第22話:翌日の出来事

 みなさんおはようございます。

 こちら相沢光樹です。昨日は色々大変でした。まさか、朝香の家で一晩過ごし、朝帰りをすることになってしまうとは。朝だけに。


 なーんてこと言ってと痛い目みますよ、ほんと。


 俺は朝香の家を後にして、こっそりと家に帰った。

 家についたの六時半過ぎ。俺はいつも七時くらいに起きているので、いつもならまだ寝ている時間である。


 俺はゆっくりと鍵を使い、家の玄関を開けた。

 そこには仁王立ちした、魔王がいた。


「……」


「……」


 そして俺はゆっくりとドアを閉めた。

 その瞬間に勢いよくドアが開けられるとそのまま、首根っこを掴まれて家の中に入れられました。


「おい、てめぇ。なんで連絡の一つもよこさねぇ?」


「こ、これには深い事情がありまして……」


 今現在、居間の横にある和室で俺は姉貴から拷問を受けている。ちなみに隣の居間には両親がテレビを見ながら朝ごはんを食べている。


「童貞の分際で朝帰りとは随分と立派になったものだな」


 そういうこと言う? お父さんとお母さん横にいるところで姉弟間の会話じゃないよ? しかも朝だし。


「あ、朝帰りしたら童貞ではないのでは……」


 ビクビクしながら反論を試みる。


「てめぇみてぇなケツの青いガキなんざ、そんなホイホイ、童貞を卒業できるわけねぇだろ」


 バチーン。


「ヒィ!」


 一発の強烈なビンタが炸裂する。

 その時、和室と居間を隔てる襖がスライドする。


「蒼ちゃん。朝からそのくらいにしておきなさい。光樹も早くご飯食べないと学校に遅刻するよ」


 ここで母様の助け。魔王に勝てるのはこの勇者だけだ!!


「続きは学校でやりなさい! 今は早く支度!」


 母は味方ではなかったようだ。


 それから、俺は急いでシャワーを浴びて、ご飯を食べ、学校へ向かった。姉貴には昼休みに生徒会室に来いと言われた。

 何をされるのだろう……ビクビク。


 ◆


「おはよ、相沢くん。なんだか元気ないね?」


「おお、おはよ。柳さん。ちょっと疲れが溜まっててな。柳さんは今日も相変わらずかわいいなぁ」


「へっ!? な、何、急に!?」


「ん? こう小さくてだな。なんだか犬みたいな安心感がある。こう、尻尾をふってだな」


「……」


「柳さん?」


「相沢、お前それはない」


 前の席のカズさんが俺と柳さんの会話を聞いていたのか振り返ってそう言う。

 そしてここでチャイムが鳴る。


 それから柳さんにはしばらく口を聞いてもらえそうになかった。




 お昼休み。

 俺はまず、生徒会室ではなく、一組の教室へ向かった。


「かたじけない、鈴木殿はいらっしゃるでござるか?」


 ドアを開けて一言。謎のテンションで突撃してやった。


 そしてそんな俺を一組の生徒たちは不思議そうに見ている。その中の一人、鈴木がこちらに気付き恥ずかしそうに慌てて、向かってきた。


「もう! 恥ずかしいからやめてよ!」


 廊下に出されてしまったでござる。


「何の用?」


 鈴木は少し、怒り気味にこちらに用件を聞いてきた。


「いや、朝香のとこお見舞いいったから、報告をと思ってだな」


「意外と律儀ね。それで……なんも変なことしてないでしょうね?」


 変なこと? 変なことってなんだ? 看病中に朝香の顔をじっくりと見つめていたことか? 朝香の部屋に入った時に思いっきりスーハーしたことか? それとも脱ぎたてのパンツをガン見してたことか?


 一体どれのことを言っている!?


「あんた……嘘でしょ……?」


「ご、誤解だ! 俺は朝香の寝顔を堪能しただけでってイテッ!」


 太腿を思い切り蹴られた。キック力半端ねえ。


「そ れ で! 朝香大丈夫なの? 今日も学校休んでるみたいだけど。LINEじゃあ、朝に『心配かけてごめん、もう大丈夫』ってだけ入ってたけど……」


「ああ、多分、もう大丈夫だと思うよ。朝は大分顔色良くなってたし。合っても微熱くらいだと思う。一応、今日も様子見に行こうと思うけど」


「今日はいいよ。私が見にいくから。今日部活休みだから」


「そっか、そうだな。分かった」


 俺がそういうと鈴木は少し驚いた顔をした。


「なんだ?」


「いや、意外だなって思ってさ。あんたなら、是が非でも付いてくるって言うと思ったけど」


「いやいや、今日は鈴木が行ってくれるんだろ? 鈴木が行くのに流石に一人暮らししてる女子の家に二日連続で上がったりしねぇよ。だから今日は朝香のこと頼む」


「そう、ならいいけど……ん?」


「ん?」


 なんだ? どうかしたか? 変なこと言ってないよね……?


「あんた、朝、顔見たって言った?」


「言ったかね?」


「あんた、まさか……」


 ふぅ。なんだか嫌な予感がしたんだ。そんなことだろうと思ったぜ。鈴木がなぜか最近優しい気がしたもん。ということで。


「さらば」


「あ、こらっ! 待て、変態!!」


 俺は、鈴木に別れを告げて、その場から走り去った。


 割と本気で走ったので、いつの間にか鈴木を振り切っていた。しかし、恐い女だ。姉に少し、通ずるものがあるぞ?


 そして走るな厳禁の廊下を爆走して、担任に叱られた後、やってきたのは生徒会室。昼休みになったら飯食わず一番に来いと言われていたのにも関わらず、俺が到着したのは、昼休みになってから二十分後だ。


 怖気付いていても始まらない。俺はいつか姉を超えなくてはならないのだ。どうせ卒業したら優しくなるんだけど、それまで我慢を強いられるは今の俺には無理だ。


 一度目は俺もまあまあ、大人しく部活に勤しんでいたからそこまで姉の被害を受けることはなかったのが。二度目の青春はどうやらそうは行かないらしい。

 受けて立とうではないか。


 いざ。


「あっれー? 弟君じゃん! こんなところで何してるのー? あ、分かった。もしかして天音に会いに来てくれたんだね! この甘えん坊さん!」


 唐突に背後から現れたのは俺の天敵の一人、天音先輩である。

 無音で現れよったか。こいつ……できるっ!!


「いえ、姉に呼ばれてきただけですけど?」


「またまた、そんなこと言ってー♪ 副会長なら今はいないと思うよ! じゃあ、入ろっか!」


「あ、ちょ……」


 天音先輩は俺の腕を抱き付きながら、引っ張って生徒会室へ入っていった。


 生徒会室へ入ると天音先輩の言う通り、そこに姉貴の姿はなかった。そもそも誰もいない。あれ? 俺何で呼ばれたの?

 俺は天音さんに抱きつかれたまま、ソファに座った。相変わらずおっぱいがいい感触である。


「二人っきりだねぇ。弟君!! 私、襲われちゃうのかなぁ……キャッ!」


「はいはい、その喧しい口閉じましょうねー」


「あ、冷たい! 酷いよ! 私、弟君をそんな子に育てた覚えはありません! えい!」


 天音さんに育てられた覚えもありません。そうツッコもうとした時、天音さんがこちらに向かって飛び乗ってきた。


「どわっ!?」


「ぐふふ、マウント取った!」


 天音さんは俺を押し倒し、馬乗りになった。しかし……


「ちょっ!? 天音さん!? 見える見える! 動かないで!?」


「うぇぇぇ!?」


 天音さんはスカートだったので、少しでも動けばそのスカートの中が見えてしまいそうになっていた。それを指摘すると先ほどまで俺をからかっていた天音さんは恥ずかしそうにスカートを抑えた。

 不覚にも萌えてしまった。


「アンタたち、生徒会室で何やってんの?」


 そこで鬼の声が聞こえた。





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