2話 元カレは常に噂の渦中にいるそうです
私は今、とんでもなく嫌な噂が広まってしまったなと思っていた。
「あ、朱音ちゃん。一緒にご飯食べよ?」
「うん、いいよ!」
お昼休み。
私の教室にそう言いながら呼びに来てくれたのは、隣のクラスで、私の親友の春川泉ちゃん。
そして、今回私が聞いてしまった噂の二人のうちの一人だった。
「それでさ、泉ちゃん」
「ん?」
私たちは、食堂には向かわず、そのまま教室で食べることにした。
だから、対面に椅子だけをもってきて一緒に一つの机で食べている泉ちゃんに向かって話しかけた。
「えっとね…」
「どうしたの?朱音ちゃん。そんなに言いずらいことなの?」
「そうだけどそうじゃないって言うか…」
「何それー」
私は、噂について、言うべきか言わないべきま迷っていた。
しかし、最終的には言わなくてはいけないので、私は覚悟を決めて、言うことにした。
「あのさ、泉ちゃん」
「うん」
「噂って聞いた?」
「噂?」
「そう、噂」
私が話を切り出すと、泉ちゃんんは何のことだか全くピンとこないと言った様子だった。
「多分、聞いてないと思うけど…それがどうかしたの?」
「うん。えっとね、内容なんだけど、『あの首席と、天使が、付き合っているらしい…』って感じなの」
「………え、そんな噂が広がってるの?」
「そう」
そんなの初めて聞いたと言った表情で、泉ちゃんはそう言った。
「知らなかったな……間違いなくあれが原因だよね?」
「うん。多分金曜日が原因だと思う…」
「そっかー」
私たちは、原因がすぐにわかった。というか、私は元々原因が分かっていた。
「対策とかした方がいいかな?」
「どうだろ。私の時は、何にもしてなかったし、ほっておいたら自然と忘れられるんじゃないかな?」
「そうだといいんだけど……」
泉ちゃんは、どこか歯切れの悪い言い方をしていた。
「何か問題でもあるの?」
「うん。実はね、朱音ちゃん」
「うん」
泉ちゃんが、少し言い出しずらそうにしながらも、何かを決意した後、話し出してくれた。
「私さ、今までは朱音ちゃんって言う規格外なモテモテの女の子がいてくれたから、ほとんど噂は立ってなかったの」
「そう言えば…そうだね。天使って呼ばれるようにはなってるみたいだけど」
「そうなの。ま、まぁ、天使って呼び方は、中学校の時からそうだったから今更って感じだけど」
「泉ちゃんの中学校の友達、うちの学校に来てるの?」
「うん。一組の平川秀真とか、他にも数人来てる…かな」
「平川秀真?どこかで聞いたことある気がする!その名前」
私は、その名前に聞き覚えがあった。べつに、顔を知っているとか、知り合いであるとかではない。
ただ、なんとなく聞いたことのあるような気がしたのだ。
私がそう言うと、泉ちゃんは、何か心当たりがあると言った様子で、話してくれた。
「えっと、もしかして…」
「ん?」
泉ちゃんは、一度溜めると、少し微妙な顔をしながら話し出した。
「秀真は、正直結構モテるの。だから、それで聞いたことがあったんじゃないかな?」
「あぁ!そうだ、それで聞いたことがあったんだ」
「やっぱりそうだよね…」
どうしてか分からないけど、少し気が沈んだ様子の泉ちゃん。
しかし、私がそう思ったと同時に、泉ちゃんは元の様子にもどっていた。
「そうそう、確か、モテるのに女性に興味がないみたいな感じだったっけ?」
「というよりかは、他人の恋愛に興味がないと言うか、そんな感じの人だよ」
「へー、そうなんだ。泉ちゃん、平川くんの事、よく知ってるんだね」
「まぁ、仲は悪くなかったから…」
少し濁しながら話す泉ちゃんに、今までに感じたことのない雰囲気を覚えた。
しかし、そんなことに反応してしまうのは良くないことだと考え、心の中でとどめることにし、私は話を続けることにした。
「そうなんだ」
「そうそう。でも、高原君ほどモテるわけじゃないけどね」
「そうなんだ…やっぱりさすが海斗君だね……」
私は、少しだけ気が落ちてしまった。
海斗君がモテると言うことを、思い出してしまったから…。
って、何ネガティブ思考になってるの、私。例えどんな敵が来ても勝ち抜くって決めたばっかりじゃん!
