★★★ Excellent!!!
セックスはヒューマンドラマだ 木野かなめ
セックス、という単語を聞いてどう感じるか。それは人それぞれでしょう。私はその単語に特別感を覚えます。皆様のセックスの相手候補は、人それぞれなのだと思います。配偶者や恋人とのセックスもあれば、友人とのセックスやワンナイトの関係もあることでしょう。しかしながらそれらはいずれも特別なものです。人間の弱い部分――肉体的にも精神的にも弱い部分をこすりあわせ、お互いを認め、お互いを赦す行為なのだと私は思っています。もちろんその中には、単純に「生物としての欲求を満たす」という側面もあります。
しかしながら、一般的な創作物ではその「欲求」の部分のみフォーカスされ、セックスが本来もちうる要素の全てを描ききれていません。その要因の一つとして、「読者がなにを求めるか」と検討した結果、欲求の部分がもっとも重要になってくるという事実があるのでしょう。ただ、セックスには本来、多くの要素が含まれているものです。各創作物の作者はその中には創作や表現に足る要素があるということに気づきながらも、創作の性質上表現を諦めたという背景があるのかもしれません。だからこそ本作はひときわ輝くのです。本作は「欲求」の部分にも言及しながら、セックスに内包される要素を描ききることに成功しています。これは、希有な作品だといえます。
まず、セックスはヒューマンドラマなのだと思います。相手と、ベッドインするまでに交わされた時間、交流、…
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