第22話

 看護活動46日目。現在は07時00分。

 前室のドアが開き、私は無菌室へと入る。


「おはようございますレイ。看護活動を開始します」

「マリア、おはよう! あの! 昨夜の事、本当に報告してない?」

 ドアが開くなりレイは私に質問をしてきた。

「昨夜の事とはどの事象を指すのでしょうか? 消灯時間からレイが眠るまでに起きた事象から候補を挙げますが、レイが私にナース服を脱いで立つよう指示を出した件でしょうか? それともレイが私の上で射精……」

「あー! いちいち言わなくていいから! 報告とかしてない?」

「バイタルデータ以外のナースステーションへの報告は、この24時間行っておりません」

「よかったー」

 そう言ってレイはベッドに倒れ込んだ。

「現在の体温は37.2度、脈拍は95です。しばらく安静にする事を進言します」

「うん、安心したらまた眠くなってきた。ちょっと寝るね」


 07時10分、デスク上の固定端末のコール音が鳴り、ナースステーションの映像がモニターに映る。

はじめくん機嫌なおったー?」

 伊上いがみ看護師だ。

「今悪くなりました」

「その調子なら大丈夫ね」

 伊上看護師が大声で笑う。

「林さんが心配しててさー、心配しすぎてコールできないって言うから私代わってやったの。じゃ大丈夫って林さんに言っとくね」

「あ、待って!」

 レイは慌てて固定端末に向き直った。

「林さんに、『昨日はごめんなさい』と伝えてもらえます?」

「ん、わかった。でもね」

 伊上看護師は言う。

「患者は多少わがままなものよ。君は他人の事ばかり気にしすぎだから、もっと自分の事を考えなさい」

「はい、そうします」

「朝ごはん食べれる? 少しは食べないとダメよ。じゃね」

 そう言って伊上看護師はモニターをオフにした。


 その後、レイは届いた朝食を食べたが、半分以上手をつけなかった。

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