私は、今一度自分への決意確認をした後、ふとあることを思い出した。
「そう言えば…」
「どうしたの?朱音ちゃん」
「あ、えっとね。そう言えば、平川くんって、海斗君の友達だった」
「……そうだったの!?私それ初耳なんだけど」
「そうだったんだ。平川くんとは話さないの?」
「うーん。たまに帰りが一緒になった時とかは、話したりはするかな」
「そうなんだ…」
その時、私は恥ずかしい事に、泉ちゃんのことを羨ましいと思ってしまった。
平川くんと帰ってる事に思ったのだが、別に平川くんだから、ではない。
私も海斗君と一緒に帰りたいなと思ったからだ。
でも、さすがに今の関係では、嫌がられるかもしれないし、ましてやまた噂になる。そうなると、さすがに寄りを戻すのも難しくなってしまう…。
それに、二人の時以外だと、やっぱりまだ緊張しちゃうって言うか、変に意識しちゃうんだよね……。
「朱音ちゃん?どうしたの?」
「あ、ううん。何でもないよ!」
私が考え込んでいると、泉ちゃんが優しく話しかけてくれた。
本当に、考え込んでしまう癖は、いいような悪いような………。
私たちは、その後も様々な会話をしながら、お弁当を食べた。
「それじゃぁ、ごめんね、朱音ちゃん」
「うんうん。全然いいよ、気にしないで」
「ありがとう。それじゃぁ、また明日」
「うん。また明日!」
私たちは、駅の前まで来ると、すぐにバイバイをした。
今日は、泉ちゃんに用事があったため、長話ができず、少し早歩きで駅まで一緒に来てた。
別に、一人でもいいと言われたのだが、私がお願いして、二人で帰らせてもらった。
「さすがに一人で帰るのは怖いもんね…」
私はそう呟きながら、いつもより早く帰宅した。
家に着くと、私はいつものようにベッドに寝転んだ。
「ふー。今日も疲れた~」
私は、大きく深呼吸をすると、ゆっくりと瞼を閉じた。そして、そのまま夢の世界へ旅立とうとしたときだった。
『ピロン♪』
メールが来た。
私は、誰からだろう?と思いながら、携帯を手に取って、メールを確認した。
そして、確認した途端、私の脳みそは、覚醒した。
「え?海斗君?」
私は半分混乱状態だった。
まさか、海斗君の方から私に連絡をくれるとは思っていなかったからだ。
私は、メールの内容をしっかりと読んだ。
「今週の土曜日は……空いてる!よし!」
そう呟いて、空いてるよと返信しようとしたとき、ふとあることを思い立った。
二人で出かける?
私はもう一度文章を読み直してみた。しかし、人数が書かれていなかった。
「と、言うことは…二人なのかな?」
私は気になったので、『それって二人で?」と送った。
送った後に思ったのだが、何だがこの文章では、二人が嫌だ見たいだなと後悔した。まぁ、でももう、後の祭りだ。仕方がない。
そう送ると、少しして返信が来た。
━悪い。言い忘れてた。
俺と朱音、それから春川さんと秀真の4人でだ。
そっか…。二人じゃないんだ。それに、泉ちゃんも……。
私は、またネガティブ思考になりそうになったので、グッとこらえた。
「で、でも。二人じゃ恥ずかしいから、ダブルデートみたいにした可能性だって…ほら、泉ちゃんと平川くんも仲がいいって言ってたし……」
私は、とにかくポジティブに考えることにした。
そして、『分かった。大丈夫だよ』と送ると、そのままベッドにスマホを放り投げた。
「行ってみないと分からないよね」
私はそう呟いて、今度こそ深い眠りについた。
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