修行2(幼年学校)

空中移動

026話ヨシ! 初手、登校拒否(失敗)

異世界に生まれ変わって、6年が過ぎた。


転生者である俺も、だいぶん異世界こっちに馴染んできた。


だが、日本での生活が懐かしいと思う事も、ちょくちょくある。

主に、続きが気になっていた『あのマンガ完結したかな』とかいう方面で。

具体的には、ハギ●ラとか、トガ●とか、●ダとか、ル●コとか、シ●ナとか、ミ●ラとか、イタ●キとか……etcエトセトラ


少年マンガ主流4誌を考えただけで(しかも俺の主要ジャンルだったバトル冒険マンガ界隈だけで!)ざっと二十数人くらいは『死ぬまで完結しないんじゃないか』と不安になるレベルの長期連載や長期休載の作家が居た気がする。


俺が死ぬ前の最終巻どこだったかな、という作家も少なくない。



(【求む】漫画家転生!

 寿命や健康が気になるなら、異世界転生リニューアルしてゆっくり続き書いてくれても良いんだよ?

 喜ばれます、主に俺に)





▲ ▽ ▲ ▽



── さて、本題。

ちょっとした疑問なのだが、『毎日学校に行くのが楽しくて仕方なかった』というリア充さんってのは、果たしてどのくらいの割合いるんだろうか?


前世の記憶が半分くらい抜け落ちてる俺だが、ひとつだけ間違いないのは、『学校は嫌いだった』という事である。


少なくとも、『陽気な性格パリピ』ではなかった。

だいぶん、『陰気な性格インキャ』寄りだった。

そして、だいぶん学力も低空飛行カツカツだった覚えがある。


そのくせ、ズル休みして見る『教育テレビ』は好きだった気がする。



(── うん、ダメ人間だなっ)



という訳で、学び舎という施設に対する抵抗感が、半端ないッパない訳だ。


そういう事を、両親にこんこんと説明した。

こんこんと説明したのだが、



「まあ、また変な夢をみたのね?

 でも大丈夫よ、実際行ってみたら楽しいわ」


「そうそう、友達もたくさん出来るし。

 お姉ちゃんや、お隣のマッシュ君もいっしょなんだから、大丈夫」



と、軽く流されてしまった。



(── ドちくしょう!

 だから、自力で伴侶つがいゲットするような、リア充はダメなんだよ!

 他人の痛みに対する、『いたわりの心』ってヤツが足りてねえ!)



── お前な言っとくけどなお前の人間性が高いんじゃなくてなたまたま容姿やら家柄やら色々恵まれて育っただけだからな周りにチヤホヤさてきたから人気者だから心に余裕あるだけだからな人間とかみんな根っこ変わんねえからな運良く人生イージーモードだっただけからな親先祖神様仏様に感謝しとけよ謙虚さ忘れんなよ自分が善い人的な人間力そなわってる的な勘違いすんじゃねえぞまったく自分ひとりで大きくなったみたいな顔しやがってこれだから陽キャってヤツらは ──


と、俺が暗い顔で、特級呪物とっきゅうじゅぶつになりそうなくらいののろいをため込んでいても、時間ときの流れには関係ない。



ついに怖れていた、初登校日がやってきてしまった。





▲ ▽ ▲ ▽



初登校の当日、朝。


俺は、姉さんに手を引っ張られ、家から連れ出された。



(── イ~ヤ~じゃぁぁあ!

 学校なんて行きとーない!

 よその子とともに学びとぅーない!

 よその子と学び To Nightトゥーナイ

 ああ、お家がいいよおぉ!

 オーラの訓練もっと頑張るからさぁ!

 誰かボクを助けてよぉおお! ミ●トさあぁぁん!)



と、しばらくイヤイヤしたが、家から蹴り出される。

というか、本当にリアル蹴撃キックで蹴り出された。


うん、ウチの姉さん、乱暴すぎじゃないかな?


いくらアット君の背中が、無敵のヒーロー的たくましさに溢れているからって、容赦なくヤクザキックするもんじゃないと思います。


幼児虐待は、法律違反です。

気をつけましょう!



「チリーぃ!

 そろそろ学校行こうぉ?」



俺が逃げ出さないように首根っこ掴んでいる姉が、お隣さんに声をかけた。

すると、困ったような声が返ってくる。



「あー、うん……ちょっと待って」


「どうかした?」



心配した姉が、お隣さんの玄関をあけて中を覗き込む。


すると、お隣のお姉ちゃんが、ウチの姉と同じような体勢で出てきた。

つまり、弟の襟首つかんで、引きずってきたのだ。



「あー、ごめんね、ウチの弟が……。

 もー、ちゃんと挨拶しなさい。

 マッシュったら、最近アット君が遊んでくれないから、スネてるのよ……」


「あー……そういう年頃なのかなぁ。

 ウチのなんか昨日の夜から、『お腹痛い』『頭痛い』『熱が出た』って。

 もう、バカなんだから、仮病だってバレバレよ。

 冬に庭の石の上で寝てても、ぜんぜん風邪引かないくらい丈夫なくせにっ」



そんな風に、『雑談する姉に引きずられる弟』×2組。



(── そうか……マッシュ、お前も学校きらいなんだな……

 解るぜ、その気持ち……その苦しみっ

 『超親友』ベスト・フレンドの俺だけには伝わってる……っ)



俺は洋画でよくやるみたいに、自分の心臓の上を、トントンとやってハンドサイン。

そういう風に、心の交流を確かめるような視線を向ける。


しかしマッシュは、何故かプイッと顔を背けた。



(── ふっ……

 『超親友』ベスト・フレンドったら、相変わらず照れ屋なヤツだぜ)





▲ ▽ ▲ ▽



幼年学校の初登校日の夕方。


俺は、家に帰って、上機嫌で今日の日課(オーラ特訓)をこなしていた。



(うっひょひょ、たのすぃ~!

 ── 誰だよ『幼年学校なんて行きたくない』とか言ってたのっ

 そいつバカじゃねえの!?)



なお今日の授業は、こんな感じだ。

(1)よみかき

(2)けいさん

(3)うたの時間

  ~昼ご飯~

  ~お昼寝~

(4)ねんどでカップ作り(後日素焼きの予定)



(── 楽勝ぉ!)



『けいさん』の授業でかんたんな算数をテキパキ答えると、女の子達にキャアキャア言われるし。


これって取引先の重役接待かな?

オジサンは接客役キャストの女の子に、いくらチップ払えばいいのかな?


なお、お隣男児のマッシュ君の場合は、こうだった。

先生にカップ作れと言われているのに、何事も雑で乱暴なので、上手く造形できない。

ふて腐れて粘土でウ●コなんて作った上に、先生にしかられると逆ギレ。

みんなに白目で見られる始末だ。



(── すまんなぁ、友よぉ。

 ほらっ、俺ってさぁ、人間性カンペキじゃん?

 つまり、これが俺とお前の『人間力の違い』ってヤツなんだ!)



デュフフフッ

デュフフフフフフフフ!


あー笑いがとまんねー。


これが異世界を無双するって事っすね!

アット君、マジ半端ないッパねえ

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