの丈をぶつけて、思いっ切り走り出す。

追いつかれないように、オーラ全開の走りだ。


きっと後で、ゲロゲロになるだろう。

だが、これ以上男の子のプライドを踏みにじられるより、はるかにマシだ。



「ああぁ……やばい、お腹グルグルいってるっ

 くそぉ、あの女ぁっ

 こんなに寒いのに、ひとを裸になんかするからぁっ

 ── らめぇえ、漏れる、漏れちゃうっ

 街角でゲリピーお漏らしするダメ幼児になっちゃうぅぅぅ!」



俺は、涙目で全力疾走を続ける。


立ち小便たちションくらいならまだしも、街角でお腹下しゲリピーは上級者向けすぎる。

人生の難易度が『死ぬが良い!ヘル・モード』とか『泣け叫べそして死ね!ルナティック・モード』になってしまう。


さらに大きい方の最中に、あの黒づくめ幼女に追いつかれて、また冷ややかな目でバカにされるとか……。

俺の精神が『再起不能インポッシブル』になってしまう。



うん、『不能インポ』はヤだ。

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