第26話
看護活動47日目。現在は07時00分。
無菌室の扉が開き、入室する。
「マリア!」
私が看護活動開始の挨拶を言うよりはやく、レイが泣きながら抱きついてきた。
「マリア、もう戻ってこないかと思った。ごめんなさい、ごめんなさい……」
レイは私の胸元に頭を押し当て、咳き込みながら泣いている。
「問題ありません」私は言った。「オールグリーンです」
レイはしばらく泣いていたが、やがて涙をパジャマの袖で拭い笑顔を見せた。
「安心したら疲れてきちゃった。横になるね」
そう言ってレイはベッドに横たわる。
左手首のブレスレットからの情報では、心拍数正常、体温は37.3度、微熱あり。
「マリア、前はね、家に帰りたいなっていつも思ってた。『ただいま』って言いたかった」
ベッドに横たわったまま、レイがつぶやく。
「でも今はね、マリアとずっとここに居るのもいいかなって思うんだ」
そう言ってレイは笑った。
「一番いいのは、マリア連れて家に帰る事だけど……現実的じゃないよね……」
レイは黙り込む。
そしてしばらく経ってから、小さくつぶやいた。
「現実、か……。あと、どのくらいなんだろ……時間……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます