淫魔の目的

「今日は大変な目にあっちゃったねー!」


 クララが椅子に座って足をバタバタしながら言う。毎度毎度思うけどなんでそんなにレ〇プに無頓着なんだこの子たちは。ちなみにここは営業中のジータの店である。


「まあでもあのまま死ぬまでやられなくてよかったよね」


 ジータは優雅に紅茶をいただきながらアナの焼いてきたクッキーを食べる。こうしてみんなでわいわいお茶しているのを見たら誰もさっきまで犯されていたとは思わないだろう。


「……にしても単純な疑問なんだが……なんであいつらはおしっこで消えたんだろうな。俺の場合は別だけど」


「さあ……単純に苦手だったんじゃないでしょうか」


「だとしたら目の前で仲間が消滅してるのを見てるんだぞ。わざわざ自分から死にに行ったりするか?」


 消える条件も結局よく分からなかった。恐らくあれだけ犯してるのに消えなかったんだから愛液では効果はなくて、おしっこと精液だと消えてしまう。クララの口にも身体を突っ込んでいたから唾液も大丈夫なんだろう。そうなってくるといよいよ基準が分からない。


「もしかして、別に消滅したとかじゃなくて目的が達成されたから帰った、とか?」


「でもあの消え方は多分弱っていたように思えますけど」


「そもそも下等な淫魔に自我なんてないんじゃないの? 命令されたことをやるだけとか」


 うん? 下等?


「淫魔に下等とか上等とかあるのか」


「まあ正式にどこからがって決まってるわけじゃないけど。でも言葉を喋ることができる上級の淫魔が下等の淫魔を操っているとは聞いたことがあるよ」


 なるほど。それで勢い勇んで死にに来る謎が解けた。ひたすら攻撃して犯せと命令されているからなんだな。


「……でもそうだったとして、その上級淫魔とやらの狙いは何なんだ? 人間を攻撃したり犯したりしてそいつらに何のメリットがある」


「前にも淫魔石のことはお伝えしましたよね」


「ああ、淫魔の力の源とか言われてるやつだな」


 一応新メンバーの試運転をしながらもその淫魔石がある山に向かって少しずつ進んでいる。とりあえずそれを破壊するのが第一歩だ。


「淫魔が人間を犯すと、その性のエネルギーが淫魔を通して淫魔石に吸収されるんです。そしてまたそれが彼らの栄養源になる」


「うーん……つまり淫魔石がバッテリーみたいなもんで俺たちが発電機ってところか」


「ば……?」


「いや、なんでもない」


 要は淫魔たちが繁栄していくためにはエロいエネルギーが必要で、それを集める係が下っ端のウルフやスライムってわけだ。エロいエネルギーさえ溜まればまた淫魔が生まれるから用済みの淫魔は処分されても困らないと、そういう寸法だろう。


「じゃあ、とりあえず順調ということだな」


「はい……ただ例のミスリルの盾など気がかりなことも多いですから、気を引き締めないといけませんね」


 そういえばそんなこともあったなぁ。今の話だと上級淫魔は知能が高いんだから……そいつらが入れ知恵してた可能性があるのか。それはかなり最悪の場合だな。


「まあ引き続き頑張って行こうってのともう一つ。あと一人でパーティメンバー揃うんだよな確か。あと一人誰かいい人いないか?」


「そうね……とても強い人が一人いるにはいるんだけど……」


「お、じゃあ早速案内してくれよ」


 自分から言いだしたくせにどうにも乗り気ではなさそうなジータに不思議に思いながらも、俺らは早速その人をスカウトしに店を出たのであった。お店番はアナ達でも間に合うだろ。

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