3話 親友たちの秘密会議①

【平川秀真】


5月も今日で終わる日、俺はとあるファミレスの入り口から死角になっている席に座って、ある人物を待っていた。

まぁ、隠す必要もないか言うが、春川泉だ。

 理由は勿論作戦会議…だが、俺的には普通に泉と出かけたかったと言うのもある。

 そんなの本人には言えないけど…。


 ってことで、俺は先に注文しておいたドリンクバーでアイスコーヒーを入れて、それを飲みながらゆっくりと泉を待っていた。


「お待たせ、秀真」

「おう、泉」


 少ししてから来た泉は、俺と同じドリンクバーと、チーズケーキを頼んだ。だから、俺も次いでということでチョコケーキを頼んだ。


「それで、今日は突然の呼び出しに応じてくれてありがとう、秀真」

「全然いいよ。俺と泉の仲だ。これくらいいつものことだろ?」

「確かに、そうだね」


 まぁ、これがどうでもいい女なら話は変わるが、こと泉に関しては、俺は何でもする。

 あんなことがあったって言っても、俺は泉のことが好きだからな…。絶対に告白はできないが。


「んで、作戦会議って言ってたけど、はやっぱり海斗と志水の話だよな?」

「うん、そうなんだ」

「でもさ、正直俺らがなんもしなくても、時期にあいつらはくっつくだろ」

「うん、そうかもしれないね」

「雨降って地固まる。俺のしたことが何とか結果的にいい方向に動いてくれたから、九死に一生を得たって感じだけど」

「そう、そう言うこと」

「どういうことだよ?」


 俺が二度としないと誓った失態に、一体全体どんなキーワードが埋まっていたのか、まったく分からずに泉に聞き返すと、泉は一呼吸を置いてから話し始めた。


「えっとね、その秀真を責めてるとかじゃないけど、前回私たちはいらないことをして高原君を倒れさせたり、朱音ちゃんとの仲をギクシャクさせちゃったりしたじゃん」

「……そうだな。ほんと、今上手くいってくれててよかったよ」

「だね。だから、つまり私たちが何かするんじゃなくて、何もしないようにするってこと」

「あぁ、あの日病院で言ってた通りにってことだよな」


 海斗が倒れた日、俺たちが決めたことだった。

 この二人は面白いと思って関わっていたが、どうやら俺たちはただの邪魔者、深く関わりすぎた部外者になっていた。親友ポジション失格だ。


 まぁ、とりあえずこういう気持ちはずっとあるが、今は抑えないと逆に気を使わせてしまうかもしれない。


「そう。だから、私たちはしばらく二人で行動しよう」

「ん?」


 と、そんなとき急に泉が訳の分からないことを言い出した。

 何を言ってるんだ?だって、泉と俺が一緒に行動する?志水がいるからあまり目立たないが、泉もなかなかモテるんだぞ?そんな奴とこれまた海斗に隠れて意外と告白されてる俺が一緒にこうどうするって、それはかなり悪目立ちするんじゃ…。


 そう考えた俺は、泉の真意を確かめるべく、丁寧に探った。


「何でだ?別に関わらないようにするって自分で考えればいいんじゃないか?」

「うーん。確かにその通りかもしれないけど、私達って意外にブレーキが利かないじゃん?」

「あー確かにな」

「だから、二人でいればどちらかが止めることできるのかもって」

「なるほど。確かにそれは確かにいいかもしれない。でも、そもそも関わらなければ済む話では?」


 そう。ここで肝心なのは関わる必要性だ。

 俺が少し海斗と距離を取る事自体は別におかしくない。それに、まったく関わらないのではなく、深く関わらない。要するに友達程度にとどめればよいと言う話だ。


「それだと、たぶん気を使わせちゃうよ」

「なるほど」


 ごもっともだった。

 普段と違う態度になれば、少し変に思うだろう。

 もしそうなれば、俺が倒れたことを気にしてるのか…って海斗に思われて、変に気を使わせてしまう…考えればすぐにわかることだった。


「ほんと、今の状況でも一人じゃまずいな」

「そうなんだよね」


 一人じゃ良くないのは今立証された。恥ずかしながら…。

 そして、俺たちはされに深く詰めていくことにした。


「そうだな。じゃ、実際に明日から動いていく感じだろ?」

「うん」

「どういうふうにするんだ?」

「まず、お昼とか普通に二人になれそうな時間はご飯を食べる目的で居れるよね」

「確かにな。あとは放課後だ」

「それもそうだね」

「後は…休日だな…」

「そうだよね。正直休日とかだったら遊びに行っちゃうかも」


 休日。それは何の制約もない自由の時間。

 社会人でも、学生でも、休日は嬉しいものだ。


「誘われたら断る?」

「いや、それなら普段通りじゃない」

「そうだな…」

「だから、私が誘われたら高原君と秀真を誘ってみる。秀真が誘われたら逆に朱音ちゃんと私を呼ぶって感じでどうかな?」

「なるほど……それなら変じゃないか」

「そう」

「良し、ならとりあえずまとまったな」

「うん、そうだね」

「また定期的に会議するかー」

「そうだね。大体の日曜日はしばらくの間しよっか」

「そうだな」

「よし、じゃぁ決定ね」

「おう」


 こうして俺たちは今後の方針を立てた。


 それにしても、泉としっかり関わるなんて、かなり久しぶりだな…。

 俺はそう思いながら、泉と共にファミレスを出た。

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美人で噂のお隣さんが俺の元カノでした 天川希望 @Hazukin

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