第9話
看護活動4日目。現在は16時22分。
レイは、固定端末でシステム副管理者の吉野ドクターと会話していた。眼鏡をかけた吉野ドクターがモニターの中で何度も頭を下げている。
今日、レイは朝からずっと端末に何かを入力していた。シミュレーション用のソフトもダウンロードしていたようである。また、何度も私のシステム内部にログインを繰り返した。私の行動規約に関するディレクトリを何度もチェックしていた。
「だから、権限と命令の両方にランクをつけたんだよ」
レイは、私の利用方法と制限の手段を吉野ドクターに提案していた。
その内容は、権限と命令に2段階のランクを設ける事で不測の事態を避けつつ緊急事態への対応も可能にするという事だった。
1.私への命令が有効な人物は、レイ以外では管理権限のあるドクターと看護師に限定する。
2.有効命令内容は医療関連の行動に限定する。
3.判定は私の内部にある医療行動規約に準拠する。
4-1.医療行動と思われない命令でも必要と判断される場合は命令が可能。
4-2.その場合の命令は看護副主任以上またはドクターに限定。
4-3.その命令が出た場合は管理権限者に一斉通知。
「ね? これなら誰かの不当な命令で患者が危険な目に遭う事無いでしょ? 患者の自傷行為を止めるための命令もできるし、万一おかしな命令が出ても相互監視できる」
吉野ドクターは何度も頭を下げながら、モニターを切った。
固定端末から私に向き直ったレイは笑顔で私に言った。
「えへへ、取り引きしちゃった」
レイは、私の利用制限案を吉野の提案という事にするように提言し、代わりにレイのスーパーバイザー権限をそのままにしておくよう取り引きしたのだった。
「でも、もう僕のIDのパスワードは変えちゃったもんね。削除できないよ」
大きく笑いながら、レイは言う。
そして続けて「ちょっとサプライズを考えてるんだ。その時はマリア、手伝ってね」と楽しそうに言った。
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