これが俗に言う説明回

「えっとさ……仲間になる時って絶対に契りを結ばなきゃいけないの……?」


 ビビったわけではないけど、突然さっき出会ったばかりの女の子とえっちしろと言われたら流石に困惑する。別に童貞だからビビったわけではない。断じて。


「一応、戦闘自体は契りを結んでなくても一緒にはできますが、契りを結ぶと勇者様の力を借りて仲間が能力を解放できます。それに契りを結んでおくと他の勇者に引き抜かれたりされないですし、何かあった時には遠くからでも仲間を呼ぶことができます。ですからどうせ仲間にするなら契りを結んでおくのが普通です」


「なるほど……」


 元のエロゲにそんな細かい設定があったか?? まあでもこの世界ではある程度この世界観に意味付けがされているようだな。


 ……うん? 契りを結ぶと他の勇者に取られない??


「逆に契りさえ結んでしまえば強制的に仲間になるってことか?例えば人間みたいな敵がいたとして」


「それは……どうなんでしょう。確かに契りを結んだという証は確実に残りますが、そうは言っても戦闘時は団結力が重要ですから友好的な関係にしておくに越したことはないと思います」


 なるほど……。じゃあ手当たり次第レ◯プして仲間を増やすっていうのも現実的じゃないわけか。


 ん? まてよ?


「そういえばそもそもの疑問なんだが、勇者って何をするんだ」


「えっ?」


「あ、いや、だから記憶がなくてね、その辺」


 まあ確かに勇者が「勇者って何するの」とか言い出したらそりゃ流石に「え?」だわ。でも今普通にどっかに戦いに行く流れだったけどどこに行けばいいかが分からなきゃ考えようがない。


「えっとですね、基本的にはさっき鉢合わせたタチバックウルフのような淫魔を壊滅させるのが勇者様の目的です。淫魔は淫魔石というものから生み出されていて、淫魔石はこの世界の色んなところに散らばっています。その淫魔石を一つ一つ破壊していくのが勇者様の目的ということですね」


 なるほど。そしてその道中に色んな淫魔がいるから倒していかないといけないってことなんだな。


「そしてこの村の一番近くにある淫魔石は学校のわきの道をまっすぐ山の方に歩いて行った洞窟の中にあります」


「とりあえずはそれを破壊することを目指せばいいと」


「そういうことですね。ですが、まずはその周辺の淫魔を減らしておかないと近寄ることもできないので、当面の目標は淫魔を減らすことでいいんじゃないでしょうか」


 なるほどなるほど。よし、これで短期目標が決定した。


「ちなみにこの世界のすべての淫魔石を破壊するとどうなるの?」


「それがですね……淫魔石はどういうわけか破壊してもしばらくすると復活してしまうんです」


 まあそりゃあ本当に消えちゃったらゲーム終わっちゃうからな。


「なるほどねぇ。その理由が分からないと全てを破壊する術はない、と」


「はい……」


「ありがとう、色々参考になったよ」


 実は「別に淫魔なんてほっといてアナとらぶらぶしながらスローライフ送ればいいじゃん」とか少し考えていたのだが、流石にテレビもスマホもないこの家の中で一日中ダラダラしているのも暇で暇でしょうがないので、大人しく普通にゲームを進めるとしようかな。


「それでは……私は、契りの準備を、しますね」


「う、うん……。俺は風呂に入ってくる……。風呂場ってどこ?」


「そこのドアを開けると脱衣所です……」


 なんだこのやりとり。初々しいカップルか。我ながらリア充爆発しろと言いたくなってしまう。


 夢にまで見た童貞卒業までのカウントダウンが始まってしまった。わくわくするやら失敗が怖いやらで、鳥肌を立てながら風呂場へと入った。


 そして風呂場の鏡で初めて今の自分の姿を確認した。

 ……誰じゃこれは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る