第20話

 毛布から顔を出したままのレイが私に言う。

「マリア、やっぱりこっち来て。いつもみたいに」

「了解しました」

 私は定位置から立ち上がり、レイのベッドに腰かけた。レイが眠るまでこの姿勢でいる事が多い。その際にレイは、大腿部にのせている私の手を握りながら眠るのだが、今日は手を握りにはこなかった。


 レイが私に質問をする。

「ねえマリア、なんで下着着けてないの? 変だよ」

「規定にはありません」

「でも、服は、白衣は着てるよね」

「ナース服の着用は規定にあります」

「でも変だよ。普通着けるよ。絶対おかしいよマリア」

「……しばらくお待ちください」

 私は内部と外部のデータベースを検索し、レイに向けた回答を作成した。

「患者に対する医療行為と看護行為のために、着脱と洗浄可能なナース服の着用は目的遂行のために必要不可欠です。病院の規定にも着用の義務は記載されています。私が着用しているナース服は、通常はボタンで作成してある箇所がマジックテープに置き換わっています。これにより私単体で着脱可能となっています。しかし下着と呼ばれるパーツは、その形状から私単体で着脱する事は非常に困難です。また、ナース服と異なり下着が外部要因で汚損する事は無いため、私の業務に下着パーツの着用は不要であると判断されます。もしレイが下着パーツの着用が業務に必須であると判断されるのであれば、着脱時にレイの補助が必要になりますが、今からナースステーションへ取り寄せの依頼を出しま……」

「あー! ダメダメ! わかった! わかったからそれしないでお願い!」

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