第29話
涙を流しながら隣室を伊上看護師が出ていってから3分後、山中看護副主任から私に直接メッセージが届いた。
「まったく、ここまでやるとは……何かやらかしそうだから事前に対処しておいて正解だったわね。とにかく、先程指示を出したように、今夜起きた事のうち新城黎のバイタルデータ以外の情報は、一切報告の必要はありません。私の権限でこの指示を出し、起きた事には私が責任を持ちます」
夜の点滴の最中にも、同様のメッセージが届いていた。
管理権限のある山中看護副主任からの指示に私は従った。伊上看護師がレイの頬を叩いた時もナースステーションに報告を出さなかった。
誰もいなくなったグローブボックスの向こう側を、レイはずっと見つめていた。
私は点滴終了後の後始末を始める。
脱脂綿、消毒用アルコール、止血パッチなどを所定の場所に戻し、空になった点滴パックや封をした注射針、使用後の脱脂綿などをディスポーザーに入れる。
グローブボックス内をアルコールを含んだ使い捨てタオルで消毒する。手袋やアクリル板を拭いた時、レイが言った。
「マリア、怒ってる?」
「質問の意味がわかりません」私は答えた。グローブボックスの扉を閉める。閉めた時の音が通常より10デシベル大きかった。
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