最強女騎士爆誕!
「……改めて行くぞ」
「おう」
契りを結んでパワーアップ効果を得たイルナなら百人力!……なはず! オーラも段違いに強そう……な気がする。
さっき敗北したばかりの敵の前。トラウマになってたらどうしようかと思ってたが杞憂だったみたいだ。
「ギィいいぃぃぃッッッ!!!」
先制攻撃を仕掛けてきたのは淫魔の方だった。イルナの剣を食い止めた強靭なツタがイルナに襲いかかる。
キンッ……
野菜を切るような音がしたかと思うと、伸ばされていたツタは地面に横たわっていた。間違いなくさっきよりもイルナの移動速度が速くなっている。
「キシャァァァアアアアアッッッ!!」
淫魔は怒り狂っているのか雄叫びをあげると地面の中から上からこれでもかとツタを突撃させてきた。しかしイルナは慌てることなくサーベルを天高く振り上げる。
……そして一息つく間に全てのツタを粉々に切り刻んだ。これにはさすがのボスモンスターもたまらないだろう。
「ギィ……ギィ?」
もっと攻撃をしてこようとしたらしい淫魔だったが、様子がおかしい。淫魔の胴体から生えているツタは全く動かず……その場で粉と化して崩れ去った。イルナの斬撃は攻撃してきたツタのみでなく淫魔の手足全てを切り刻んでいたのだ。
淫魔が支えを失って倒れると同時に捕まっていた四人も再びそのツタから逃れて地面に落ちた。
「さっきはよくもやってくれたな」
「ギィ……グギギ……」
淫間には地下に繋がる根すらも残っていない。どんなにキバをガチガチ鳴らしたってもうどうにもならない。
「今の私に勝てる淫魔など、もういない」
「グワァァアアッッッ」
キンッ
また金属の擦れる微かな音が鳴った。イルナがサーベルを鞘に収めるのと淫魔の顔が真っ二つになるのとがほぼ同時だった。巨大な淫魔はドス黒い液体を撒き散らしながら崩れ落ち、そのまま光の粉となって散っていった。
「やったな! イルナ! ……というか、ありがとうございました」
イルナが勝った嬉しさについ仲間みたいな声掛けをしちまったが、よくよく考えたら俺は頼み込んで助けてもらってる方なんだよな。イルナがいなければ本当に四人を死なせてしまうところだった。
「礼を言われる覚えはないわ。あなたがいなければ私はあそこで終わっていたのだから」
「イルナ……」
振り返ったイルナは少しだけではあるけども、最初よりはいい顔をしているような……そんな気がした。
「それより早く仲間たちをみてやりなさい。モタモタしてると快楽堕ちしてしまうぞ」
アッ、そういえば……。ここから町まで四人を担いで戻るのは無理だし、ここで上書きするしかねぇのか。四回……頑張らねば……。
※ ※ ※
「ぐぁぁ、しぬ」
さすがに四回連続はやばいって。身体中の栄養と水分を持っていかれた。本当に死にそう。
「処置は済んだか」
「なんとか。しぬ」
「死んでる暇なんかないわよ。すぐそこに淫魔石があるんでしょ」
「……!」
ボス戦にいそしんでいて忘れていたが、そういやぁ目的は淫魔石の破壊なんだったな。
「あの扉の向こうってことだよな」
「えぇ」
イルナが先にずんずん進んでってしまうから俺も動かない身体を引きずって後を追った。月当たりの崖には金属でできた重そうな扉があり、恐らく淫魔石はこの中にあるはずだ。
まずはイルナが手で押したり引いたりしてみるが、当然のようにびくともしない。俺も少し触ってみたが今現在力が入らないことを抜きにしても開きそうになかった。
そこでイルナが再びサーベルを抜き光の速さで扉を斬りつけた……が、無情にも剣先は弾かれてイルナの動きは止まった。
「これは……魔法で封じられているな」
「魔法?」
「剣が弾かれた時に金属にぶつかった感触がなかった。攻撃を受け付けない結界か何かが張られているのだろう」
結界……そんな魔法もあるのか。
「じゃあ開けられねえじゃん」
「いや、一つ思い当たる節がある」
イルナは顎に手を当てて何かを思い出す素振りを見せた。そしたらその思い当たる節に縋るしかないですねぇ。……今回ほんとイルナ頼みだけど大丈夫かこれ。
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