クロス村へようこそ!
「ヒロキさん! 見えてきましたよ!」
しばらく歩いて人が踏み歩いたような跡があるところを歩いて十五分ほど、ようやくアナが住んでいるという村らしきものが見えてきた。村の入口にはいかにもファンタジー世界の村って感じがする木組みの小さな門が備わっていた。
森を抜けて緊張感がなくなったのかアナがペースアップするので俺もそれに早足でついていく。そして木組みの入口をくぐって村の仲へとお邪魔した。
……と、その時だった。目の前を歩いていたアナが下着姿だったはずなのに、門をくぐった瞬間に一番最初に会った時と同じように普通に服を着た姿へと様変わりした。ぷりぷりとした大きいお尻は瞬く間にローブに隠れた。
「服って戻るんだ……」
「あ、はい! 村に戻ってくるとヒットポイントが回復するので服装も元通りになります」
なるほどね……。案内役らしくゲームの仕様をしっかり教えてくれるね、君は。べ、別にもう少し下着姿を拝んでおきたかったなんて、そ、そんなこと思ってないんだからね!
村に入ってしばらく進むと、レンガ敷きの道が続いていく。両脇には中世風の家が立ち並んでいるけど、それにしてはすごいしっかりしてる。どちらかというと現代人が中世風を真似て作った建物みたいな、そんな感じ。
もう少し行くとその脇に噴水があってちょっとした公園みたいになっていた。噴水の真ん中には天使か何かだろうか、女性の姿をした像が立っていた。
「ここはクロス村――あ、この村の名前なんですけど、その中心広場になっています。ここから北の方に行くと教会があって、勇者様はヒットポイントがゼロになると教会で復活することができます」
なるほど。俺は別に死んでも痛くもかゆくもないわけか。いや、もしかしたらゲームオーバーの時超痛いかもしれないけどな。やっぱり生き返るとはいえ死ぬのは嫌だね。
「そしてこの横にあるのが学校です。小さな村なので子供も少ないですが、一応勉強のための場所にしています」
学校、と言われた建物は他の建物と同じく中世的だったが、確かに一般的な学校って感じではなかった。昔の寺子屋みたいな感じなのかな? エロゲの世界で子供たちは一体どんなことを学んでいるのやら。
「そしてここが私の家です。一人暮らしなので遠慮せずに上がっちゃってください!」
「お、おう、ありがとう」
アナの家というのも例外なく中世っぽいレンガとベージュの壁でできた家だった。一階建てだけども、女の子が一人住む分には広すぎるくらいだ。
……キャラクターとはいえ女の子の部屋に入るのは緊張する。下着とかベッドの上に置いてあったらどうしよう。目を逸らした方がいいのだろうか。さっき下着姿になっても特に反応してなかったから下着を見られることはそもそも恥ずかしいことではないのかもしれないし。変態扱いされたらいやだなあ。いや、変態なのは否定しないけど。
「お邪魔します」
色んなことを考えながら中に入ったけど、そういった変な考えを打ち消すくらいアナの家は綺麗に片付いていた。玄関にコート掛けがあって、左の方にタンスや机があって、左奥にベッドがあって、右にはレンガ造りの暖炉とシンクがあった。玄関の真正面にはもう一つドアがある。多分洗面所か何かだろう。
床には何も置かれていないし、壁は装飾品で綺麗にされているし、これ以上いい部屋はないんじゃないかってくらい整っている部屋だ。アナは少し抜けてそうだけど、こういうのは完璧なんだな。
それとこの部屋を見てもう一つ思い出した。そうだ、アナの部屋と言えばこのゲームの主人公の活動拠点じゃないか。どうりでなんだか見覚えのある部屋だと思った。多分このあとアナから一緒に住むように提案されるんだろうな。
「何もなくて申し訳ないですけど、旅の疲れを癒してくださいね、ヒロキ様」
「ああ、ありがとう」
アナの言う通りに、俺は女の子特有の甘い匂いを嗅ぎながらベッドの上に腰を下ろしたのだった。
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