おっとりねむりひめ
アナの家を出てジータの店の横を通ってしばらく。やってきたのは村のほぼ正反対の位置にある家だった。
「こんにちは~……」
アナは小さい声で言いながら木製のドアを開けて中に入る。俺もそれに続いて中に入った。
家の中はすっきりしていて最低限の家具があるだけ。そんな空間の中に「夢かわいい」というか、そんな感じの真っ白くてもこもこしたベッドが我が物顔で収まっていた。
ベッドを覗き込むと、掛け布団から女の子の顔と右手だけが出ていた。窓の形の光が差し込む中、右を向いてすやすやと眠っている。もうお昼前なんだけどな。
「やっぱり寝ちゃってますね……」
アナは小声で耳打ちする。難があるってのはつまりこういうことか。
すやすや眠る少女は金髪というよりも限りなく白に近いクリーム色っぽいふわふわの髪の毛で、顔はとても幼く見える。そして頭にはこれまたふわふわの真っ白い帽子をかぶっていた。
アナのジェスチャーに従って静かに家の外に出る。無理矢理起こすつもりはないらしい。
「あの子はソフィちゃんっていって回復魔法が得意な魔法使いなんですけど……あの通り少しおねむなところがあるんです」
アナは申し訳なさそうにそう言った。まあおねむだろうがなんだろうが一日のどこかで起きるだろうし、待ってればいつか起きるだろ。
「またあとで来ればいいさ」
落胆するアナを慰めながら、とりあえずは家に帰って出直すことにした。
※ ※ ※
夕方、俺は一人でソフィのもとに向かっていた。アナは夕飯の準備やら何やらで忙しいからな。
「こんちはー……」
今朝のアナみたいに小声で言いながらドアを開ける。残念ながらまだ起きていないみたいだ。
そろりそろりとベッドのもとまで行って様子を見る。寝返りを打ったのか今は仰向けになって両手の先だけ掛け布団を持つような感じで外に出していた。
「無理矢理起こしたりしたら可哀想だからダメですよ」
アナにそう何度も釘を刺されているので大声で起こしたりはしない。ただ……こうぷにぷにしたほっぺの生物がすこやかに寝てると人差し指でぷにぷにしたくなる。え? ならない?
触る瞬間に起きたりすると不審者がられるので(実際不審者だが)そーっとそーっと指をほっぺに近付けていく。そしてぷにっとした感触とともに手を引っ込める。大丈夫、まだ起きてない。
もう一度……今度も大丈夫か。ならばもうちょっと強めに……全然起きない。
……そうやってぷにぷにしているうちに、とうとう思いっきりほっぺに人差し指をぶっ刺しても起きるどころか気持ちよさそうな寝息を立て続けている。「起こしちゃダメ」というより「起こせない」んだなこの子は。
そうと分かったら……イタズラしたくなっちゃうのが男心だよなぁ?
まずは鼻を潰してみる。……えっ、鼻もやわらかっ!? これが幼女パワーなのか!?
次は口……女の子の唇の柔らかさはこの世界にきて散々味わったけどその中でもトップクラスだな、この子の唇は……。とはいえキスとかは本人の了承がないとさすがにまずいよな、うん。
そんな感じで耳~、まゆげ~、あご~、首~、おてて~とかやっていて、結局布団から出ているところは触り尽くしてしまった。それでもなお微動だにせず寝息を立てている。こいつ……大物だ……!
「だったら……」
お腹でもこちょこちょしてあげたらどうなるかなぁ? そんな純粋な気持ちで掛け布団を持ち上げて俺は危うく大声を上げそうになった。
だってこの子、何にも着てないんだもの。それ以上にこの子の胸に巨大なスイカがついてたんだもの。
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