第12話
看護活動6日目。現在は09時14分。
「
朝の点滴開始時、グローブボックスの向こう側から
「そんな大声で言わないで下さいよ伊上さん」
「ボリューム下げたってみんな知ってるから意味ないわよ」
通常05時00分に無菌室を退出し07時00分に入室する設定となっているが、昨夜はレイによる時間制限のない待機命令が入った。コマンドが取り消されないまま05時00分が近くなったため、15分前に管理者権限を持つ者たちに判断を求めたのだ。
「でも異なるコマンドが重なったり、コマンドの優先順位が不確かな時には管理者権限を持つ人間に判断を仰ぐって規定は、よく考えたよね。やるじゃん吉野」
この規定はデフォルトで入っているもので、レイと吉野ドクターが追加したものではなかった。
「でさ、吉野と山中っちで意見割れたみたいよ。機械も休ませるべきだって吉野が言って、山中っちは医療機器として国の認可が通った段階で連続稼動の問題はクリアなはずだって。どっちが正しいんだか私には分かんないけど、結局マリアは徹夜になりましたとさ」
「へー、そんな事あったんだ」点滴の針をレイに刺し終わった若手のドクターが伊上看護師の話に反応する。
「まあ、私もまた聞きだけどね。ところで黎くん、まだ熱はあるようだけど。朝ごはん食べられた?」
「あまり食欲無いです。残しました」
「無理しない程度には食べてね。そうでないと血が作れないから」
「はい、頑張ります」
ドクターと伊上看護師が隣室から退去してから、私は点滴の針が刺さっているレイの左腕をグローブボックスからベッドに戻し、グローブボックスにつながる壁の扉を閉める。
「そっか、待機命令、か」
レイはそう言って笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます