やられた。濃厚なのに気軽に読める一本。水割りでどうぞ。

個人的に、この世の中で「セックス同意書」は未来永劫できないと思ってる。それは自分の考えのうえでそう思ってる。だからこの物語はフィクションだ。フィクションなのだが。

いくつものエピソードを重ねられ、そこに関わる人間たちの様子を見ていると、「……あれ。もしかしてセックス保険、アリなのか?」とふと思わされる瞬間がある。それほどまでに各エピソードが作り込まれている。このエピソード群は事例だ。ぼくみたいな否定的な人間を説得するための事例。そしてその事例がじつに的確でうまい。妙なリアリティがある。

――リアリティ。

あり得ないはずの設定をアリだと思わせてしまうことこそが、本当の意味のリアリティではなかろうか。リアリティとは決して現実に沿うことじゃない。そこに文句をつけるのなら、大人しく現実を見てたほうがいい。そうじゃなくて、「現実にはあり得ない世界に連れていってくれる」ってのがリアリティのある小説であり、面白い小説なのだとぼくは思う。

セックス保険。そんなのあり得ないと思うでしょ?

それがアリなんですよ。これはある意味現代社会に対する問いかけでもある。
短編のケダモノ、飛鳥休暇さんの真骨頂。ユーモアを交えた心地よい読み味の長編。
ぜひご一読あれ。

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