第19話

「マリア、眠れないよ」

 01時30分を過ぎて、レイは言った。毛布から顔だけ出して私を見ている姿勢は変わらない。

「マリア、眠れないけどさっきみたいに怒らないの?」

「眠らずに活動を続けることと眠れないことは違うと判断します。レベル1の睡眠導入剤でしたら室内に常備してあります。服用しますか?」

「いや、それはいいや」

「了解しました」


「マリア、さっきの事、報告するの?」

「質問の内容が曖昧です。どの事項についてなのかを明確にして下さい」

「さっき、絵を描いたでしょ? マリアの……」

「レイが消灯後に活動していた事項に関しては、01時00分に就寝を開始しましたので報告事項から除外されました」

「よかった! じゃあさ、あの、明日の夜、またお願いしていい? かな?」

「質問の内容が曖昧です。どの事項についてなのかを明確にして下さい」

「え? 言わなきゃ、だめ?」

「通常業務として設定済みの行動以外を指示するのであれば、インシデントを防ぐために内容を明確にする必要があります」

 私の返答に対し、レイは即答しなかった。表情を様々に変化させながら、5分経過後に大きな声で私に指示を出した。

「また夜に服を脱いで、窓の前に立って下さい! お願いします!」

「了解しました」

 レイの心拍数は120を超えていた。

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