武器屋と言えばヒゲヅラのおっさん…じゃねえの??

「いやー、調子に乗って買いすぎちゃいましたぁ」


 アナは野菜や衣服なんかがぎっしり入った紙袋を両手に持ってにんまりしている。俺の装備を買ってそのついでにショッピングだと思っていたが、これだとショッピングが主なような……。まあいいけど。


 ちなみに俺は下着と半そで短パンをそれぞれ二着ずつ購入したが、それで大体2ピール程度だったので1ピールは大体1000円くらいのようだ。つまり100ピールってかなりの大金なのでは……?


「あ、見えてきましたよ。あれがクロス村唯一にして信頼できる武器屋さんです」


 そう言ってアナが指差した建物は表に大きなカマが飾ってあるいかにも武器屋という感じの建物だった。奥の方は倉庫っぽくなっているのであそこに商品を保管しているのだろう。


「ごめんくださーい」


 アナが紙袋を持った手でドアを器用に開けて中に入った。俺も後に続く。店内は思ったより狭く、地方のレンタカー屋みたいな感じでカウンターの前にちょっとしたスペースがあるだけだった。そして壁には色々な種類の武器や防具が所狭しと飾られていた。ちょっと男臭い感じだ。


「はいはいいらっしゃーい」


 アナの声に応答するように言いながら奥から現れたのはひげもじゃで強面のおっさん……ではなくなんと女の子だった。武器屋ってむさくるしいおっさんがやってるイメージだったけど違ったのか……。


 赤い髪の毛を下の方で三つ編みにしていて、ちょっとつり目気味の目と頬に少しだけあるそばかすがお転婆っぽさを醸し出している。上半身は胸にさらしを巻いてその上からカウボーイが着ているベストっぽいのを羽織っているだけのヘソ出しスタイル。下は極限に短いショートパンツを穿いていた。確かに武器屋っぽいといえば武器屋っぽい。


「お久しぶりですジータさん」


「アナちゃん久しぶりー! それと……」


 ジータ、と呼ばれた女の子は俺の方を見る。つまり「誰?」ということか。


「あ、この人は勇者のヒロキ様です」


「勇者さんか! はじめまして! うちの店をごひいきにね!」


 ジータは勇者と分かるや否や俺に満面の笑みでそう言った。商売人やなあ。でも逆にこの村に勇者以外の男っているんだろうか。今のところ俺以外の男に誰一人会ってないけど。


「それがですね、実は早速ジータちゃんにご相談したいことがあって……」


「最初の装備でしょ? 見りゃ分かるよ」


 ジータはそう言って自信満々にウインクした。まあその「初期装備にも満たない激弱装備」を着てる勇者が来たらそれ以外考えられないか。


「はい、まずこれが『はじまりの服』ね」


 慣れた手つきでカウンターの下から一着の服を取り出しカウンターに乗せる。胴体の部分が緑色で袖が白、前が途中までボタンになっているゲームに出てきそうな服だ。


 正直俺が今着てるのと薄さは大したことないが、これで本当に防御力が上がるんだろうか。


「これは胴体の緑色の部分が動物の毛を固めに編み込んであるから少しだけ相手の攻撃を吸収してくれるよ」


 流石は本業武器屋、痒いところに手が届く説明だ。


「この『はじまりの服』は30ピールね。あとは好きな武器を選んでもらうことになるけど」


「好きな武器かぁ……」


 漠然と剣になるのかなーと考えていたが、壁に展示されているのを見てみると剣の中でも日本刀みたいなものと西洋のレイピアみたいなものがあったり、剣以外にも斧や槍、ハンマーに弓矢、アナが持っているような杖、如意棒的なものにメリケンザックまであった。


「うーん。何かおすすめとかある?」


 正直よく分からないのでプロであるジータに直接聞いてみる。それでもピンとこなければ剣にしよう。


「まあ基本は片手で持てる剣かな。最初のうちは刀身が真っ直ぐで両側で切れるものだと使いやすいよ」


「なるほど……」


 流石プロ。説明が分かりやすい。


「ちなみにおすすめとは言わないけどハンマーも楽しいよ。見た目は地味だけど豪快さはピカイチだし」


「ハンマー……?」


「そ。まあ私がハンマー使ってるから勧めてるだけなんだけどね」


「へー! ジータちゃんってハンマー使えるんだ! 初めて知りました!」


「へへん! 地味に村の武道大会のハンマーの型の部で優勝したこともあるんだから!」


「すごい!」


 武道大会で優勝、か。なるほどね、ちょっと武器屋さんという意味以外でジータに興味が湧いた。


「それじゃあ俺はオススメされたこの片手剣にする」


「毎度あり! 服と合わせて84ピールね!」


「それとなんだけども……」


 一か八かだが失敗を恐れてちゃ何も始まらない。金を出しながら右肘をカウンターにおいて顔をぐっと前に出す。


「ジータ、俺たちの仲間になるつもりないか?」

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