かげぶんしんのじゅつ

「私勇者さんと契り結べたのー? やったー!」


 事後のクララは思いの外元気で、説明も素直に聞き入れた。いやいやロリをあれだけ激しく犯したらすぐには立ち上がれないだろ絶対。さすがはエロゲってところか……。


 クララの様子を見る限り「勇者の仲間になる」ということはこの世界の人間の目標になっているのかもしれないな。だとしたら仲間を増やすのは容易そうだ。


「じゃあ私もすごい能力持てたのかなー」


「そうだね。何かできるようになってると思うよ」


 クララが元気なのでアナに怒られることもない。サンキュークララ。


「早く試してみたい! ね、早く行こうよー」


「それは……」


 アナはそう言いかけて俺にアイコンタクトをする。アナの言わんとしていることは分かる。こんな小さな、しかも戦闘経験のない子を戦闘に連れていくのかということだろう。


 少なくとも例の光が出た以上なんらかの能力上昇効果があったのは間違いない。だとしたらどういう効果が出たのか確かめておくのが吉だろう。だが能力上昇の効果は戦闘エリア……つまり村の外でなければ確認ができない。


「もちろんいきなり戦闘に行こうとは思ってない。クララの適性の問題もあるだろうからな」


「えー」


「とりあえずは村の入り口のところでクララの能力を探ってみる。もちろん淫魔がいないことをよく確認してな。それでクララも参加できるポテンシャルがありそうなら、少し訓練をしてから実際の戦闘に行く」


「おー」


 まあクララがどこまで戦えるかは分からないが、例の光が出たということはこのエロゲの攻略対象だったということになる。つまりは元々仲間になることが想定されていたはずだ。


「ねー、今すぐ行こうよー」


「分かった分かった。村の入り口までだぞ」


 あんまりにもクララが急かすので結局すぐに家を出発した。


※ ※ ※


「勝手にどっか言っちゃ駄目だぞ」


「はーい」


 村の門の手前でクララによく言って聞かせる。一人で走っていって淫魔にでも襲われたらそれこそ目も当てられない。


 とりあえず今回どの能力が上がったか判断するために俺らの武器防具一式は持ってきた。さてさて何が上がったのかなあ?


 クララは一歩、門の外へと踏み出した。ここからもう戦闘ゾーンとなる。


「どうだ? 何か変わったところはあるか?」


「ううん。何も」


 さすがにすぐ判明するなんてことはないか。ここから色々試してみないとなあ。


「……あれ? クララ?」


 ふと考え事をしていた一瞬の間に目の前からクララがいなくなっていた。周りを見回しても見当たらない。


「確かにここにいたはずなのに!?」


「おーい、ここだよー」


 冷や汗をかいたがすぐにクララの声がどこからか聞こえた。まったく肝を冷やすぜ。


 よくよく周りを探すと、近くにあった木のかなり高いところにクララは平気な顔して立っていた。よく一瞬であんなとこに登ったな……。


「おい、勝手にどこか行くなって言ったろ。あとパンツ見えてるぞ」


「もー! えっち!」


 クララはそう言ってスカートを押さえて……消えた。


「え?」


 まさか木から落ちたのではと思って木の下を確認したが何もない。


「ねーねー」


「うわっ!?」


 かと思ったらクララは後ろから話しかけてきた。どうなってんだ一体……。


「なんか私、すごい身体が軽いみたい」


 クララはそう言うとつむじ風を起こしていなくなった。かと思えば俺の周りにビュンビュンと風が巻き起こる。くそ、目にゴミが入りそうだ。


「みてみてー、私がたくさんいるー」


 クララの声がするので目を開けてみると、確かに空中にクララの姿がいくつも確認できた。これは……残像か?


「つまりクララの上がった能力は身のこなしってことか」


「そうみたいー」


 なるほど。このとんでもない速さ……これは使えるかもしれないぞ。


「アナ、クララ。これからジータの店に行くぞ」


「どうされるんですか?」


「もちろん、クララのための装備を買いに行くのさ」

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